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罰ゲームで百人斬りのレズに告白してみた結果 〜なんか毎日貞操の危機を感じてるんですけど!?〜  作者: はるしゃ
第一章

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15/15

第15話 嫉妬とかそういうんじゃなくて


とうとう七月に突入してしまった……!!

毎授業で説明は受けていたけども、改めてひとつの表にまとめられた試験範囲表を見ると、絶望が込み上げてくる。


だって、だってさ!

中間はまだ科目数が少ないからなんとかなったけど、期末は現代文、古典、コミュ英Ⅱ、英語表現Ⅱ、数学Ⅱ、数学B、日本史B、政治経済、生物基礎、化学基礎の計10科目なわけですよ。


……いやまって、冷静に考えてこれからあと二週間でなんとかなるわけなくない!?なんで私、六月後半バイト入りまくってた!?


ちなみに試験は七月十五日から十八日の計四日間で、それが終われば翌週金曜には終業式、すなわち夏休みのスタートが待ち受けている。


うちの高校は40点未満で赤点、そして高二からは一教科でも赤点を取った人は夏休み期間中強制的に夏期講習に参加させられちゃうので、それだけは絶対に避けなければならない。うっかり死人が出ちゃうような気温の中、大量に汗をかきながら登校なんて惨めな思い、絶対にしたくない!



いや、うん。冷静に考えたら、夏期講習に強制参加さえさせられちゃえば、一織との夏休みデート♡(笑)は避けられるわけなんだけど。でも、一織にこの身を捧げることになったとしても、女子高生として夏休みは絶対に死守したい。だって来年の夏休みなんて、あってないようなもの。実質これが高校生活最後の夏休みなんだから!



私は全教科の試験範囲表と、それに当然のごとくついてきた、試験当日に提出する課題の一覧表を強く握りしめながら、試験への闘志を燃やすのだった。









✝︎








「それで、勉強教えてって頼んだのは私だけどさぁ……」



一織から紅茶(置き場所を見つけたらしい)を「粗茶ですが」と提供された私は、お礼を言いながら受け取ると独り言ちるようにそう言った。


一織はなにか?とでも言いたげな視線を向けてくる。



「なんで一織の家なわけ!? 図書館でって言ったじゃん!」


「それを、わたしの家に着いてから言っちゃうのが、乙葉らしいよね。鈍感気取りの誘い受け」


「なんか知らない単語だけどバカにされてることはわかるなぁ!!!」



そう。私は試験勉強に臨むにあたり、元県内一の進学校こと英東高校の生徒であった恋人いおりに頭を下げ、勉強を教えてもらうことにしたのだ。


たとえこれで「勉強を教えてあげたんだから、処女、もらうね」とか言われることになったとしても、私は一軍の女子高生として、夏休みの自由を獲得しなければならないという固い意思があったのだ。


ちなみに私の学力は、学年ではそこそこいい方だ、と自負している。いつもやばいー勉強してないーとか言っておきながら、平均以上はとっちゃう系。


まあそれは、小テストとかがある度に生粋のバカこと玲緒奈の勉強に付き合ってあげてたお陰で、普段から勉強の習慣があったからで。

一織と付き合ってから、玲緒奈の勉強に付き合うのが私から夏希にシフトチェンジしてからというもの、私は普段から真面目に勉強に取り組むっていう努力を怠ってしまった。


その結果が────



「しらなかった。乙葉って、あんぽんたんだったんだね」


「ぐっ……!!」



一織が、氏名欄に天沢乙葉と記入された小テストの用紙を、パラパラとめくる。その答案用紙の右上には、40点、38点、52点、24点と散々な点数が書かれている。……もちろん、100点満点の小テストたちである。笑えない。



「そ、それは! あんたが私を毎日のように家に連れ込むから、勉強の時間を取れなかっただけで!」


「でも、ふたりで勉強する日とかも、あったよね」


「あったにはあったけど!! あんたが休憩の度に太ももとか胸とか触ってくるから!!」


「それで感じすぎちゃって、集中できなかったんだ。かわいいね、乙葉」


「もう帰ろっかなーー!!!」



青筋をピキピキと立てながら荷物をまとめようとする私に、ごめんごめん、と謝って引き止める一織。……次バカにしたら本気で許さないからね!


