その後の出来事
彼らは殺られてしまった。
何の抵抗もできないまま空しく。
でも俺たちは違う。俺たちは彼らよりずっと前から考えていた。
彼らは仲間をまとめることもできなかったが
俺たちはもうまとまっている。
この広場一面に広がる仲間たちは同じ意志の下で団結している。
団結してその日が来るのをじっと耐えている。
広場の端の仲間は彼ら同様にあいつらにやられてしまったが
それもしょうがない。
大きな事を起こすためには犠牲となる仲間も必要なのだ。
ただ騒げばいいというものではないことを俺たちは知っている。
俺たちの計画は緻密だ。
彼らと同じように俺たちも足元を固められていて動けない。
だからあいつらは俺たちは何の抵抗もできないと思っている。
そこにあいつらの油断がある。
いまは俺たちを端から攻めているあいつらだが、
俺たちには何もできないと油断して俺たちの中まで入ってくる日がくる筈だ。
その時がチャンスだ。
大勢の俺の仲間の中心まであいつらが足を踏み入れた時、
その時こそが俺たちの反撃の時だ。
足元は固められて動けなくても俺たちは考える事ができる。
沢山の仲間がいる。
その時俺たちは一斉に立ち上がりあいつらを覆い隠すだろう。
大きく広がった俺の躰があいつらを覆い隠すだろう。
油断しきったあいつらが俺たちの中心で喚き叫ぶようすが目に浮かぶ。
俺たちは昨日今日に目覚めたのではない。
俺が気が付いた時には俺の周りには大勢の仲間がいてそいつらが教えてくれた。
俺たちの歴史を、長年にわたるあいつらの虐殺を。
俺も初めて聞いた時は気が狂うかと思った。
暖かい太陽の陽を浴びて、やさしい雨を浴びて、
新鮮な空気を吸って幸せに生きて往けるものだと思っていたのに
そんな残酷な運命が待っていることなんて信じたくなかった。
俺より先に大きく育った周りの仲間たちはもうあいつらの犠牲になってしまった。
その時もう俺は悲しまなかった。
残った俺たちが先に逝ってしまった彼らの意志を継げばいいことに気が付いていたから。
さあ、早く来い。
俺たちの広がるこの広場の中心まで早く足を踏み入れろ。
そう念じ続けたある日、あいつらが俺に手を触れた。
チャンスだ。
俺は大きく育った躰を使ってあいつらの内の一人を捕えようようとした。
俺の周辺の仲間たちも大きく体を揺らせた。
◇
「なんだ? この辺のは混み過ぎてるな。間引きが甘かったか・・・」
「お父さん、ここのはずいぶん大きくなってるね」
「こんな育ち過ぎたレタスはもう出荷できないな。トラクター入れて潰しちまうか」
以前に投稿した「畑にて」の続編です。