ふぁみりーデス
「晴天直下」
晴天突き抜ける
晴天が
何とも、まぶしいこと、この上ない
辺りには、人のにぎわいが、がやがやと、騒音を、まき散らしている
ここで、大声で「バカモーン」
なんて、叫べば、皆が、こちらを、振り向くことは
必須であろう
私は、歩行者天国の乱雑な、スクランブルを、卵の黄身でも泳ぐように、通り抜けると
目的地のビルに、入る
薄暗い部屋の中は、ぴんぴんと、凍り付いたような
雰囲気が、肌を、突き刺す
誰かが、もう、死んでいるかも知れない
辺りの雰囲気を、再度確認するが
人影を、見ることは、出来なかった
「昼下がり」
コーヒーを、飲んでいると、あわただしく
子供の太郎が、ドアを、け飛ばすように、入ってきた
「おやじ、向こうの島の
縞耕作が、青猫に、殺されたらしい
良い気味だ」
子供ながらに、ランドセルを、振り回して、そのまま
横に、設置された穴から、折りたたみ傘を、
まるで、ショットガンでも、抜くように、回転率
そのままに、抜き取ると
傘を開いた
「ばーん」
間の抜けた声
「そんな物を、振り回すんじゃ、ありません」
私は、机の上にあった
防弾鞄を、おろすと
奴の頭に、げんこつをおろす
「っちぇ」
そんなことを、言っているが、どうも、やはり、反省の色はないらしい
私は、仕方なく、無視するように
コーヒーブレイクを、続行継続する事に決めた
椅子に座ると、古くさいレコードが、再生され
ジャスのアップテンポが、古くささを、消し飛ばしている
「テイクファイブなんて子供かよ」
ひらがな、英語で、子供が、何か、大人に言っている
「無視だ」無視無視
私は、そう、自分を、言語化して
納得させると
その視線を、ドアへと移す
いつの間にか、部屋は、静かであり
子供の元気だけの姿はない
ベルが、ガルンガルンと奇妙な音を、立てながら
スピーカーから来客の到来を、知らせる
ちなみに、このドアには、ベルも、ドアノックも、存在していない
客は、自力で、行動を、起こさなければ、成らないだろう
「ドンドン」
やけに、大きな音が、
辺りに響く
これは、かなり、乱暴そうだ
しばらく、ドアが、蹴破るような、音を立てたが
開いていることに、気が付いたのだろう
その扉が、後ろに、引かれる
「こんにちは」
横で、太郎が、お盆に、緑茶を、持っている
ご自慢の湯飲みが、一つ
相手は、濃いトレンチコートを、着込んでおり
時期は、夏だというのに
不振きわまりない
「コンニチハ」
小さな声が、その帽子までかぶった
サングラスの下から聞こえる
透明人間の可能性があっても、おかしくはなさそうである
「どうも」
私は、頭を下げて
「丸裸探偵事務所
店主の横縞です、どうぞ」
よろしくと、言いながら
私は、席を、示す
部屋には、観葉植物
1号ドロセラ二号フィリフォルミスが、部屋のガラス前の温室を、貸し切っている
その前には、鉄球でも、落とせば、割れそうな、ガラスのテーブルに、木枠
そして、どこから貸し入れてきた
ゴミ捨て場のソファーが、差し向かい
両方とも、違う色を、醸しだし
なんとも、場違いなニュアンスを、出している
「どうぞどうぞ」
私が、二回目と、三度目のすすめに対して
腰を、ようやく、いぶかしそうに、私を見ていたが
そのふかふかすぎて、不評しかない
ソファーに、ゆだね、溺れている
「では、用件は、何でしょうか」
ガラスの上で、やけに、和風な風味を、醸し出している
湯飲みから、緑色の液体からでているとは思えにほどに
白い湯気が、この部屋のゴミとからみつき
白いこと白いこと
色を、出している
客人は、その湯飲みには、手も着けず
それどころか、未だに、ソファーで、あがき
手をいくら突いても
そこが見えず
沈むような其処で
あがき、何とか、場を、取り繕い
「こう言うものです」
