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花壇

 

 お前は良いよな。

 自由にできて、動けて、話せて、感情を伝えられて。

 俺はそんなことできもしない。

 喋ることもできず、動くことも、感情を伝えることもできない。

 俺は見ていること、聞くことしか出来ないのさ。

 それがどれだけ孤独か、空虚か、無意味か、この俺の苦しみをどうやったらお前に伝えることができるんだ?

 どうしたらお前にわかるんだ?

 お前が俺の前で無理に笑顔を作ろうとしているな、それがどれだけ俺を苛立たせているか、想像もできまい。

 お前の悲しみなど、今の俺には負の感情しかわかない。

 最初は俺も嬉しかったさ、ああ嬉しかったともさ。

 お前とずっと、死なずに、生きていられるんだから。


 でもな、もう疲れたんだよ、疲れたんだ。

 お前はこれで満足かもしれない、満たされた時間かもしれない。

 だが俺にとっては終わらない、終わらせてもらえない空虚な時間なのさ。

 どうやっても伝わらない俺の虚しさがわかるか?

 何してもわかってもらえない悲しみがわかるか?

 こんな俺を見続けさせられているお前に、どれだけ申し訳ないかが!

 いつまでもいつまでも変わらないものなんてものは存在しない、俺は解放されたいんだ。

 無理なんだよ……抱き締めたくても、愛を囁きたくても、出来ないんだ……。


 虚しいよな、お前に伝えたいことが、いくつもいくつも考えつくのに、伝えられないんだからさ……


 悲しいよな、今すぐ飛び起きて、君を幸せにしたいのに。


 君を幸せにするって、退屈させないって、寂しい思いをさせないって、涙をださせないって最初のころ約束したのに結局この様さ。


 俺はなんて惨めで、愚かで、裏切り者なんだろうな。


 ああ、君だけはせめて、幸せに生きてほしいのに。

 結局それを叶えることは出来なくなってしまった、俺がいるせいで。

 ああ、君は薄情な俺を見捨ててくれ。

 君はとても頑張った、もう俺に時間なんか割く必要はないんだ。


 しかしこの気持ちも結局は君に伝わらない。

 俺の体にずっとしまわれ続ける言葉の嵐。

 悲しみ、申し訳無さ、何もできないことの怒り。

 それでも君は大切な花を愛でるように、慈しむように毎日俺を手入れし続ける。

 きっと君はとても不幸なのだろう。

 こんな枯れ、朽ち欠けた植物に、ずっと付き添っているのだから。

 だから、せめて、せめて俺は願おう。


 君の来世にまた俺は君と出会い、今度こそ、今度こそ幸せにしてみせる、と。


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