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川を挟んで、それはある。
目の前に大きな城門が見えた。
どれぐらいの大きさなのか見当がつかないくらいに。何回も見てきたが、今日が一番圧倒される気持ちだった。ただ、訪れるだけならば緊張などしない。これから起きようとしている出来事がバジルを緊張させた。
手は少し汗ばんでいた。横には門番がいる小屋があった。
まず、そこに行って声を掛けた。
「門を開けて欲しいんだけど」
「何用だい?」
小屋から出て来たのは、 背の高い若者だった。
「今日会う約束をしているんだ」
「何か証明出来る物は?」
確かに見たこともない者がこんなことを言えば不信がるのも当たり前だ。バジルは招待状を門番に見せた。
「あぁ、確かに。聞いているよ。今、門を開けるから、待っていてくれ」
そう言って、門番は小屋に入って行った。
数十秒待つと、門が降りてきた。川を渡れるように、橋の代わりになっているようだ。
「そのまままっすぐ進むと執事がいるから、場所はそこで聞いてくれ」
門番はそう言うと、また小屋に戻って行った。
言われるままに、道沿いにまっすぐ進んだ。城なんて初めて入るのだから、なにがどうなっているのかなんて分からない。まあ、城の中なんて一般の者が簡単に入れるものではない。
なぜ、バジルが城に入ることが出来るのか。
そう、今日こそが競技会の特典である、好きな相手と手合わせが出来る日なのだ。どれぼどバジルがこの日を待ち望んでいたか。
門番にまっすぐと進んでくれと言われたので、言う通りにというか道がまっすぐだったので、そのまま進んだ。道の周りには季節の花がたくさん植えられていた。
やっとたどり着いた城の扉には髭を生やした初老が立っていた。背筋がまっすぐ伸びていて、執事らしいきっちりとした服を着ていた。
「バジル様ですね。トニーと申します」
頭を深々と下げる。
「どうぞ。部屋までご案内致します」
トニーと名乗る執事に案内され、城の中に入る。甲冑や銅像、絵画など、普段見たこともない物があちらこちらに見える。天井は高く、白で統一されて、清潔感がある。
奥に進み、階段を登る。
「こちらでお待ちください。また、呼びに参りますので、失礼いたします」
また深々と頭を下げて、扉を閉めた。待合室のようだった。ソファと机があり、温かい飲み物が置かれていた。初めての場所で落ち着かないのは確かだ。
バジルはソファに座り、一息ついた。