と、名刺を、取り出した
私は、投げるように、宙を舞い
ガラスの台の上に、ぎりぎり不時着した
その落ちそうな、文字を、紙の上から、拝見する
「カミカゼ商事とは・・」
カミカゼ商事とは、実に、あくどい会社だと、聞き及んでいる
入社したら最後
自殺するまで、働けますか
などと、嘘でもなく
揶揄される
悪徳ドブラック企業であり
主に、体育会系が、金ほしさに、行くようなイメージが、強い
何度、消費者金融庁から、苦情が、入っているかわからず
それさえも、何か、ごちゃごちゃした噂が、絶えず
絶えない
「それで、今回は、こんな、辺境のへんぴな場所まで、何のご用が有っての事でしょうか」
私は、そう伺おうとすると
埋もれるようなソファーから
手が伸び
助けてと、くぐもった声が、聞こえる
私は、奇しくも、握手をして、助けると
「で」
と、聞くに及ぶ
「実は」
男の声が、その口からマスクを通して漏れ出す
「実は、我が社の社長が、とんでもないことを、言い出しまして」
ブラックが、とんでもないと、言い出すなんて、余程黒いのだろう
黒よりも濃い色とは、一体何の色だろうか
白だろうか
「実は、我が社から、金を借りたもので
逃げようと、考えたり、踏み倒し
または、夜逃げ等々があります
それは、破産申告も、そうです
しかし、我が社の社長 ケンシンが、申しますに
今から、金の返せそうにないもの
返せない者を集めて、殺し合いを、させて、その中で
生き残った者を、借金を、チャラにする
と言うものなのです」
頭が、いたくなってきた
この時代に、なに、阿呆な事を、言っているのか
そんなことが、まかり通るとは思えない
しかし
「皆信じては下さりません
しかし、問題は、賞金が、出ることなんです」
「賞金ですか」
「はい、うちの社長は、言っておきながら
それを出すのが、嫌だと、そういうわけです」
「つまり、うちにきたのは、その賞金を、とるために」
相手は、首を横に振る
「いえいえ、縦縞探偵事務所には
うちの子会社から借金があります
しかも、返せる予定がない
どうです、出ますか
この大会に」
「ちょっと待って下さい」
私は言う
次の瞬間
それを遮るように
コートが、舞い
中から
分厚い銃が、両方
私と、太郎へと、向けられている
「今ここで、死んでもらうか、それとも、数日の猶予があるか
どちらかに、してもらいます」
私は、差し出された
紙に、サインすると、封筒を、もらう
「賞金の話は何だったんですか」
ハハハハハ
去っていく男の後ろ姿が
笑っている
馬鹿に、されているようだ
「どうするの」
太郎が、こちらを、見ている
仕方がない
私は、決意を、固めることにした
会場は、雑居ビルとは、思えない
豪勢な物であった
ここは、普段は、空き部屋の多いビルに見えるが
実は、地下のカジノが、有るというのが、もっぱらの噂であるが、さわらぬ神に、祟りなしと、私は、出来るだけ、その方面に、近づかないように、していたのだ
ビルのエレベーターから、下へとむかい
其処で、見えた光景という物が
とうてい、狭いとは、ほど遠い
赤と蛍光ゴールドのような
ゴージャスな、雰囲気
しかし、其処に集まった
人間の種類というのは、千差万別で
それこそ、サラリーマン風から黒服
金のなさそうな軽装な人間も多い
ただ、問題は、ここにいる奴らが、殺し合い
果たして、武器はあるのか
それとも、肉体か
いや、知力かも知れない
私は、頭が、ミキサーに入れられたように
シャッフルされた気分の中にいた
「では、みなさま、これより
殺し合いを、してもらいます。
みなさまに、やってもらうのは
「毒ワクチン接種です」
ざわつく音が、会場内を、響き回る
何だ、何と言った
あの司会の人は
「ルールは、簡単です
今から皆様方に、配られる
お饅頭を、食べて居ただきます
