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罰ゲームで百人斬りのレズに告白してみた結果 〜なんか毎日貞操の危機を感じてるんですけど!?〜  作者: はるしゃ
第一章

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7/16

第7話 なまえ

「あれ、乙葉ちゃん? ……と、星宮さん?」



考えろ、考えろ。今この場を切り抜く方法を。

私は背中にだらだらと流れる汗を自覚しながら、ごくりと唾を飲み込んだ。


そして、星宮一織に余計なことは言うなよ……!と念を送る。届くわけないけど!



逢坂おうさか茉梨まつりちゃんは、2年A組のクラスメイトだ。確か女子バレー部に所属してて、クラスでは運動部のグループに所属してる。


茉梨ちゃん自体が目立つことはあんまりないけど、運動部女子のグループは、2年A組の教室の中でもかなりの発言力を持つグループだ。クラスの女帝、妹尾グループほどではないけど。


もちろん、私が罰ゲームで星宮一織に告白して、うっかり承諾されて交際中だなんて情報は、罰ゲーム考案者の玲緒奈と夏希しか知らないことで。なんなら、当人の星宮一織だって知らないわけで。


ここでそんなことを説明しようもんなら、私は後で星宮一織に組み敷かれてお仕置きを受けるに違いないし……かといって、実は付き合ってるんだよね!とか説明しようもんなら、月曜日からのクラスでの私の立ち位置が危うい。机とか隠されてるんじゃないかな。……玲緒奈たち、守ってくれるよね?


無難なのは、実は友達でした!とか、ついさっきそこで出会って〜あたりか。でも空気は読むものじゃなくて吸うものだよ、なんて認識の星宮一織が、咄嗟に私に合わせてくれる気は全くしないわけで。


私がぐるぐると思考を巡らせていると、右手に紙袋、左手にクレーンゲームの景品を持った星宮一織が、ひょこっと顔を出してくる。



「天沢さん、だれ? そのひと」


「だ、だれって……クラスメイトでしょ!? 逢坂茉梨ちゃん! なんで知らないのよっ」


「私、転校生だから」


「あんたが転校してきてもう一ヶ月は経ってるっての……!!」



そんなやり取りをしてると、茉梨ちゃんはぽかんと口を開ける。



「えっと……仲、いいんだね?」


「いいよ」


「よくない!!」



しまった。これでもう、さっきたまたまバッタリ会っちゃったんだよね〜!っていう言い訳は立たなくなった。


そんな私を尻目に、星宮一織はふふんと誇らしげな顔をする。



「天沢さんは、照れ屋なだけ。仲いいよ。だってわたしと天沢さんは昨日からつきあっ────」


「わーーーー!? 何言っちゃってるのかなぁ!! ボケた!? 星宮さんボケちゃったぁ!?」



余計なことをぺらぺらと喋ろうとする星宮一織の口を、私は両手で塞いだ。星宮一織はあからさまにむっとした顔をするけど、知ったこっちゃない。あとで何を言われようが、どんなセクハラを受けようが、私には守らなければならないクラスの立ち位置ってもんがあるのだ。


クラスの一軍女子、天沢乙葉は百人斬りのレズ、星宮一織と交際している。即ち、天沢乙葉=筋金入りのレズ。なんなら欲求不満のレズ。そんな情報が回ってしまったら……オタバレなんかよりも、ずっと私の立ち位置を脅かしちゃう。不登校まっしぐらだ。それだけは絶対に避けなければ。


しかし、そんな私を嘲笑うかのように。



「ひゃっ!?」



れろん、と私の右手が舐められた。犯人はもちろん星宮一織。私はうっかり、星宮一織の口元を覆っていた手を離してしまう。


そして、



「ぼけてなんか、ないよ。わたしと天沢さんはつきあってるんだよ、真剣に」



私を破滅へと導く言葉を、宣ってしまうのだった。


茉梨ちゃん、そして茉梨ちゃんのお友達までもが、めちゃくちゃびっくりした顔をしてる。当たり前だ。天沢乙葉がレズって時点で有り得ないのにも関わらず。

妹尾グループは星宮一織と敵対しているのが、2年A組での常識中の常識。そのせいで誰も星宮一織に近づくことすらできないのに、あろうことか妹尾グループの天沢乙葉が、星宮一織と交際しているなんて。


星宮一織は、場の空気なんて一切読めませんって感じで続ける。



「さっきだって、天沢さんとトイレで────」


「うわーーーー!!!!」



その続きは絶対に言われてたまるものか!!!

私は星宮一織の手を引いて、その場から逃げるように駆け出した。行先はわからない。でも、それ話されちゃったらもう人生詰んじゃうから……!!!



