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罰ゲームで百人斬りのレズに告白してみた結果 〜なんか毎日貞操の危機を感じてるんですけど!?〜  作者: はるしゃ
第一章

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第11話 夏希の弾糾

「あたし、思うんだけどさ」



私と夏希以外誰もいなくなった教室で、ばちんっというホッチキスの音が響く。



「なに?」


「誓約書書かせたんだから、この作業、玲緒奈おまえがやれよって言ったらやらせることできたんだよな」



思いつかなかったぜ……と歯噛みする夏希に、私は夏希お手製の誓約書の内容を思い出して、確かに……と納得した。


しかもあの誓約書には確か、いついかなる場合でも呼び出しに応じる、みたいなこと書いてあったはずだ。だから、今ここで夏希がLINEか電話でデート中の玲緒奈を呼び出して、夏希の代わりに作業させるってことは可能なんだろうけど、そうしないのは夏希の良心だろうか。



「ま、いいや。今度会ったときにストレス発散しよ」



夏希の持つホッチキスが、バチコン!みたいな音を立てる。良心とかではないっぽい。ひぃ……玲緒奈、ファイト……。


このクラスで敵に回したらヤバいのは、玲緒奈なんかじゃなくて夏希だなと再確認する私。あの日私に課された罰ゲームが、一織への嘘告白でまだよかったんじゃないかとか思えてしまう。夏希お手製の誓約書にサインする、の方が圧倒的に恐ろしい目に遭っていた気がする……。


一織のいないところで一織に対する株を上げながら、私はそういえば、と話を振る。



「夏希と玲緒奈って、幼なじみなんだよね」


「おー、そうだな。一応幼稚園の頃から」


「ずっと仲良いの?」


「そういうわけでもねーな。初めて喋ったのは中学上がったときからか」



意外だ。夏希が人に心を開くタイプとは思えないから、あそこまで仲がいいのは長年の付き合いが故だと思っていた。玲緒奈はともかく、夏希は今だって私に心を開いてくれている感触ないし。


ていうか、中学か。確か夏希の中学時代はバリバリのヤンキーだったっけ……。



「ヤンキーとギャル、そりゃ仲良くなるよねぇ……」


「いや、別にそういうんじゃねえよ。中学の頃のあいつ、あんなんじゃなかったし」


「え!?」



てっきり中学、なんなら小学校の頃から金髪ギャルだったんだろうなっていう勝手なイメージを持っていた私は、夏希のその言葉に驚きを隠せない。夏希はポケットからスマホを取り出すと写真フォルダを開いて、ずーっと昔にまで遡ってくれる。そして出てきた写真を、ずいっと私に見せつけた。



「え、これが玲緒奈?」


「見せたってのは内緒な」



そこに映っていたのは、バリバリコッテコテのヤンキー……たぶん夏希と、そんな夏希の後ろに隠れるようにして、涙目でカメラを睨みつけてる黒髪の女の子。今の話の流れでわかったけど、ノーヒントじゃ玲緒奈ってわからない。えぇ……めちゃくちゃ印象違う……。



「夏希がグレさせたんだ……」


「……ちげーよバカ」



夏希は呆れたように肩を竦めて、椅子に体をあずける。背もたれがぎしっと音を立てた。



「こいつ、中学校入学前に風邪こじらせて入院してさ。スタートダッシュ遅れて、ひとりも友達できなかったんだよ」


「れ、玲緒奈がぁ!?」



今やクラスの女帝である玲緒奈が、入学早々ぼっち……!?今日ってエイプリルフールだっけ……エイプリルフールなら、もっとわかりにくい嘘を言わないと、夏希さん……。



「そんで、幼なじみってだけで喋ったこともないあたしにひっついてくるようになって」


「なるほど……それで友達になってあげ───」


「鬱陶しいから、しばらくパシリとしてこき使ってたんだけど」


「なんで!?」



だって弱いやつに付きまとわれるのうざいじゃん、細いからサンドバッグにもならなさそうだし。と続ける夏希にドン引きする私。夏希が脱ヤンキーをした後に出会えて、本当に良かった……!!