半分が、毒入り
半分が、ワクチン入りとなります
三時間後に、会場内に、ウイルスが、散布され
ワクチンを、体内接種していない方は、死亡いたしますので、お気をつけて
では」
男は、去っていく
それを、止めようとしようにも
壁に、備えられている
銃口が、動いた物に、追尾していた
司会が、退出し
それと同時に、
一人一人に、饅頭が、配られ始めた
その紙袋には、もう一つ
ゴールドに輝く星のような物が
混入している
「星一つ一千万円となります
生きて帰れましたら
換金いたします」
スピーカーからの声
私は、ぼんやりと、その声を聞いていた
二分の1が、毒饅頭であり
しかも、ワクチン入りを、食べなければ、ウイルスで、死ぬ
何とも、イヤラシい
しかし、もし、そんなウイルスが、有るのだとすれば、
それは、漏れ出したりしないのであろうか
それ以上に、今後、この会場は、使うことが、出来るのであろうか
私が、そんなことを、考えていると
「ねえ、君」
と、肩をたたかれた
見ると、小柄で、小太りの男が、こずるかしい顔を、こちらに、あげていた
「・・」
「僕のお饅頭、毒じゃなかったらしんだ
これ、君の星と交換しないかい」
目の前の男が、半分になっている
饅頭を、僕に見せつけている
よほど、おなかが空いていたのだろうか
「・・・それを、君が、食べたという保証は、どうするんだい
今ここで、君が、それを、口に入れて
飲み込むことが出来たので有れば
それを、飲んでも良い
饅頭だけにな」
男は、明らかに、機嫌を、悪くし
チェッと唾を吐くと、その笑みを、崩して
立ち去る
どうせ、毒味をさせて
その上で、僕が、死ねば、それは食べなくてすむし
その上で、星が手に入る
僕が、生きていれば、それは、役得と
一千万円と、どうせ、残しておいた
半分の饅頭を、食べることだろう
果たして、奴に、だまされないように
奴の言っている後を、付けて、言い回ってやろうか
そんなことを、考えていると
「ボス どうぞ」
と言うような、声が、聞こえてきた
見ると、あの黒服軍団であろう
顔の柄から、気質という風ではないだろう
見ると、足下に、数人のスーツが、倒れている
同じような、色だから、仲間なのだろう
「悪いのう」
薄いサングラスが、饅頭を、口に運ぶ
しばらく立っても、倒れることはない
つまり、奴が、ボスなのだろう
子分に毒味をさせて
大丈夫だった物の饅頭を、食べる
大変な物だな
私は、下に転がる人間を見る
死んでいるのだろう
もしかすると、もしかしなくても、どんどんと
死体は、増えていくのだ
しかし、私は、どうすればいいのか
軽くなめても、わからないものだろうか
毒は、どの程度で、利くのか
時間は、30分を、過ぎようとしている
私は、どうすることも出来ないまま
周りの様子を、伺うしかできない
何人も床に、転がっている
絨毯を引かれているとは言え
何とも、むなしい光景である
その上に立つ何人かは、三つに分類される
何かを考えているもの
辺りを伺うもの
そして、興味を、無くしている者だ
興味を無くしている連中は
その余裕は、自分の置かれた状況が、優位に立っているに、他成らず
つまりは、ワクチン饅頭を、食べているという事になる
つまり、私は、彼らに、星を、渡して、饅頭を、食べるべきなのではないだろうか
「おじさん」
私は、振り返ると、子供と言っていいような人間が、其処には、立っていた
「何でしょうか」
私の口調までこんな場所では、堅くなる
「おじさんは、お饅頭食べたの」
私は、首を振り
茶色い袋を、握りしめる
「君は、食べたのかい」
私の言葉に対して
相手は、返答せずに
「いいや、おじさん、おじさんは、気が付いていないようだけど
ワクチンの口投接種って、可能だと思う」
何を、言っているのだろうか
