第34話 序盤で「たたかう」ラスボスって、負けイベだよな……?
「――あの男がリシアの父親……だって!?」
俺は驚きを隠せず口にした。
(でもどうしてだろう……どこかで見たような――既視感がある)
リシアは言葉を失ったまま、じっとその男を見つめている。
男はゆっくりとこちらに視線を向けた。
「我が娘リシア。久しぶりだね。ずいぶんと大きくなったものだ」
「……」
リシアからは言葉が出てこないようだった。それは当然だ。幼い頃に死んだと思っていた父が、今――こうして目の前に立っているのだから。
男がこちらへ歩み寄る。
父親であろうと、敵の陣営に身を置くその男の動きに、俺は即座に前へ出た。
「それ以上、近づかないでください!」
俺の言葉に男は、どこか余裕をまとった笑みを浮かべた。
「君と会うのは――そうだな、十二年ぶりくらいか。やはり似ているね。しかし、願ったり叶ったりだがどうして再び君が“こちら”に来たのかな?」
「どういう意味だ!?」
「驚かせてしまったようだね。だが、私はリシアの父親で間違いない。……心配はいらないよ」
それはまるで語りかけるような口調。だが、その言葉の一つひとつが、逆に俺たちの警戒を煽る。
リシアの父親が言う。
「ハクから話があったと思うが――我々と共に来てくれないか?」
その問いに、俺はすぐさま返した。
「人を脅して交渉するような連中を連れてきて、この国の大事な大炎柱を吹き飛ばした人間について行くなんて、できるわけないだろ!」
男は一瞬だけ眉を上げると、ふっと笑った。
「ふ。確かに。だがそう言うだろうとも思ったよ」
そのとき――ようやく、リシアが口を開いた。
「パパ……。 どうして、今まで……」
男の表情が、わずかに曇ったのを俺は見逃さなかった。
「すまない、リシア。……お前のお母さん、ルミリアからどう聞かされていたかは分からないが――私は、この世界で生きていたよ」
そして、穏やかな声で続ける。
「さあリシア。君と黒瀬くんの力が必要なんだ。我々と共に来てくれないか?」
俺は答えを決めていた。だが、リシアが何を選ぶのか――それを見届けたかった。
リシアは俯き、そして静かに言った。
「パパ。私は――」
「うん?」
ほんのわずかな沈黙のあと、彼女の目が鋭くなる。
「私はパパのところには行けない。でも、この国にモンスターとの戦争をさせるわけにもいかない」
リシアの手が刀の柄に添えられる。
俺は思わず声をあげた。
「よく言った、リシア! 俺も同じ気持ちだ。だったら今ここで――“第三の選択肢”を俺たちで創ろうぜ!」
「ええ!」
互いにうなずき合ったその瞬間、戦意が重なる。俺の中の力が強烈に湧き上がる感覚を感じた。
そして同時におれの頭の中では、冷静な判断も働いていた。
――さっきの爆発音と炎。あれだけの大音量と火柱が上がれば、軍がこの異常に気づき、すぐに駆けつけるはず。
それまでの時間を、俺たちが稼ぐ。それが、今この場で俺たちにできる、たった一つの“戦い方”だった。
☆今回の一言メモ☆
今回のお話のタイトルはちょっと昔のRPGとかシュミレーションゲームをプレイしたことのある方なら共感できると思います。でも、負けイベだとわかっていても全力で戦ってしまうのは僕たちが男の子だからでしょうか?




