十五話 軍の町オルガ
あ、朝か。
「おはよ」
「もう、入ってくるなよ」
「えー」
えー、じゃない!もうそろそろ我慢の限界が近づいてきてるんだ!マジで止めてくれよ。
まぁ、それは置いといて、ゴブリンのアフの様子でも見てくるか。
「お!来たか!」
捕虜の分際で気楽なもんだ。
「昨夜はどうだった?」
こいつか、佐藤に変なことを吹き込んであんな事をさせたのは。
「残念ながら耐えました」
「お前、こっちのほうか?」
違う!俺は25年間ずっとノーマルだ。女性が好きだ!
「これからカンタレとお前をどうするか決める。何か望みかなんかあるか?」
「そうだな。ゴブリンの森とやらに行くから、この町の外で開放してくれれば良いぞ」
「そうか。希望は伝えておく」
仲間になるとか言ったらどうしようと思ったけども大丈夫だったな。一応、このことをカンタレにも伝えておこう。
「そうですか……ゴブリンの森に帰りたいと」
「やっぱり無理ですかね」
「いいと思いますよ。そっちのほうが彼にとっても良いですからね」
「良いんですか?」
「別に問題は無いですよ。……それで、昨日の晩は何も無かったんですか?」
何でお偉いさんはエロい方向に話を持って行きたがるかな!?
「何も無いですよ!」
「そうですよ!何もしてくれなかったんですよ!」
昨日もそうだが、佐藤は突然現れるのを止めろ。こっちは心臓が止まるかと思ったぞ。
「とにかくその話は置いておいて、あのゴブリンですが我々が責任を持ってゴブリンの森へと送っておきます」
「お願いします」
「それでオルガの町ですが、現在他の町へ進行しているらしく警備が手薄のようです。向かうなら今だと思います」
「分かりました。昼には出発します」
最初にいた村は大丈夫なのだろうか?とにかく今は、オルガの町へ行くことを考えるんだ。
結局用意してくれたのは、二日分の食料と水くらいだった。
「すいません。わたしの力不足のせいで」
「いえ、ここまで用意してくれただけで満足です」
「おねーちゃん!おにーちゃん!お守り!」
秘密基地に行った子供達が綺麗な板をくれた。ガラスかと思ったが良く見ると薄く延ばしたダイヤモンドだった。これ、すごく高いん
だろうな。
「三人で作ったの!」
「ありがとう。大切にするね」
南門には沢山に人が集まり、音楽隊までいた。ここまで豪華にしなくてもいいのに。さぁ!出発するか。
再び、プリウスは草原の砂利道を走る。燃料はほとんど無い。魔王軍の残骸の車からガソリンを取ろうとしたが、すべて漏れ出してなくなっていた。これだとガソリンで走れる距離は150キロほどか。
「これ綺麗だね」
「そうだな。元の世界だといくら位なんだろうな?」
「売る気?」
「まさか、大切にするよ」
次第に、ごつごつした岩肌が見えて、砂利道も大き目の石の道になる。ここまで来ると、プリウスでぎりぎり走れるくらいだ。
「ねぇ、魔王が日本人だけども話せば分かり合えるかな」
「さぁ?まったく見当もつかないな」
空は満天の星空だ。こんなに綺麗な星空は東京に居たときには見れなかったな……いや、見る暇なんて無かったな。
「ねぇ、ガソリン無くなってるんじゃない?」
「え?」
「さっきからエンジン動いてないよ」
本当だ。いくらアクセルを踏み込んでもエンジンが始動することは無い。モーターが唸りを上げるくらいだ。しかも、暗くなってきたな。ヘッドライトを点けるとその分バッテリーの消耗も激しくなるから今日はここまでにしとくか。
「今日はここまでだ。車の中で寝るぞ」
「え?もう進まないの?」
「ヘッドライトを点けると回生ブレーキだけじゃ充電が追いつかなくなる」
「結構遠いんだね」
食料はカンタレから貰った分を食べれば何とかなる。ただ、車の中で寝るのは疲れるんだよな。
「元の世界は今頃どうなってるんだろうね?」
「そんな事言ってないで寝ろよ。明日は日の出とともに出発だぞ」
「少しくらい良いでしょ」
「あー、はいはい」
「何事も無く普通にみんな生活してるんだろうな……」
「そりゃそうだろ。身内は心配してるだろうけど、それも捜索願を出して後は、警察任せだろ」
「そうだろうけども……」
多分、会社は首になっているだろうな。上司は無断欠勤を異様に嫌っているからな。まぁ、そのときはその時だ。別の仕事を探すだけだ。
「なんか、田中って悲しんだりしないよね」
「そうだな……。母さんが死んだときも、涙を流した覚えは無いな」
「人間らしさが無いね。……もう寝るね」
そういえば、最後に泣いたのっていつだっけ?中学?高校?駄目だ。思い出せないや。
気がつくと眠ってしまっていた。
~日の出前~
「起きて!」
外はまだ薄暗いぞ。もう五分くらい寝かせろよ。
「いいから!オルガの町が見えるよ!」
そんなに昨日の内に近くまで来ていたのか。ガナスの町でも一目入れておくか。
車から降りてみると、意外とボロボロになったもんだ。フロントバンパーはところどころ割れて、ドアもかなり傷ついてるな。こりゃ直すとなれば新車が買えそうだな。
「早く!」
そんなに急かすな。ガナスの町はもう逃げないぞ。
丘の上からオルガの町を見てみると、真ん中の四角い城らしき建物の周りに町が広がって、城壁が周りを囲んでいる。ヨーロッパに行けばこんな景色見られそうだ。
「空にはドラゴンがいっぱいだね」
空には、赤や青色のドラゴンが飛んでいる。襲ってこないだろうな。
「さ、出発するぞ」
俺は、プリウスに乗るとシステムを起動させた。