「・・確か、有るはずだけど」
「そう思うの」
私は、考える何を言いたいのだろうか
「この会場で、もう三十人は、死んでいる
でも、一体何の得になると思う」
得
「そう、得
殺すくらいで有れば、何か別のことに、有効活用が、いくらでも、出来るとは、思わない」
何を、思えと
「しかし、君、たとえば、重労働などは、機械の方が有用なことが多い
しかし、世の中には、パーツを、欲しがる人間だっているだろ、そう言う人間のために、殺したのかも知れないじゃないか」
「さあね」
少年は、それだけ言うと、立ち去る
「これ」
その手には、饅頭が、握られている
しかも、あのヤクザが、捨てていった
毒の物だ
「どうするんだ」
私が、言うが早いか
その口に、饅頭が、入り込む
「あ」
私が、止めるまもなく
子供は、床に倒れた
自殺だろうか
こんな場所で、何故
恐怖のためか
いや、違う
何か、何か理由があるのではないだろうか
しかし、私は、わからずにいる
時間だけが過ぎる
「おい、おっさん」
見ると、あの太った男が、こちらに、饅頭を、つきだした
「これは、セーフな饅頭だ
疑うなら、俺は、一口食べるよ」
男は、そう言うと、一つもぐと
口に入れた
「ほら」
口の中は、何もない
「買えよ」
私は、それを見て、心が、揺らいでいた
「いや・・」
「死ぬぞ」
私は、戸惑う
どうすればいいのだろうか
「まあいいや、買わないんだったら」
男は、そう言って、去っていく
会場の死体は、三分の1を、越えようとしているように見えた
ワクチンが、どの程度で、利くのかは、わからないが
しかし、毒に関しては、一口で、皆、あの世行きのようである
そうなると、確証はないが
ワクチンも同じ可能性はある
その大半が、星を、あげて、饅頭を、購入した
一つ一千万
千両みかんよりは、幾分やすいが
しかし、百円の物を一千万円で
買うのだから・・
時間は、三十分を、切っていた
「おい、早く、食えよ
死ぬぞ」
向こうで、また、騒がしい
おじさんと言っても良い
不甲斐ない中年男が、余裕のある人間に、囲まれている
「くーえ くーえ くーえ」
周りの若者や大人が
魚の名前を、連呼している
大人げない
チョコボールでも、食べていればいいのだ
赤子のように
男は、泣き出しそうに、涙を、目にためて、耐えているようであった
「あんたら、やめたらどうだ」
私は、つい、口を、付いてしまった
「あんた、まだ食べていないだろ
よく、そんな大きな口が、付けるものだな
あと、十五分で、死ぬんだよ
どっちみち」
私は、こいつは、よく周りを見ているなと感心するとともに考える
「あのすいません これで、ワクチンを、分けてもらえませんか」
男が、手に、星を持って、そう言うが
何とも、意地悪そうな目が、こちらまで見る
「だめだな、二つで、ひとかけらだ」
私は、何を言っているんだ、反論したくなったが
ぐっと、言葉を、詰まらせる
あのおやじは、こちらを、潤んだ、そして、様当然という目で
「あの、どうでしょうか」
と、言ってきた
問題だ
もし、かけらを、渡されたところで
一人分と言うところだ
分けても効果があるか、わからない
「止めておいた方がいいんじゃないですか」
私の言葉に
「そんなことは、有りません、死ぬよりは
あなただって、生きたいでしょう」
それは、死ぬよりは、良いが
「では、あなたと私で、分けるとして、どちらが、それを、食べると言うことにするんです」
「・・・ジャンケン」
私は、あきれてしまった
そして、二分の1と言う確率であるが
実際問題は、二分の1から
その1が安全牌として
何分として、安全が増える
よって、饅頭の確率は二分の1だが
死の総数は、それよりも、ぐっとすくない
「ねえ、分ければ、良いじゃないですか
ねえ」
男は、若者に、よりにもよって、合図ちを打っている