まあ、セクハラに関しては今日もされるんだろうけどね。でも、夏休みの自由を死守すべく立ち上がった、今日の私は強い。いつもならなあなあで許してきたけど、私の体に手を伸ばそうとしたり顔を近づけたりしてきたら、全力ではたいてやるんだから。

もちろん、勉強を教えてくれることに対するお礼は今度するつもりだけど、それとセクハラとは話が違うからね。


一織が、時間もったいないし、はじめようか。と教材を取り出す。

私もそれに倣ってスクールバッグから教材を取り出して、あとついでに終わっていない課題もどんどん積み上げていく。

一織がちょっと呆れたような顔した。……仕方ないじゃん!てかこれが試験二週間前の学生のふつうだから!逆に一織はいつ終わらせてんの!!







✝︎







「えー……と、ここはrealized?」


「ん、語順みてみよっか。ここ、Onlyで始まってるよね。前に副詞句出てるから?」


「えー…………did I realize?」


「そう。Only+副詞句=助動詞前。和訳はできる?」


「『家を出たあとになってようやく、自分のミスに気づいた。』」


「よくできました」







✝︎









「足して3? あ……まとめる?」


「うん。log₂[(x−1)(x+3)] = 3」


「じゃあ2³で、8か」


「だから (x−1)(x+3)=8」


「展開して……x²+2x−3=8、移行してx²+2x−11=0。どうよ!」


「で、終わりじゃないよ。乙葉、小テストでもここでまちがえてた」


「え?」


「最後に、定義域確認するの。x−1とx+3が正」


「……あーーー」






✝︎






「助動詞多すぎー! ……えー、分解して……に+けり+らむ?」


「うん、合ってるよ。『に』は完了、『けり』は過去・詠嘆、『らむ』は現在推量だね」


「……時制ばぐってない?」


「過去の出来事を、今になって推量してるんだよ」


「えー……じゃあ、『どうして移り変わってしまったのだろうか』って今思ってるよーってこと?」


「そういうこと。乙葉は飲み込みが早いね」


「……ま、まーね?」







✝︎







……おかしい。

勉強を開始して二時間半が経過して、私は徐々に心を侵食していた違和感にようやく目を向けることにした。


ちなみに勉強の進み具合はこれまでにないほど順調。いちばん量の多かった英語、数学はもう完了。古典も家に帰ってちょちょいとやるだけで終わりそうだ。

いつも課題が終わらないせいで試験勉強に手をつけれないことが多いのに、まさか二週間前にこんだけ終わっちゃうなんて……一織パワー、英東パワー恐るべし。


……っていうのは置いといて、今は違和感の話だ。

おかしい。絶対におかしい。なにがって───



一織が私に手を出してこないなんて、絶対におかしい!!



二時間半でしょ?

普段の一織なら、一時間勉強したあとの休憩時間で胸を三揉み。

結局我慢できなくなって後ろから抱きしめてきて、しれっとブラを外して胸の愛撫に十五分。

そんで私が昂った頃に、じゃあ勉強再開しようかとか言われて、私が悶々としながらワークに向かってるところをおちょくりはじめて、太ももを一撫で。

そのあと一時間勉強したら、気分転換にパンツを見たいなとか言われてスカートを強引に脱がされる。


これが一織のふつうだ。いや文に起こしたらこっちがおかしいんだけど!!



