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レイピアの白い大きな門に行き、門番の許可を貰って入国をした。
時刻は十二時過ぎ。二人はお腹が空いたので、町中で賑わっている食堂に入った。
「いらっしゃいませー」
という挨拶が店内に響き、二人はテーブル席に案内された。窓側だったので、人の行き来が見えた。
食堂は木目調の壁に大きな窓があり、太陽の光が入り込んで明るかった。スタッフが常に動き回り、活気に溢れていた。カウンターとテーブル席があり、子供づれの家族や女子同士で来ていたりしていた。
テレビが天井近くに吊り下げられていて、食べながら見ることが出来た。
『まず始めに、ニュースです。フォークス研究所が新薬候補物質を発見したことにより、新薬の研究を発表いたしました。安全性や品質などの確認のため臨床実験を行い、その費用を国が支援することになりました。――では、次のニュースです』
「いらっしゃいませ。ご注文お決まりになりましたら、お呼びください」
水の中に氷が入ったコップとメニューを持ってきた店員にお礼を言って、メニューを見る。ハンバーグや揚げ物、麺類などの種類が豊富だった。
レオンが店員を呼んで、ティナが食べる新鮮な野菜と炒めた肉がのった丼と自分が食べたい肉をタレで炒めたスタミナたっぷりの定食をまとめて言った。
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
「あの、観光できる有名な場所とか知りませんか?」
ティナは店員に観光客らしく見えるように聞いてみた。
「そうですね。フォークス研究所はどうですか?」
「さっきのニュースのですか?」
「はい。薬の研究で有名なんですけど、魔力の研究とかもしてて、中を見学出来ますよ。学生さんがよく行ってますよ」
「そうなんですか。ありがとうございます」
「旅行、楽しんでくださいね」
「はい」
店員と話している間に、料理が着々と運ばれときた。
二人は黙々とご飯を食べて、お店を出た。
「あぁ、美味しかった」
レオンは満足そうにお店を出ると地図を取り出した。
調査員が滞在させてもらっている店までの道を書いている地図を広げ、あっちの道か、こっちの道かと確認していると、町の人が声をかけてくれた。
「迷ったのかい?」
「ガラス堂に行きたいのですが」
「ガラス堂なら、そこの道を左に曲がって十字路を右だよ」
「ありがとうございます」
二人は言われた通りに道を進んだ。
ガラス堂ミリューは木造二階建てで、一階が店舗で二階が住居スペースでここに調査員は住ませてもらっている。一階は外からも見えるようにガラス張りでキラキラと商品が煌めいていた。扉を開けて店員を確認するとお客さんの接客中だった。従業員は雇っていなくて、店主であるミリューが一人で切り盛りしていると報告書に書いてあったので、ミリュー本人だろう。歳は40歳後半で年相応に見えない肌のハリと仕事熱心な力強い目の輝きが印象的な人だ。
お客さんは紫色の髪で後ろを尻尾のような長い髪を結んだ青年で全身に黒をまとい、肩には猫が行儀よく座っていた。普通の客には違いないが、言葉に表せれないような不思議な雰囲気を持つ人だった。
ティナとレオンは商品を眺めながら、お客さんのが出ていくのを待ったが、広くもない店内だったので会話を聞き取ることができた。聞いていないふりをしながらだが。
「すみません。この容器は?」
「これは香水の容器ね。昔の有名な香水がモチーフで、碧色とピンク色で対になっているようですよ」
「これ、いただきます」
「はい。ありがとうございます」
店員は碧色とピンク色のガラスの容器を持ってレジに向かった。会計が終わり、客がいなくなったところを見計らい、店員に声をかけた。
「ミリューさんですか?」
「はい。あなた方は?」
「ティナとレオンといいます」
「あら、こんにちは。リアから聞いているわ。観光をしに二人が来るってね。もし、戻ってくる前に来たら鍵を渡しておいてって言われてるの。どうぞ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「こちらこそ。ごゆっくり」