相手は、それをおもしろそうに、はやし立てる
「そうだよ、おじさん、こいつよりも、見所があるな
分ければいいんだよ
ははは
利くかどうかは、わからないけど
死ぬよりは、ましだろ」
「ね、そう言っていますし そうだと私も思うんです」
私は、困った
しかし、かけるので有れば、明らかに、毒よりも、良いはずだ
「じゃあ」
私は、星を、渡す
「じゃあ、お願いします」
小太りが、星を、相手に渡した
次の瞬間
若者が、それを、渡すやいなや
すべて、食べてしまった
「っあ」
私が、言うが言わないか
おじさんは、にたような、笑みを浮かべ
「仕方が無いじゃないですか」
などという
「ねえ、そうでしょ」
その笑みは、さらに、同じような顔をしている
若者にも向き直る
それは、まるで鏡のように、反響しているが
しかし、急に、先ほどまで笑っていた
若者の顔が
真顔になる
「っえ、おじさん、いつ僕が、それは、ワクチン入り
って言ったっけ、そこら辺に、転がっていたの
勿体ないから、持ってただけだけど
これが、いわゆる
食品ロスって言う奴だね」
言うが言わないか
男が、床に倒れた
「っあ、ひろいぐいなんて、するから
ねえ」
私は、同意をも止められたが
無視する
時間は、後、三分もない
辺りは、立っている物と、ねているもの
そして、私の手に握られた
紙袋を、開けると
私は、その中の、むにゅりとした
饅頭の感触を、手に味わっていた
金はない
許しを請おうにも
動くやつがいるようにはい見えない
居るかも知れないが
時間は、一分を切る
私は、口を開ける
「ヒュー チャレンジャー」
と言う声を、無視して、口に入れた
何か、苦いような、味がする
これが、ワクチンか
そう思うまもなく
辺りから、壁から、煙が、吐き出された
私の視界が、床に倒れる
それが、ウイルスのせいか
毒饅頭のせいか
私の暗くなる視界が
死なのかさえ私には、判断できない
「こんぐらすれいしょん おめでとう」
私は、頭が重いが
頭を上げると、其処には、あの司会者が、立っていた
「っえ」
周りを見ると、死んだと思っていた
黒服たちが、起きあがろうとしているし
子供が、座って、話を聞いていたりした
その代わりに、先ほどまで、起きていた人間が皆
ねているように、動かない
どういう事だ
「あなた方は、無事 抗体を、作り
生き延びることができました
床で、死んでいる方々は、ただの美味しい饅頭を
食べただけで耐えきれず
お亡くなりになりました
皆様方は、過酷なワクチン反応に耐えることができたことを、喜ばしく思います」
見ると、横で、あのおっさんが、寝っ転がっている
「・・おい」
しかし、そいつは、起きようとしない
顔が、ひどく、充血している
呪いでもかけられているようだ
「その方は、自分が、毒饅頭を、食べさせられたと、勘違いして、倒れただけで、死んでいます」
私は、呆然と、座っている
何が正しいのか、さっぱりわからない
ただ
「さあ、次のゲームに参りましょう」
やけに明るい雰囲気が、会場内の空気と反比例に
響きわたっていた。
「殺し合いげーっむ」
「皆様方には、ご家族で、試合に、挑んでいただきます、つまりは、チーム戦と言うことになります。
この中で、1チームだけが
生き残ることのできる
いわゆる
バトルロワイアルと言う事に、なりますので、よろしくお願いします」
一人の黒服が、手を挙げる
「場所は」
「場所は、この会場のビル全てになります。
因みに、外に出ますと、射殺されますのでご注意下さい」
先ほどと打って変わって、かなり、暴力性に飛んでいる
「では、チームメイトのご紹介です」
次々に、人が、現れては、会場の人間と、合流していくが
黒服の場合
血の契りなのか、黒い奴が、増えているだけに見える