というか、今日焼きそばパンを買いに行かされていた玲緒奈が、やたらと様になっていたのはそんな過去があったからなんだ……。



「それでそれで、なんで今みたいな関係性になったの!?」



クラスの女帝、玲緒奈の知られざる過去に足を踏み入れてしまった私は、今更後戻りなんてできない。

興味津々で尋ねる私に、夏希はちょっと悩んだ末、まあ隠すようなもんでもねえか、と話し始めてくれる。



「そんで、しばらくこき使ってたら諦めてあたしから離れるだろうと思ってたのに、あいつ全然めげなくてさ。当時あたしは地元じゃ結構名を馳せてたっつーか……はずいけど、まあ不良の中じゃ強い方だったから、あーこいつあたしを味方につける気なんだって思って」


「うんうん」


「うざすぎて軽くボコったんだけど」


「だからなんで!?」



ヤンキーの思考回路、理解できない……!!

そんな私の疑問は無視して、夏希は続ける。



「それでも離れないから、もういいやーって諦めて、ペットみたいなもんかと思って飼ってたんだよ。そしたら────」



夏希の表情が一瞬曇った。まるで話したくない過去を思い出すかのように。

でもここまで話されておあずけを食らうのは嫌なので、無理しないでいいよなんて止めることはせず大人しく待っていると。



「そしたら、ある日あたしが人生で初めて、とある不良との喧嘩に負けて」



絞り出すように、話した。

一度も不良になんてなったことがない私にとっては理解できないが、不良にとって、自分の負けた経験を話すというのは、とても屈辱みたいで。眉間にしわを寄せ、資料を乱暴にホッチキスでまとめながら、夏希は続ける。



「そんで、まあ……周りにいたやつらほとんど、あたしを裏切ってそいつについちまってさ。周りに残ったやつもどんどんヤンキーあがっちまって」



夏希は目を伏せる。性格に見合わず長いまつ毛が、その瞳を覆い隠した。



「んで、そんなあたしに唯一残ったのが、あのパシリってわけ」


「……玲緒奈?」


「そ。最初は強いあたしに守ってもらおうとしてる、うざくてださい弱虫だと思ってたんだけど……なんか違ったみたいでさ。強い不良のあたしじゃなくて、ただの望月夏希と仲良くなろうとしてる、正真正銘のバカだったんだよ、あいつ」



夏希はようやく、ははっと笑った。こんな顔をして笑う夏希を見るのは初めてで、思わずどきりとしてしまう。


そうか。ふたりにはそんな過去があったんだ。そりゃ、不良も絆されるってわけか……いや、なんか今もまだパシリのままだけど!!



「そんで、あたしに見合う女になるとかなんとか言って、髪を今の金に染めたんだけど……あたしはもうその頃にはヤンキーあがっててさ」


「あ、なんかそこは玲緒奈っぽい……」


「けどなんか、そのスタイルが案外自分に合ってるって気づいたらしくて、今の玲緒奈あいつができたってわけ」



ちゃんちゃん、と話をまとめて、ちなみにこの話誰かにチクったら、無理やり誓約書にサイン書かすから、と脅してくる夏希。いやだなぁ言いませんよ……!!だって命が惜しいもん!!


私は誰かに話したくなる衝動を力づくで押さえつけつつ、ホッチキス留めした資料を重ねた。これでやっと半分くらいか。ふたりでやってるから案外進んでるかもしれないけど、これを玲緒奈ひとりでやらせようとしてたなんて……高槻あやちゃん先生も無茶言うなぁ。


そんなことを考えていると、夏希は「はい」と私に手のひらを差し出してくる。お手ですか?と思いながら自分の拳をその上に載せると、ちげーよと笑われて。



「次はお前の番。星宮とどうなんだよ、随分仲良さそうじゃん」


「はぁぁぁ!?!?」



予想外な、それもなんか玲緒奈みたいな下世話なことを聞いてくる夏希。幼なじみだから、一緒にいる時間長すぎて移っちゃったのかなぁ!?



「な、仲良くなんてないけど!!」


「さっきふたりで空き教室行ってたじゃん。ヤったんだろ?」


「ヤるわけないしなんで知ってるんですかねぇ!!」



たまたま見たんだよ、と目を伏せる夏希。

やっぱり学校で一織と話すのはリスキーだ……!!もう絶対LINEでしか喋らないから!

