二話 同類
ライトノベルやアニメを見ていれば、異世界に転生して、女神様からチート能力を受け継いで、かわいいヒロインを連れて魔王を倒してハッピーエンドという夢を見ることはある。だけども、俺が持ってきたのは車一台と、スマートフォン、財布。どう転んでも魔王を倒せる装備じゃねぇ!
コンコン
外に居るのは、現地の人たちか?そして、窓を叩いたのはこの長老風の老人か?
何かを喋っているみたいだが良く聴こえないな。窓を開けるか。
「旅のお方よ、いきなりで失礼承知で聞くが、魔王討伐に来てくださったのか?」
えーと、いろいろ突っ込みどころが多すぎて対処に困るな……まず、日本語!?
「え!?」
「さあ、私の家でゆっくりと話は聞きますぞ」
この爺さん、人の話を聞かないタイプだな。さてと、この爺さんの家に着くまでにいろいろ考えをまとめておくか。
異世界にきてしまった事は理解できた。そして、魔王が居ることも把握できた。しかし、なぜ勇者!?
「ささ、お入りください」
長老という事だけ合って村では一番でかい家に住んでるらしいな。家の中は、家電製品は無い……ということは文明レベルもたかが知れてるな。とにかく椅子にでも座って落ち着くか。
「おーい、勇者様にお水を出しなさい」
勇者って……完全に誰かと勘違いしているな。これは早いところ退散したほうがよさそうだな。
「それでは、勇者様、早速ですが……」
「待ってください!なぜ、私が勇者だと?」
「それはですな……」
爺さんが長々と話してくれたが要約するとこうなる。
・魔王復活一年後に馬の居ない鉄の馬車がやって来て中から勇者が出てくる
・勇者は3人の同類を集め魔王の幹部を3人倒してから魔王城へ行き魔王を倒す
・魔王を倒した後勇者は何処かへ消える
という言い伝えがこの村にはあるようだ。
「今日はもう遅いですから、この話の続きは明日になってからで……」
いいタイミングでメイドが仕事をしてくれた。でも、水を出し忘れてるぞ。
今日はこれ以上情報を集めたとしても頭がパンクしそうだ。
「そうじゃな……宿を一部屋用意させよう。そこで今日はゆっくり休んで頂こう」
「外の車……いや、鉄の馬車はどうすれば良いですか?」
「そうじゃな……一晩警備をつけて見張らせるとしよう」
そりゃ、一晩寝ている間に大切な愛車を壊されたら何のとりえも無い村人Aにでもなってしまう。
長老についていくと一際大きな家に案内され、その中の一部屋を使うように案内された。部屋の中は机と椅子、ベットがあるだけの簡素なつくりの部屋だったが休むだけなら問題はなさそうだ。
「それではごゆっくり」
長老が出て行くと部屋は外から聞こえる話し声ぐらいしか物音は聞こえてこない。
コンコン
「あのー」
部屋を誰かがノックするが今日は疲れて対応する気分ではないのでスルーすることにしよう。
「日本人ですよね」
「うえっ!?」
ガチャッ
まさか、俺と同じように異世界に来てしまった人が居るのか?
扉を開けるとそこには俺よりも少し若そうなショートヘアーの女性がいた。服装も日本では良く見かける感じの服だ。
「と、とにかく入って」
「お邪魔します」
椅子があるのにどうして真っ先にベットに座る?
「外に止まっているのってあなたの車ですか?」
「あぁ、そうだけど君は?」
「あ、申し送れました。佐藤 歩と言います」
「俺は、田中 一也です」
一体、こういうときはどういう話をすればいいんだ?もう少し自己紹介をすればいいのか?それとも異世界に来た経緯とかを話せばいいのか?
「田中さん、一体この世界に来るときにどんな現象に合いましたか?」
「どんなって……峠を車で走ってたら霧に包まれてこんなことになったんだよ」
「田中さんもそうだったんですか」
そうだったと、言うことは佐藤さんも同じような感じでこの異世界に着いてしまったんだな。
「お願いします!友達を探すのを手伝ってください!」
初対面の人間に結構なお願いをされてしまった。