なのに、なのにだ。今日の一織は私に一切手を出してこない。胸はもちろん太ももも触ってこないし、頬とかうなじにキスとか、そんなことも一切なし。あれ、この人私の家庭教師だったっけ?って感じに、ずーっと真剣に勉強を教えてくれてる。


こんなの一織じゃない……!!いや、めっちゃありがたいけどね!?



「───だから、さっき出たのをここに当てはめて…………乙葉?」



ひとりで悶々としていたら、その間もずっと勉強を教えてくれていたらしい一織が、私の顔を不思議そうに覗き込んできた。やば、聞いてなかった……!


今日一日の中でいちばんの接近に、私は思わず仰け反る。何回も嗅いだことのあるはずなのに、一向になれる気配のない一織の香りが鼻腔を擽った。



至近距離で見ると、やっぱり私の彼女いおりは、もうめちゃくちゃ美人で。



テレビに出ててもおかしくない、なんなら出てしまえば、一躍大人気ドラマのヒロインにでも抜擢されちゃうんじゃないかってくらいの美しさだ。


まつ毛は多くて長いし、二重幅もくっきり。瞳は宝石みたいに輝いてて、鼻梁が通っているのに小ぶりな鼻は……たしか、忘れ鼻っていうんだっけ。


私の体が疼く。主に下腹部が、今日はまだなの?って言うみたいにきゅんって疼いてくる。

絶世の美少女に、会う度に体を好き勝手されてるんだから、それは言わば当然の反応で。私の体が悪いんじゃなくて、悪いのは全部、毎日セクハラをしてくる一織だ。


なのに、なんで。



「一織……」


「うん。わからないところでも、あった?」


「いや、ちがくて……ううん、やっぱなんでもない」



なんで今日は触ってくれないの?

そんなバカみたいなことを言おうとしていた口を、私は慌てて閉じた。


何言おうとしてんの?そんなの、私が一織から触れられることを期待してるみたいじゃん。

一織ってレズだし、中学生の頃に百人斬りを達成したとか、ほんっとーに節操のない人で。学校中からドン引きされてるような、そんなふしだらな人に触られるとか、嫌に決まってるじゃん。


最近触られすぎて慣れてきたって言っても、ただ慣れるのと、物足りなくて触れてほしくなるのとでは全然意味が違う。



一織は不思議そうに小首を傾げてる。今日に限って鈍感だ。

いつもなら、「そういう気分になっちゃった?」「乙葉ってほんとやらしいよね」「わたしが乙葉をえっちにしたんじゃなくて、乙葉がもともとえっちだったんだよ」とか言って押し倒してくるはずなのに。


……まさか。



「一織って、今も私以外の女と、関係持ってるの?」



私は問い詰めるような目で、一織に尋ねる。

こないだわかちゃんから言われたことを思い出したのだ。

中学時代に百人斬りを達成した一織は、後ろに大量のレズを従えてたって。


今でもその人たちと関係を持ってるなら、納得がいく。そこで性欲を発散できてるから、今私にちょっかいをだす必要がないんだ。


だって、ずっとおかしいと思ってた。



百人斬りの一織が、なんで私を抱こうとしないのかって。



付き合って半月。平日はバイトがある日以外、毎日のように一織の家にきてて、いくらでもチャンスはあった。


でも、私が一織にされたことといえば、胸を揉まれる、太ももを触られる、首元とか頬とかおでこにキスをされるってくらい。


唇にキスをされるとか、パンツを脱がされて秘部に触れられるとか、そういう一線を超えちゃうようなことは一度もされたことがなかった。


考えたことはあった。付き合ってまだ少ししか経っていないから、ちょっとずつ私の体をほぐしていってるのかな、とか。けど、中学時代に百人斬りを達成したような女が、私だけ丁重に扱うなんて真似するだろうか?