「茉梨ちゃん!! あとで詳しく説明するからー!!!」



まだぽかんとしたままの茉梨ちゃんに向かってそう叫びながら、そんな茉梨ちゃんが豆粒くらいのサイズになってもなお、私は走り続けるのだった。








✝︎








「なに考えてんの!?」



私は肩で息をしながら、休憩用のソファに腰掛ける星宮一織に人差し指を突き立てる。



「なにって、どういうこと?」


「どういうもなにも……!! なんで付き合ってること言っちゃってんの!?」



星宮一織は不思議そうに首を傾げる。



「ふつうでしょ。妹尾さんだって、教室で大きい声で恋人の話してる」


「それは、玲緒奈が付き合ってるのは男の人だからで……! って、そんなところから説明しなきゃダメ!?」



まるで常識が通用しない星宮一織に、私は頭を抱える。

ちなみに、茉梨ちゃんにはつい先程LINEで連絡をとった。


「実は玲緒奈たちとの罰ゲームで、星宮さんと付き合ってんだよねー笑」「話したってバレたら玲緒奈たちに怒られるから、このことはどうか内密にー!(>人<;)」って感じで。玲緒奈って名前さえ出しておけば、誰しもが言うことを聞いてくれるはず。……ちなみにまだ既読はついてない。こわい。


私は産まれたての赤ちゃんってくらい常識を知らない星宮一織のおでこを、つんつんと弾く。



「……はぁ、あのさ。女同士で付き合うって、ふつうじゃないんだよ。なんならありえないことなの! だから、クラスで女同士で付き合ってまーすとか言っちゃったら、みんなからドン引きされたり、居場所がなくなったり……」


「それって、そんなに重要?」


「星宮さんにとって重要じゃなくても、私にとっては命の次に重要なの!! てかまず、なんでそんなに話したいわけ?」


「それは……」



星宮一織は少し勢いをなくす。そして口元を抑えながらそっぽを向いて、



「そうしないと、天沢さんがとられちゃう」



なんかよくわかんないけど、かわいい……?かもしれないことを言ってきた。



「と、とられるって……そんなわけないじゃん。女子校だよ?」


「恋愛対象が女性の人だっているよ。わたしや、天沢さんみたいに」


「私は……!!」



違うけど!と言いかけて、星宮一織に告ったのは私なんだった!と冷静になる。星宮一織は不思議そうに小首を傾げる。

私は誤魔化すように、



「ようは、とられなきゃいいんでしょ? じゃあ安心していいよ。浮気とか、そんなの絶対しないから、私」



私の恋愛対象は男性。その男性と関わる機会が、女子校に通ってる私にとってバイト先くらいしかないんだけど、バイト先にいる男性って社員のおじさんと、彼女持ちの大学生くらいのものだし。浮気なんてまずしない。っていうかできない。もしして星宮一織にバレちゃったときのことを考えると怖すぎるし、誰が好き好んでそんなリスキーなことを。



「…………」


「なに、まだなんか納得いかないの?」



星宮一織はそっぽを向いたままだ。

また、綺麗なおでこをつんつんと弾く。

星宮一織は観念したように、ぼそりとつぶやく。



「関係ないけど」


「うん?」


「逢坂さん……? と、仲良いの?」


「茉梨ちゃん? いや……まあ、ちょっとは喋るかなーくらい? なんで?」


「ふーん……なのに、名前で呼ぶんだね」


「はぁ……?」



要領を得ない星宮一織にイライラしてくる私。

なんか気になることでもあるんだったら素直に言えっての。


でも、星宮一織の様子はさっきまでとちょっと違っていて。

ちょっとだけ頬を赤らめて、もじもじさせている。


……まさか。



「星宮さん、まさか妬いてんの?」



どうやら図星のようで、星宮一織は俯いた。月のように端正な顔が、雲に隠れるみたいに見えなくなる。


そういえば、昨日交際を開始してから、ずっと天沢さん、星宮さん、って呼びあってたっけ。別に私はなんとも思ってなかったけど、言われてみれば恋人同士っぽくはない……?


まあ、名前を呼ぶくらいで、星宮一織のこのめんどいムーブが終わるんなら、私はなんだっていいや。



「ねえ、一織」



うん、私もなんかこっちの方がしっくりくるわ。正直こんな変態にさん付けとか、なんかムズムズするしね。

星宮一織……いや、一織はびっくりしたようにばっと顔をあげる。



「これから、一織ね。あんたも好きなように呼べば?」



一織はちょっとだけ、慌てふためく。さっきまでずーっと私が振り回されてたから、正直ちょっといい気味だ。


一織は少しだけ頬を紅潮させて、柔和に微笑んで。



「乙葉」


「……うん」



少しだけ胸が高鳴ってしまったのは、やっぱり一織の顔が良すぎるからってだけだ。






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― 新着の感想 ―
いつも楽しく拝読しています! 乙葉ちゃんの周りで繰り広げられる面白いやり取りが本当に最高で、その掛け合いのテンポの良さにいつも引き込まれています。 特に主人公のキャラが大好きです。普段の面白いやり取…
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