後は、にたような人間が、にたような人間の元にいく姿は、あまりそう言う意味では、代わり映えしないのかも知れない
「やあ」
私の目の間に、子供の太郎が、居た
帰らせたい
そう思うが、どうなのだろうか
「おい、司会、武器は」
司会と呼ばれたが、そんなことは、意にも介さないように、首を、傾げ
「あれれ、持ってこなかったんですか、何でも、持ってきて良いのに」
私は、頭が、痛くなってきた
横で子供が、ランドセルを、揺らしている
黒服たちは、棒のような物を、持っている
バールだろうか
酷くいたそうだ
他の家は、消火器やバッド包丁鎌
一揆であろうか
それでは、開始まで五分となりました
開始の合図が有るまで
戦闘は、禁止です。
よーいドン」
すぐに、人が、ばらけ始める
「ぼく、トイレ」
おっおい
私が止めるまもなく
子供が、走り始める
仕方なく、入り口で、待つことにした
中を覗いても
誰もいない
周りの人間は、ほとんどが、表へと、行ってしまった
そう言えば、あの少年は、一人だったな
「おじさん、暇だね」
いつのまにか、横に、少年が、来ていた
「君は、大丈夫なのかい
殺し合いなんて」
少年は、猫のような笑みを浮かべ
「ハハハ、大丈夫 大丈夫
人は、生きているときから死んでいるから」
そう言って、隣にいる
「僕を、殺すというわけじゃないよね」
「っえ」
若いのに老人のように聞こえない振りをしやがった
「開始まで、3ー2ー1ー」
やけに、さわやかなスピーカーの声
「お待ちどうさま」
息子が、手も拭かず
中から出てきた
その手には、ハンカチの代わりに
別の何かが、握られていた
そして
「ゼロ」
次の瞬間
妙な・・・
「闘争」
目の前に、敵がいる
親を、潰されて
合併したからと言って、因縁が、消える訳じゃない
今までは、それでも、一番上が、居たから、行動には、起こさなかったが
しかし、奴らは、自分の所だけ
毒味をさせて、滅びやがった
良い気味だ
それでも、全てじゃない
数人、毒味を、取り繕うように、残された
相手側の組の物がいる
これが、最後の敵討ちだろう
目配せを、しなくても、五人の仲間は、同じ気持ちであろう
相手も、きっと、それを、警戒している
やるなら、とことんまで、やらなければ、死ぬだけだ
「おい、どこでやるかのう」
相手が言う
とても、同じチームとは、言えそうにない
本来で有れば、周りの人間を、皆殺しにした後に、
戦えばいいのであろうが・・・
目の前を、家族連れが、歩いてく
「なあ、数を、減らしてからでも」
相手が言う
数字のカウントダウンが、始まった
その隙に、狙うのも
カウントが、ゼロを、知らせた
そのときだった
「生存的戦略」
「ねえ、どうしましょう、こう言うのは、少数を、狙った方が良い
いずれ、増えた物同士で、戦うにしても、まずは、小さいのを、殺していった方が、生存確率は、その方が、あがると言うものでしょう」
「多勢と無勢と言う奴ですか」
普通のお隣同士の家族同士の会話のように聞こえるが
会場を、出て、何組かの家庭が、話し合いを、している
「しかし、だれが一番最初に行きますか
一番やりは、一番難しいと聞きます」
「そんなのは、俗説でしょう」
「戦争で、一番死ぬのは、特効です」
「いや、逆に、大勢の中に、割ってはいると、逆に怖じ気付いて逃げると言いますよ」
「相手は、さんにんです、大勢とは」
「因みに、みなさんの武器は、何を、持ってきましたか」
「私は、ゴルフクラブを」
「私は、出刃包丁を」
「私は・・忘れました」
「忘れた」
「忘れたですと」
「すいません」
「謝っても仕方が無いじゃないですか」
「そうですよ・・しかし、忘れるとは、これは、生死の問題ですよ、それを、よりにもよって、
忘れるとは・・大丈夫ですか」
「大丈夫じゃないから、
こんなところにいるんです