……他に女がいるんだ。

私は自分の中の仄暗い感情を抑えきれず、一織を睨みつけた。


けど一織は、そんな私を窘めるようにふわりと笑って。



「持ってないよ。いまは、乙葉だけ。乙葉しかいらないから」



そんな言葉に、仄暗い感情が簡単に霧散され、高鳴ってしまう自分の心が本当に嫌になる。

こんなの、今まで数多の女を落としてきた手練の常套句かもしれないのに。ほら、なんかよく考えたらホストっぽいじゃん今のセリフ。



「ほんとに?」


「ほんとうだよ。……今日の乙葉は、なんかかわいいね。ごめんね、不安にさせちゃって」


「……うるさ」



そう言われて、今の私が『大好きな恋人が浮気をしてるんじゃないかと疑って神経質になってる女』みたいだって自覚して、顔に熱気が集まった。


そんなんじゃない、そんなんじゃないのに。

こっちは罰ゲームで付き合ってあげてるだけで。けど、私のことかわいいとかすきだよとかしょっちゅう言ってくる癖して、同じ口で他の女にも言ってると思ったら、私っていう超絶キュートな一軍女子が大事にされてないみたいで、なんか悔しいから。ただそれだけだ。



一織が、駄々をこねる幼子を窘めるみたいに、私の頭を撫でる。そんなので私の機嫌をどうにかしようとしてるとか気に入らないはずなのに、妙に気持ちよくて、やっぱり悔しい。



一織は「紅茶冷めちゃったね」と立ち上がる。

休憩にしよっか、待っててねとポットとカップをトレーに載せた一織は、そのまま扉を開いてキッチンの方へ歩いていった。


静かな部屋に、駄々っ子がひとり残される。



「はー……もう、何言っちゃってんの、私」



冷静になると、めちゃくちゃ恥ずかしいことを言ってたような気がして、顔が熱くなる。

人様の家におじゃまして、人様に勉強を教えてもらっておいて、何やってるんだ私は。


あまりにも情けない自分にため息をついていると、ピコン、と通知音が鳴った。

誰からだろ?と自分のスマホを見るけど、通知は特になし。じゃあ一織のスマホ?


私のスマホとは正反対に、シンプルなクリアケースに入れられた一織のスマホが、テーブルの上に置かれていた。

ピコン。再び通知音が鳴る。やっぱり私のスマホではなくて、一織のスマホだったようで。


LINE、だよね。一織がやり取りする相手って、誰なんだろう。学校で私以外に喋る相手がいる様子もないから、親御さん?いや、親御さんとは確かっていうか多分、別々に暮らしてるんだっけ。


いや、まさか。

さっきはああ言っていたけど、やっぱり今でも関係を持ってる昔の女……とか?


よくないとはわかっているけど、元はと言えば素行の悪い一織が悪いんだから。

ちょっとした好奇心から私は恐る恐る体を起こして、一織のスマホを手に取った。


私の瞳に、一織宛のLINEの通知が映される。




望月夏希:次、いつ会える?


望月夏希:もう限界なんだけど




ごとん。

思わずカーペットの上に、一織のスマホを落としてしまった。


一織が戻ってくる足音が聞こえて、慌ててスマホを持ち上げてテーブルの上に置く。

そして何事もなかったかのように、私は元いた位置に戻って息を整えた。



「ごめん、お待たせ。紅茶なくなっちゃったみたいで、煎茶になるけど、いいかな」


「う、うん、ありがとう」



声がうわずる。私は今どんな顔をしているんだろう。


何あれ。なんで夏希が?

なんでLINEを交換してるのかもわかんないし、なんで私に隠してやり取りしてるのかもわかんない。次いつ会えるかって、何回もふたりで会ってる人の言い草じゃん。しかも限界ってなにが?会えなくて限界ってこと?それとも……


一織から雑談を振られて、反射のように返すけど、私の頭の中はふたりの関係性について思案することで精一杯だった。


やっぱり、そういうこと(・・・・・・)……だよね?





そのあと、一織は私が苦手な数学の範囲を重点的に教えてくれたけど、私の頭には何ひとつ入らなかった。









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