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景色を眺めて  作者: 鈴乱
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する、その前に

writer:KUROHAI(書き手:黒灰)


call me "SHIN".(俺のことは、シンと呼べ。)


this is a secret. Yours and mine.(これは秘密だ。お前と俺の。)


You'll keep my secret,won't you?(俺の秘密、守ってくれよ?)


I promised you now,didn't I?(今、約束したからな?)


『あ……』


 耳慣れた音に、ふと顔を上げる。


『あいつ、またトランペット吹いてんなー』


 ふっ、と笑いが込み上げる。


『変わりませんねぇ……』


 "僕、変わるから!"


 息巻いてそう言っていた割に、あいつがやっていることは変わらない。


 丘の上でトランペットをひとり吹いている。


 "ぷっぷくぷー!"


 下手くそなトランペットを天に向かって吹いている。


『何だっけ……? "楽器の音は、天への祈り" だっけか?』


 あいつが嬉々として語る言葉を、俺はニヤニヤ笑って見ていた。


 それは決して馬鹿にしてたんじゃない。


 俺には出来ないことを、するっとやってのけるあいつに、俺は憧れを抱いてた。


 それは羨望(せんぼう)にも似た憧れで。


 忘れられない、色だった。


 俺とは違う、色だった。


 だから、俺は、真逆のあいつに惹かれて、なぜか今、ここにいる羽目になっている。


"いいから、遊ぼ!"


 あいつの奏でる音は、俺にはいつもそう聞こえる。


『ばーか。遊んでる暇なんて……ないんだっての』


 手元の、まだ真っ白な原稿を見下ろす。


 まだ、何も描かれていない。


 まだ、何も始まっちゃいない。


 あいつの色に似ている、きっとこれは、白地図で。


 俺とは真逆の景色がそこにある。


『……分かってる。逃げ出すわけには、いかねぇんだ』


 誰に馬鹿と言われても。

 誰に阿呆と言われても。


 それでも、このペンは置くわけにはいかない。


 お前がそこで、楽器を鳴らすなら……


 俺はこっちで、采配(さいはい)振るう。


 そうやって、もう一度、共に立てるその日まで……


 俺はそうやって生きていく。


 今度はどうか、隣に立って。


 互いの顔より、未来を見つめ。


 そこに願うものが同じであることを。


 俺は信じていたいんだ。


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