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罰ゲームで百人斬りのレズに告白してみた結果 〜なんか毎日貞操の危機を感じてるんですけど!?〜  作者: はるしゃ
第一章

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第16話 知らない


ざわめく教室の中で、私はぼーっと空を見つめていた。


私の脳裏に過ぎるのは、やはり一織のスマホに通知された、夏希からの意味深なLINEだ。



『次いつ会える?』『もう限界なんだけど』



あれを目撃してしまった日から、もう三週間が経過している。

試験二週間前の勉強期間はあっという間に過ぎ、四日間の試験なんてそれ以上にあっという間に過ぎてしまった。


結局あれから、毎日一織の家に行って勉強を教えてもらっていたけど、一織からそれを問いただすことなんてできなかった。


だって、浮気してるの!?とか問い詰めるのって、情けないし恥ずかしいし。まるで私が一織のことを好きみたいじゃん。浮気性の彼氏を溺愛してる、神経質な重い女みたいで、私にふさわしくない。……そんな私は嫌だ。


もちろん、夏希にだって聞けていない。

そもそも夏希とはあの放課後での一件があってから、気まずくてろくに会話すらできてないし。まあ気まずく思ってるのはたぶん私だけで、夏希は気にせず「次の移動教室どこだっけー」とか「寝てたからノート写させてー」とか話しかけてくるけどね。



私はため息をつきながら、手元にある全試験の点数をまとめた成績表に視線を落とす。


二週間みっちり、一織から付きっきりで勉強を教えてもらった甲斐あって、これまでにない高得点だ。

答案を返却されるとき、先生からはありえないものを見るような目で見られたし、さっき写真を撮ってママに送ったら「合成ね?」「ママも最近のAIがすごいことくらいわかるんだから」とキッパリ言いきられてしまった。ちょっとは信じてくれないかなぁ。



でも、そんな高得点が書かれた成績表を見ても、私の心は一切晴れなくて。



────結局、二週間毎日一織の家にいたけど、一回も手を出されなかったな。



そんなことを考えてしまう。そんなことを考えてしまう自分も嫌で、無限に続く負のループにまた突入してしまった。


がっくりと項垂れていると、背後から能天気の塊みたいな存在が忍び寄る。



「おーとはっ! その姿、よほど点数が悪いと見えるっ」



ゆるく巻いた金髪に、ひっかけたら耳千切れるんじゃないのってくらい大きめのピアス。ちょっと生活に支障をきたすんじゃない?ってくらい派手なネイルに、学校にはふさわしくないガッツリ目のメイク。もちろん、私の友人である玲緒奈だ。当然のように後ろに夏希も控えている。……げ、今いちばん見たくない顔。


玲緒奈はそんな私の心情など露知らず、私が握りしめる成績表を「よっ!」と奪い取ってくる。

そしてそこに記された数字を見ると、しばらく???って顔をして、何度も目を擦って。



「………………はい? が、がくねん、じゅうい……?」


「は? うそだろ、あたしにも見せろ」



玲緒奈が目を丸くしながら、私の成績を読み上げる。……まあ、正直今のはちょっと気分良かったかな。


玲緒奈は成績表を夏希に手渡すと、そのまま私の両肩を抑えて、前後に激しく揺らしてくる。



「お、おとは……さんー!? なに裏切っちゃってんの〜!? なに本気出しちゃってんの〜!?」


「すげーな、これ。お前そんなにガリ勉だったっけ」


「……まあ、今回はやる気があっただけ」



夏希は引くわーって感じの視線を向けてくる。相変わらずデリカシーのなやつ。

私はそっぽを向きながら、なるべく冷たく言い切った。私はまだあの時のこと怒ってるんだからなーって気持ちを込めて。


しかし夏希は謝罪なんて言葉辞書にありませんって顔をして、私の耳元に顔を寄せ、



「学年一位のカノジョに教えてもらった、とか? やっぱ仲良いんだな、お前ら」



そんなことを呟いた。

当然その声は近くにいた玲緒奈にも聞こえたようで、



「あー! そゆこと!? あーしの勉強に付き合ってくれないなーって思ってたら……なんだー乙葉ラブラブじゃん♡もうあーしらとの相談とかいらないじゃん♡」


「……べつに、そんなんじゃないから。罰ゲームだから、仕方なく付き合ってるだけで。一織と仲良くなんて───」


「へぇ、お前星宮のこと下の名前で呼んでんだ。あたしらが思ってるより随分進展してんだな」



まだ付き合って一ヶ月しか経ってないのにさ。と続けながら意地悪に笑う夏希に、私はしまった、と歯噛みした。

前夏希からちょっかいをかけられたときは、苛立ちながらも一織の苗字呼びを徹底できていたのに。私の中で一織呼びが定着しすぎてしまっていたのと、頭がずっとぼんやりしているせいでうっかり出てしまった。