夏希は自分の過去を喋らされたストレスを解消するように、意地悪に口角を上げながら続ける。



「付き合ってもう一週間ちょっとだろ? 進捗を聞いてやってるだけじゃねえか。弱みは握れたん?」


「そ、それはぁ……まだだけど……」


「はっ、ダサ」


「じゃあ夏希が付き合ったらいいんじゃないですかね!!」



立ち上がってそう叫ぶ私に、夏希はちょっとびっくりしたように、目を見張った。

そしてまた意地悪に笑いながら、



「いいのかよ? あたしが星宮と付き合って」


「は、はぁ……!?」



意味のわからないことを聞いてくる。なにそれ、いいに決まってんじゃん。別に好きで告ったわけじゃないし、付き合ってちょっと経ったところでその思いは全く変わってない。女同士なんて、それ以前に一織と付き合うのなんてナシだから!


けどそんな私の考えをそれはどうかな?と言うかのように、夏希は続ける。



「よくねえんだろ? どうだよ、あたしと星宮が付き合ってるって、想像してみろよ」



言われた通りに、想像する。

星宮一織が、いつもの暖かい微笑を向ける。その先には私はいなくて……いるのは、夏希。

ふたりは手を繋いで、惹かれ合うようにキスをして、そして……


ずき。


なんかよくわかんない胸痛と不整脈。やばい、119だ。



「ま、あたしはそんなんゲロ出そうだけど。でもお前は違うもんな」


「はぁ……!? 夏希、あんたさっきから一体何を言いた────」


「だって、お前レズじゃん」



そう言って、夏希は机に突きつけたままだった私の手を握って、自分の胸に当ててきた。私の手が、ふにゅんと夏希の胸を揉んだ。


は、は、はぁぁぁ!?!?


慌てて手を離そうとするけど、夏希はそれを許してくれなくて、私の反応を伺いながら自分の胸に手を押し付ける。


むにゅ。やわらかい。私がつけてるようなブラ特有の硬さがないから、スポブラでもつけてるのかな。むにゅ。でもその奥にちょっと胸筋を感じる────って、私は何を堪能しちゃってんの!?



「ほら、な。顔真っ赤」


「な、なっ……!! 急に人の胸揉まされたら、こうなるでしょ!!」


「少なくともあたしはならねえな。今もキモくて吐きそう」


「じゃあなんで揉ませてんのかな!?」



慌てて夏希の胸から手を離す。夏希は今度こそ許してくれて、私の腕を掴んでいた手を離してくれた。



「感謝しろよー? あたしが考案した罰ゲームのお陰で、美少女と付き合えてんだから。貸し一つな」


「あ、あのさぁ!? あんた考案の罰ゲームのせいで、私はいつも星宮にセクハラまがいなことをされてっ」


「でも嬉しいんだろ?」


「嬉しくないわ!! もう帰る!!」



ホッチキスを机に叩きつけて、私はスクールバッグを手に取った。私の担当分はもう終わってて、最初グダグダ言って始めなかった夏希の分を手伝ってただけだったし、もういい。高級チョコ一箱ぶんは働いた。帰る!


顔を真っ赤にさせながら使ってた椅子を片付けていると、友達がキレてんのに反省の色ひとつ見せない元ヤンが、



「じゃ、彼女によろしくな」



とかなんとか、またいじってきて。

怒りで頭に熱気が立ち込めてきた私は、はぁぁっとため息をついて、乱暴に扉を開けて教室を後にした。



なにあいつ。なにあいつ。なにあいつ!!!


私はレズなんかじゃない。

断じて違う。

だって好きになったことあるのは男の子だけで、告白されたのも男の子だけで。

気が向かなかったから、付き合ってこなかっただけなのに。


いま一織とつきあってるのだってただの罰ゲームで、しかもその考案者は夏希で。

私はずっと苦しめられて、辱められてるばっかりなのに。


一織と付き合えて嬉しい?私が?んなわけないじゃん。

ずっと嫌な気持ちでいっぱいだっての。

あいつのいいところなんて顔くらいのもんで、セクハラばっかしてくるし。まだ写真消してもらってないし。

夏希と一織が付き合うとかも、そんなの勝手にすればいい。

ポイって捨てられるのは女として癪だけど、でもそれだけ。

なんなら3ヶ月付き合わなきゃいけないって縛りもなくなってせいせいするっての。



あーもうむかつく!!!

ちょっと寄り道して、美味しいもの買って帰ってやるから!!!



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