あなた方だって、私にとやかく言って、何かまともなような気がしますが
しかし、ここにいる時点で、私とどっこいどっこいのチャランポランでしょう」
「私は、止むに止まれず
子供の為に・・」
「それよりも、どうします、あなた、戦力外通告ですよ」
「・・やっぱり、かくれるとか、止めるとか」
「さーんー」
「3って言ってますよ
もう時間が」
「にーぃ」
「二だと」
「イーチ」
「あーーー」
「ゼロ」
無情の声とともに
地響きが、振動した
一体、何が起こったのか
知る由もない
「何を持っているんだ」
「ぽちっとな」
黒い板に張り付けられた
赤いボタンが、中に、へこむ
次の瞬間
ゼロを、かぶせるように、地響きと、振動が、辺りに、巻き起こる
「何だ」
私の言葉とは裏腹に
「はははは」
と、不気味な子供の声
「おっおまえ」
「科学力が、
一番なのだ武力より」
どういう意味かは、わからない
しかし、私は、とんでもなく、まずいことを、考えていた
なぜなら、横で、ものすごく大きな音がしている
辺りは、粉塵で、一瞬にして視界が見えず
巨人でも、歩いているようなそんな、巨大な違和感
「何をやったんだ」
そんな声は、届かず
白い闇の中
「動くと死ぬよ」
と声が、遠くの方で響く
時間は、どの程度、経ったのか
皆目検討が、付かない
ただ、目が、もの凄く埃まみれだと言うことだけはわかる
そして、できれば、石綿、アスベストを、この建物が、使用していないことを、祈る
生死の境目であるが
肺が膿みだらけになるのは、ごめんだ
なんだか、先ほどから、塵を吸い込んでいるのだろう
せき込むようにいたくて仕方がない
「大丈夫か」
私の声に
横を見ると
マスクを付けた
子供が、こちらを見て
グッドと、手を突きだしている
何という用意周到
とか、そう言う場合ではない
「おっお前」
「意味は、最初から無い
なぜなら、意味そのものが、最初から意味だから」
何を言っているのか
私が、そう思ったとき
目の前に、もう一つ 影が見えた
それは、あの、もう一人の子供だった
辺りは、巨大な岩のように
コンクリートと鉄に囲まれており
一種異様なアートのようである
きっと、その下に、人が、潰されているに違いない
「驚いたよ、その年で、ここまで、完璧な、爆破が、できるなんてね」
息子が、傘を、相手に向けている
相手は、ホールドアップしていたが
その手を、不意におろして、
近づく
「そんなに、気を、負うことはないよ」
そう言って、近づいて、手を差しのばす
「安心してくれて良いよ」
何が、安心なのだろうか
「君が、残っているよ」
太郎が、そう言うと
「いやいや、僕は、君たちから、予定通りの品物を
返してもらおうと、思っただけだ」
そう言うと、私に、手を向ける
「私は、こう言うものです」
渡された、名刺は、手品のように、いつの間にか、手の中にあった
その四角い、白い箱の中には
白い紙に、黒字で
カミカゼ商事社長代理 カミカゼ トクタロウ
と、書かれている
「では、約束通り」
その手が、私の方へ、上向きに差し出される
何かをくれと言うように
私は其処で、あの星を、差し出すと
「しかと」
そう言って、去っていく
「もう、全てが終わったというのか
確認とか」
「ああ大丈夫だ」
そう言った瞬間
がれきから、人影が見えた
其処には、バッドを持った男が立っている
バン
破裂音とともに、倒れる
息子が、傘の隠し銃を、向けていた
「グッドラック」
社長は、そう言って、煙の中、立ち去っていく
「おめでとうございます、これを持ちまして、借金は・・・」
私は、元気の良い視界の言葉を遮るように
家に帰った
「もう、探偵なんて、儲からない仕事辞めて、コンビニでも、バイトしたら」
私は、息子に言われ
ウンと、頷きそうになっていた
「うん」