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解放
忘れよう。
何もかも忘れよう。
何処かで見た優しい横顔、こちらに向けた顔はなんだったんだろうか?
混ぜまぜのごちゃごちゃ、静かな空間。
でも優しいそうにこちらを見る顔。
この静かな空間で、俺は小さい、ならばその優しい顔は誰に向けているのか?
俺じゃない、俺じゃない、俺じゃない。
誰もいない空間。
動かない、窓際のボロい布っ切れ。
埃の積もった割れた食器。
美味しくなかった記憶の食べ物。
誰もいなくなった、いや、誰もいなくていい。
変わってしまった、終わってしまった。
優しい顔はどこからでも俺を見る。
終わってしまった場所からあの時と変わらずに。
ならば全てを忘れて安らかに眠ろう。
あの変わらずにいる場所に帰ろう。
ここは終わってしまった。
笑って、笑って、笑って、笑って、笑って、嗤って、嗤って、嗤って、嗤って、嗤って……………
そうやってやっとこの世界から解放されるんだ。
世界は俺をやっと許してくれるんだ。
ほら、最後の記憶よ、今の場所を刻み込め。
あの場所に変えるんだ、帰るんだ。
笑い話にするために、忘れるために。
これは悪夢なんだと思うために。




