3.テストに落ちた受験生に殺されちゃったピタゴラスさん
万物の原理は数字だと言う教えの教団を立ち上げ、教団内の法律に成りました。彼のモットーは「神になる事」かな?
ピタゴラスさんは、紀元前582年から紀元前496年の86年の生涯を生きました。哲学者って総じて長生きなのかもしれないと思い始めています。
この方は、「全てのものは数で出来ている(数で出来ていてほしいんだ。そうじゃなきゃ嫌だ)」って言う考え方を広めて、ピタゴラス教団(もしくはピタゴラス学派)と言う、内部情報を厳密に守らなければならない宗教団体を設立し、その長に成りました。
弁舌爽やかで、人を惹きつける魅力のある方だったらしいです。しかし、秘密主義の教団を作ったので、ピタゴラスさん本人の著書は現代に伝わっていません。
彼の言葉や人物像は、教団が壊滅した後の、弟子の著書や、伝記や、数学の本に関する注釈等の情報で出来ています。
ピタゴラスさんの生前の姿も不明で、現存する「ピタゴラスの像」は、後世の彫刻や画家達が想像で作った物だそうです。
どの宗教も、最初は新興宗教なんですけど、ピタゴラス教団は、現代の人が「新興宗教」と聞いて持つ「なんか危険な団体なんじゃないの?」と言う伏線をしっかり回収しています。
そんな新興宗教団体を作ったピタゴラスさんの話を、伝記によるところから想像します。
宝石細工師の家庭に生まれて、若い頃に、知識を得るため、故郷のサモア島から旅立ちました。
色んな所で、幾何学、宗教、算術、比率、天文学、等を学びました。エジプトに渡った他、伝説としてはイギリスやインドにも旅したと言われています。
ゾロアスター教と言う、炎を崇拝する宗教でも何等かの知識を学んだとされています。エジプトでも宗教的な事を勉強していたらしいし、この方は「知識を以って俺が神になる」って言う型の哲人だったのだと思われます。
20年間ほど放浪して、当時のあらゆる数学知識を全部身につけて故郷に帰ったのですが、その頃の故郷の島は暴君が支配していたので、イタリア半島の植民市に移住しました。
そして、「全てのものは数である」と言う思想に共鳴する弟子達と共にピタゴラス学派―教団―を設立しました。
万物は人間の主観ではなく、数の法則に従うのだとして、全ては数字と計算によって導き出せると言う思想を主張しました。数の性質を研究する事により、宇宙の真理を追究するのがピタゴラス教団の主な活動です。
数字の概念が当てはまらない事象と言うのはあると言うのは、現代の人々には知られ切っておりますが、先にも書いた通り、ピタゴラスさんは「全ての物は数」って思ってたかったし、その方が世界や宇宙を説明するのに分かりやすいって思ってたんじゃないでしょうか。
さて、このピタゴラス教団ですが、入団するにはかなり難しい数学のテストを受けなければならず、そのテストに受かった数学に強い人だけが入団出来ました。
ピタゴラス教団の特徴としては、10を完全な数としており、10個のドットを三角形に並べたマークが教団のシンボルに使われていました。その他に、ピタゴラスさんは異常に豆を嫌っており、特にソラマメを食べるのを教団内で禁じていたと言う変な風習もありました。
長になってから偏屈の片鱗を見せていたピタゴラスさんの所で、一人の弟子が「無理数」を発見します。無理数を簡単に言うと、分数でも割り切れない、円周率とかの「延々と数字の羅列が続いて行く数」の事です。
その無理数を発見した弟子が、「無理数の存在」を外部に漏らそうとしたからだとか、無理数の存在自体がピタゴラスさんの思想の危険だったからだとか、諸説はありますが、ピタゴラスさん達は無理数を発見した弟子を、教団内で私刑にかけ、船から海に突き落としました。
ピタゴラスさんは、自分で考えた「ピタゴラスの定理」で、無理数を発見してたはずなのですが、宗教団体になっていた教団の教義に反するので「なかったこと」にしてたようなんですね。
それを、弟子に「発見しました!」って言われて、「お前は何を考えとるんじゃー!」ってなったのかも知れませんね。他の弟子達も、「空気読めよ!」って、成ったと。
一般の世界だったら「空気読めない」くらいで海に落とされたりしないと思うんですけど、何せ教団と言う「ある種の宗教的団体」の中の事なので、ピタゴラスのとっつぁんが法律なのです。
そんな狂気の沙汰もありましたが、教団自体はとても指示されており、土地の有力者から保護を受けるようになり、数百人の信者を集め、ピタゴラスさんはその信者の一人の女性と結婚しました。
ここまでは、ピタゴラスさんも順調に「神になる道」を歩んでいたわけですが、戦争で後援者が失脚して、おまけに教団に入る時の受験に落ちた落第生が先導して町の住民が暴徒と化し、ピタゴラス教団を襲いました。
そしてピタゴラスさんは豆畑の辺りまで追い詰められて、殺害されてしまったそうです。
あまりに豆が嫌いなばかりに、豆畑を迂回して逃げようとしたので追っ手につかまったのではないかと言う、最期まで変な逸話の付きまとう人物でした。




