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景色を眺めて  作者: 鈴乱
3/4

変化


容態(ようだい)は?」


 問われて、シロが切なそうに答える。


「変わらない、って」


「そうか……」


 あいつと離れて、もう長いこと時間が経ったような気がする。


『任せといて! 俺、案外、丈夫だから!』


 笑って言っていたあの時が遥か過去のように思える。


「あの子の回復力を信じるしかないよ。今は」


「そう、だけど……なんか……俺にもやれることねぇかな……」


「クロ……。俺も同じ気持ちだけど……時には人に任せて様子を見ることも大事だよ。焦ったって俺たちには手の(ほどこ)しようがない」 


「うん……。分かっちゃいるんだが……」


「……」


 椅子に腰掛けて、手元を見つめる。


 こういう時、何もできない自分を歯がゆく思う。


 クロやあの子に対して、落ち着かせることひとつ出来ない。


 普段は偉そうに檄を飛ばしていたって、肝心な時に役に立たない。


 ほんと、僕って奴は……


「シロ。俺やっぱ……見てくるわ!」


『あぁ、やっぱりか』


 分かってたこととはいえ、こうなっては仕方ない。


「……俺も……僕も行く。一緒に行く」


 クロが、目を丸くする。


「え、珍しいな……? お前も来んの……?」


「いけない?」


「いけないことはないけど……大丈夫か?」


「何言ってんの。僕よりクロが心配なんだよ」


 ヒュッ……


 クロから変な音がした。


「そ、そんなに心配しなくたって、俺ひとりで……」


「心配なんてしてないよ。何? 僕がいると不都合?」


「そ、そそそそんなことはねぇけど!?」


「じゃあ、いいじゃない。家族のピンチに、放っておくほど、人非人(にんぴにん)じゃない」


「おう……そうな」


 クロが痛みをこらえるような顔をする。

 まだ、本当は調子が戻っていないんだろう。


『無茶をする』


 最善の選択じゃないかもしれない。

 本当は動かず見守る方が、あの子のためかもしれない。


 でも、それはやってみなくちゃ分からない。


 たとえ、僕の行動が間違いでも、出来るだけ後悔が少ない方を選びたい。


 僕も、今まで通りとはいかないだろうから。


 少しだけ、クロに倣うべき時が来たのかもしれない。

 

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