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デートの予行練習をしてみる話し。

作者: ほな
掲載日:2025/11/09

 休みの日の、午後2時過ぎ。

 繁華街は言葉通り、本当に繁華なんだなって、当たり前のことを考えていた。

「いぇーい」

 それは、彼が来るまでずっとで。

 間抜けた声を出しながら手を振る彼の姿を見る寸前まで繁華やなーとか、街だなーとか、思った。

「遅かったじゃん」

「ごめんね。お花が買いたくて」

「花?」

 どういう意味なのやら。

「はい、これ。ネモフィラって花だよ」

「なんで急に」

「いやぁ、これがねぇ。ちょっと長くなる話だから、お茶とか飲みながら話そうね?」

「あ、うんっ」

 青い花を一つ指の間に挟めて、彼はゆっくりと私を導いて歩き始めた。

「人が多いねーぇ」

 歩くペースを合わせて、足を合わせて。

 デートとはこういうことなのだろうかと思いながら、一緒に歩いて行く。

「息苦しいとかはない?」

「全然平気だけど」

「そぉーなんだ。じゃあやっぱり練習とかいらなかったんじゃない?」

「そうだったのかな…」

 デートって大したことなかったのだろうか。

「なんか、普通だね」

「うん。いつも通りって感じ」

 明日は昔から気に入ってた子と、二人っきりのデートがある日だ。二人で街に出て、歩いて、笑って、眺め合うというロマンティックな瞬間。

 でもデートなんて、したことないから。

 相手にそんなロマンティックな気持ちを与えられなかったらどうしようと悩んで、心配になってて、って心配したあげく。

 練習してみようって事になってた。

 デートの予行練習。

 女の子と一緒に出かけるとデートって気がしないから、周りにいる男友達の、その中でもなんだかんだ付き合いが長いこの子と一緒に出ることになったのだ。

 でも、やっぱり。

「あ、なんかケーキ食べたくなった」

「えー私も」

 いつも通りって感がしてたまらない。

 ドキドキしない。

「ケーキと言えばやっぱりあそこだよね?」

「あそこかぁ。いいね」

 これはこれでデートって言えるのだろうか。周りから見たらデートに見えるのかな。

 詳しいことはわからないけど、取り敢えず。

「ん?」

 美味しいケーキをたくさん売ってる喫茶店に入っては二人並んで座った。向かい側もいるのにわざわざ隣に座る。これってデートじゃない?

「狭いよ」

「デートなんだから」

「デートなら向かい側で眺め合うのがもっと似合うんじゃない?」

「言われてみれば」

 でも今さら動くのも面倒だしいいや。

「このままにする」

「ぁん。何食べる?」

「決まってるじゃない。じゃがいもチーズケーキ」

「太るよ?」

「ケーキを食べようとした時点で太るのは仕方ないの。ここは美味しく食べるのが正解だもん」

「言われてみれば」

 なんて馬鹿馬鹿しい会話なのだろう。

 気が和らぐ。

「じゃあ……ん、やっぱりショートケーキかな」

「いいなぁ。私もそれ」

「じゃがいもは?」

「二個食べようかな」

「太るよ?」

「だから仕方ないって」

 メニューを決めて、注文を終える。

「あ」

 待って。

「なになに」

「飲み物頼んでなかった」

「そういえば」

 もう、気が和らぎ過ぎたのだろう。喫茶店で飲み物を忘れるなんて、デートで相手を忘れると同じくらいじゃないの。

 デートってまだよくわからないけど。

「私は抹茶にしちゃおっかな。抹茶ミルク?」

「飲んだ事ある?」

「ない」

「あとで一口ちょうだい。俺は紅茶」

「いいよー」

 紅茶かぁ。

 甘い物と苦い物。

「風情あるね」

「急にどうしたの」

 手には青い花が一つ。あれのせいで風情があるように見えるかも。

 そういえば、花を持ってきた理由はなんだろう。

「それ、なんで買ったの?」

「なにが?あ、花?」

「うん。花」

「いい花言葉だなって思って買っちゃった。明日への備えって言えばいいかなぁ」

 備え。明日。

 本番のデートへの備えになれるのか、あの花が。

「どういう花言葉なの?」

「あなたを許す」

「なにそれ」

 悪いことをした記憶はないけど。

「まあこれは嘘で、可憐とか、清々しい心とか、初恋とか?そんなのを意味するんだって」

「初恋」

 初めてのデートだから、初恋。

 彼らしい考え方だ。

「どこでも成功って意味もあるんだって」

「いい花言葉だね」

「でしょう。君を思って買ってきたんだよ。大事にして、明日も頑張りなさい」

「はーい」

 そう言って彼は私の髪に花を刺した。

「うわあぁ」

 なのに、頭に花を付けた私を見て引いた。

「あんたがやったんだけど」

「でもなんか、ヤバい感じがして」

「あぁん?」

「まぁまぁ。可愛いんじゃない?知らんけど」

「無責任過ぎない?」

 鏡を見てみると、言われた通り。

「…ヤバい感じがする」

「でしょう?」

 怖い感じがする。

 元々の印象がよくなかったせいで、愛に頭が狂った人のような感じがして。

 ぱっと花を抜いては彼の頭に刺した。

「わ、なんか、変な感じ」

「あんた似合うじゃん」

 意外と似合う彼だった。

 花が似合う男と、似合わない女。

 なんか負けた気分。

「あ、出た出た」

「なにが?」

「ケーキ」

「どこに?」

「あっちで皿に乗せてるよ」

「本当だ」

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