スレイプニル
「私は一つの言葉を追い求めていた」
と時そのものの様に年老いた魔法使いは言いました。
「それは歌であり、火であり、深く青くして母に似て、永遠にして女性的なるものだ」
と万物の父オーディンは言いました。
「私は使い古した馬に乗り、遥か東へと走らせた。」
「途中で馬が泡を吹き倒れると、捨てた。それは私の理想に似ず醜く黒かった。」
「馬が死ぬたび私は他の者達から乗り物をかっぱらった。」
「そうして何頭もの馬を乗りつぶした。彼らを、彼女らを憐れんだりはしなかった。意味がなかったから。」
「そうしてある日霧深い沼地に差し掛かり、ワシは一人になってしまった。」
「ワシを沈める悪臭漂う泥から守ってくれるものも、泣き叫ぶ心を慰めてくれる者もいなかった。」
「ハエや蚊に刺され、毒を持つ蛇やヒルに怯えておののいた。」
「彼女は突然現れた。八本の足で宙に浮かんで、泥にも水にも汚されないままで。」
「銀色のたてがみを持つ灰色の馬だった。」
「貴方は何をお探しですか? と尋ねた。」
「永遠にして女性的なるものを探しています。と私は答えた。」
「それはいかなるものですか? と彼女は問うた。」
「それは母親です。貴方は自分の母親を知っていますか? と私は尋ねた。」
「悲しそうに彼女は首を振った。」
「なら、貴方には理解できるでしょう。と私は言った。」
「私は彼女の背に乗り、空中を駆け巡った。鞍も鐙も付けるのを嫌がったので、赤ん坊のようにがむしゃらにしがみついた。」
「私には八本の脚があります。と彼女は言った。」
「私には欠けたところがないのですと。」
「空腹を感じると、彼女は自分の脚をもいで食べた。」
「四本の脚を喰らうその間にも残る四本の脚で空を駆けた。」
「ワシは食べ物を食べる間もなかった。一つの革袋に入れたぶどう酒がその代わりだった。」
「やがて東の果て、巨人の国にたどり着いた。」
「恐ろしい巨人の国で、何を見つけたのかって?」
とオーディンはいたずらっぽく幼いトールに微笑みました。
「それは君自身が見つけてご覧。」
と神々の父は言いました。
「物語を自身の脚で探し、目で見てご覧。」
と言いました。