私は夏希をじろりと睨む。



「どうでもいいじゃん、呼び方なんて」


「なんでそんな怒ってんの? 仲良さそうでよかったな、それだけじゃねーか」



夏希に言われて、私は閉口する。

たしかに、そうだ。私は一体、どうしてこんなにイラついてるんだろう。


いつもの私なら、玲緒奈のだる絡みと夏希のノンデリ具合にやれやれ言いながら、丁寧にツッコミを入れてたと思う。一軍女子にとって空気を読む、良い会話の流れを作るっていうのは常識で、その空気を一緒に作れないやつなんている必要ないから。


夏希のことがむかつくっていうのは事実だ。前にレズだのなんだの言われたことに関してまだ謝ってもらってないし、罪を重ねるかのようにノンデリを炸裂してくるんだから、イラついて当たり前。



────けど、ほんとにそれだけ?



私の中で誰かが問いかける。ついでに脳裏に過ぎるのは、やっぱり一織宛ての夏希からのLINEで。


もやもやが蓄積する。真っ白なキャンパスに黒いインクを落としたときみたいに、じわじわと滲むように黒が広がっていく。


いやだ。こんな感情知らない。制御の仕方も誰にも教わってない。私は、私は……。




「……一織と仲がいいのは、私よりあんたなんじゃないの、夏希」


「…………は?」




言ってから、しまったと口を抑えた。

言うつもりなかった。どこかでちゃんと聞かないといけないとは思っていたけど、絶対にタイミングが違う。言うにしてももうちょっと自分の感情を整理してからがよかった。今のは自分の感情に振り回されてうっかり出てしまった反射のようなもので、私の脳が紡いだ言葉じゃない。

……しかもこれじゃあ、恋人の浮気相手に詰め寄る彼女みたいじゃないか。



私は口元を抑えたまま、夏希の表情を見る。


てっきり、あたしのことレズ扱いすんのか?とか怒ってくるもんだと思っていたけど。


見上げた夏希は、明らかに動揺していた。



「……お前、何か知ってんのかよ」



夏希が狼狽えながら、そう尋ねてくる。

絶対に知られてはいけないことを知られてしまった、そんな顔をしていて。

……やっぱり、夏希と一織の間には、私の知らない関係性があることは明らかで。



「知らないよ、なにも」



もやもやが溢れる。苛立ちを隠しきれない。



そうだ、私は本当に何も知らないのだ。


一織がどういう人なのか。

一織はなぜ、今までの女のように私を抱かないのか。

一織には本当に、私以外に関係を持つ女がいないのか。

夏希と一織は、一体どういう関係性なのか。あのときのLINEの意味は?


一織にまつわることは、私は何も知らなくて。




玲緒奈が心配したように、「えーと……ふたりともなんか、険悪ムード……的な??」と尋ねてくる。あの玲緒奈が気を使ってくれるなんて珍しい。


私はため息をつきながら立ち上がる。夏希が臨戦態勢に入るように少し後退したけど、無視して机上の教材やらなんやらをまとめてスクールバッグに入れた。


そしてそのまま教室を出ようとすると、次の授業の担当である高槻先生が慌てて私を呼び止めた。しかし私は足を止めず、体調が悪いと言ってその場を離れる。




本鈴の鳴る校舎を後にする。


今日も一織の家に寄ってから帰る予定だったから、家の鍵なんて持ってない。行き場をなくした私は、財布から一枚のカードを取り出した。


そしてそこに書かれた電話番号を入力すると、迷わず発信ボタンを押した。



ぷるるるる、とコール音が鳴る。しばらく待っていると、「はーいもしもしー?」と女性の声が私の耳を刺した。

私は拳に力を込めて、その女性に尋ねる。



「浅緋さん、今から会えませんか」











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