十三話 捕虜のゴブリン
門が開くと遠くには沢山の明かりが見える。そこが魔王軍の陣地だ。
「行くぞ」
「はい!」
門を通り過ぎると、すぐに門が閉じられる。
暗闇の中を猛スピードで走ると、魔王軍の陣地から何かが猛スピードで走ってくる。良く見ると国産のSUVだ。
「カンタレさん!あの鉄の塊に何か攻撃してくれ!」
「分かりました!」
カンタレにはこの町に来る途中で使っていたインカムを装着させてある。それで援護を支持できそうだ。
ボォン
国産のSUVは爆発炎上する。思ったとおり、あのSUVは門を破壊するための自動車爆弾だったようだ。
目の前の火の海をバイクと車が駆け抜ける。
「あっち!」
車の中でも熱気が伝わってくる。佐藤のほうは生身だからもっと暑いだろ。
「大丈夫か!?」
窓を開けて佐藤のほうを見ると佐藤は親指を立てていた。大丈夫そうだな。
「もうすぐだ。準備しろ!」
遠くの魔王軍から銃弾が飛んでくるが、車やバイクにあたる前に一瞬止まると、そのまま地面へ落ちていく。
佐藤がポケットから500硬貨を取り出すと、バイクのアクセルのグリップに挟むとタイミングを見て、プリウスのボンネットへ飛び移る。
「カンタレさん!バランスお願いします!」
「分かったよ!」
バイクは人が乗ってないが、バランスを保ちながら魔王軍の陣地へ走っていく。それをゴブリン達は打ち抜こうとするが当たらない。そして、魔王軍の陣地へ入ると、止めてあるタンクローリーに衝突してバイクは倒れる。
ドォォン
魔王軍の陣地は跡形も無く吹き飛び、その後には、車の残骸や、ゴブリンの死体が転がっていた。近くに行ってみるとグロい。日本だとこんな光景を見ることも無かったからな。
「うげぇぇえ」
佐藤が吐いたか。無理もない。背中でも擦っておいてやるか。
それにしても、いろいろ吹き飛んだな。タンクローリーの中のものにでも引火したのか?これだと生きているゴブリンもいないだろ。
「誰か!助けてくれ!」
近くのベコベコになったミニバンから声が聞こえる。もしかしてゴブリンに捕まった人間がいたのか。
ミニバンの中を見ると一体のゴブリンが縛られて座席に固定されていた。
「人間か!助けてくれ!いきなり爆発が起こって…」
バキッ
佐藤がゴブリンを殴った。理由くらい聞いてやろうぜ。あまりにもゴブリンがかわいそう過ぎる。
「話くらい聞いてやろうよ。な」
「話くらいなら」
ゴブリンと座席を縛っているロープを解くが、ゴブリンを縛っているロープは暴れないように解かない。
「ありがとう。これだけでも助かるよ」
「それで、何でお前は人間の言葉を話せている。そして、なぜ縛られていた」
「俺は、第三攻撃隊のアフだ」
「そんな事は聞いてない。聞かれたことだけ答えろ」
佐藤よ、質問するのに俺のダガーを使うのを止めてくれ。
「この言葉は、一年前に魔王を倒した男が俺達に教えてくれたんだ」
「その男の名前は?」
「確か、実島 武って言ってたな」
ここにきて思わぬ収穫だ。魔王がまさかの日本人だとは思っても居なかった。まだ、こいつにはしゃべって貰わないと。
「なぜ縛られていた」
「俺は出陣の直前で逃げ出そうとしたんだ。そしたらこの様だよ」
さて、こいつにはまだまだ聞きたいことがいっぱいあるな。しかし、こんな場所で聞くのも気分が悪くなってくる。
「こいつを町まで運ぼう」
「本気で言ってるの!?こいつはゴブリンよ!」
「ゴブリンといってもいい奴も居るかもしれないし、他にもいろいろ聞き出したいからな」
ゴブリンを車の後部座席に乗せて見張りとして佐藤も一緒に後部座席に乗せた。これなら、万が一変な行動をとっても佐藤が持っているダガーで一刺しだろ。
「変な行動を取るなよ。もし変な行動をしたらねーちゃんがクビチョンパしてくれるぞ」
「あんたもクビチョンパしてやろうか?」
「すいませんでした」
町に戻ると、大勢の人が出迎えてくれた。完全に俺達は英雄扱いだ。
「よく戻ってきましたね。おや、そのゴブリンは?」
「捕虜です。牢屋か何かありませんか?」
「それなら私の家の地下に拷問……取調室と牢屋がありますのでそちらへ」
今、拷問って言ったよな!俺には町長の笑顔が怖く見えてきたよ。
とにかく、このゴブリンから聞きだせることを聞き出して少しでも情報を集めないといけないけども、佐藤は立ち合わせないほうがよさそうだ。友達を殺された恨みがまだ残っているみたいだし。
町長の家では豪華な食事が用意されていたが、まずは後部座席のゴブリンを地下に連れて行ってからだ。
「俺、殺されるのか?」
「殺すかどうかは後で決める。今は牢屋で大人しくしとけ」
ゴブリンはやけに大人しいな。何か企んでるのかそれとも、本当に大人しくしているかわかんねぇ。とにかく用意してくれた食事でも食べに行くか。
「遅いよ!もうみんな食べてるよ!」
佐藤、さっきまでの威勢はどこに消えた?それと、町長はもう酔っ払っているな。
「今日の主役達にもう一度かんぱーい!」
町長は酒が入ると色んな人に絡んでしまうタイプか。めんどくせぇ!肩を組むな!酒くせぇ!
「佐藤さん!あなたもすごいですよ!戦いになるとあんなに人が変わるとは思っても居ませんでしたよ!」
「そうですか?昔から人助けには熱意が入るんですよ!」
うわ、佐藤も完全に酒が入ってるな。というか、酒が入ってないのは俺だけか。空気を読んで飲むか。
~次の日の朝~
完全に酔いつぶれてしまっていた。こんなの初めてだな。元の世界では飲み会はとことん断ってきたからな。それにしても、二日酔いとやらにはならなくて良かった。
「ん……おはよ」
佐藤が目覚めるが、頭を抑えているな。完全に二日酔いだな。
「頭痛いから昼まで寝てる……」
佐藤が居なくなった今のうちにあのゴブリンからいろいろ話でも聞いておくか。おっと、パンだけでも持って行ってやるか。
「昨日は楽しかったか?」
「何で知ってるんだ?」
「上の騒ぎがここまで聴こえてたよ。あと、鍵掛け忘れてるぞ」
しまった!牢屋の鍵を閉め忘れてた!……なぜ逃げてない?
「どうして逃げないのかって顔だな。それはな、もう魔王軍を辞めようと思っていたからだよ」
「ほらよ、パンだ」
「ありがとよ」
なんか、ゴブリンって馬鹿なイメージしかなかったけど、人間とはあまり変わらないんだな。
「ところで何を聴きに来たんだ?」
「魔王軍についてだ。知っていることを全部話せ」




