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始まりの神話  作者: ロッドファーヴニル
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獣神トール2

獣のような神トールは砂利の雨を降らせながら崖を滑り降りていきました。

そして少女を取り囲む悪童たちに対して大声で話しかけました。


「お前らは何をしているんだね?」

雷鳴が轟いたかのような轟音に少年二人はギョッとしました。

そしてその声の持ち主が途方も無い大男だということがわかると互いに顔を見合わせたのです。


「あれを見てください。」

と背の高い方の少年が言いました。

彼が指差す先を見ると一匹のヤギが繋がれていました。

片方の後ろ足が折れ曲がっているように見えました。


「この女がちゃんと見張らなかったから落ちて怪我したんです。」

「そうです。俺たちちゃんとお願いして頼んだのにです。」

背の低い方の少年が口をはさみました。


「お前らはきちんとその仕事に対して、代価を払ったのかい?」

と雷鳴の神は轟くような声で尋ねました。

「いいえ。」

と二人の少年は声を揃えて言いました。

「お前らはその間、何をしていた?」

と豪腕の神は重ねて聞きます。

「何も。」

と背の高い方の少年は答えます。

「怠けていただけ?」

「そうです。」


「それでお前らは彼女が失敗したから虐めているということか?」

とトールは聞きます。

二人の少年はただあいまいに頷きました。

「では治してやろう。」


二人は言われたことの意味が分からずにただ立ち尽くしていました。

彼らの脇を素通りして雷神トールは怪我をしたヤギの元へ近づきました。

そして背負っていた麻袋から鉄のハンマーを取り出すとヤギの上で振りました。

するとヤギの足はまっすぐになり元気に飛び跳ね、メェメェと威勢よく鳴き始めたのです。


「お前らはこのハンマーが欲しいだろう。そうだろう。」

とトールは呆気にとられている二人に問いかけました。

しばし黙ってから、首がもげるのではないかというほど縦に振りました。


「では力比べをしようじゃないか。」

と雷神トールは言います。

二人を小突くようにして、近くのテーブルのような大岩まで追いやりました。

「腕くらべだぞ。互いの右手を組んで相手の手を下に付けたほうが勝ち。」

とトールは説明しました。

「あんたが相手じゃ俺たち二人がかりでも勝ち目がないよ。」

と背の高い方の少年が言いました。

「勝負は一人ずつだ。ならば俺は指一本しか使わんさ。」

とトール。

少年は指一本が相手なら勝ち目があると踏みました。

小山のような大男の挑戦を受けたのです。


「俺たちのうち、どちらかが勝てたらそのハンマーを貰えるのかい?」

と背の低い方の少年がトールに聞きました。

「そうだ。」

「ではあんたが勝ったら?」

「何も貰わん。この勝負で君たちが失うものはない。」


悪童二人は心の奥底で笑いました。

身体の大きいものは思考も分別も小さいものだとあざ笑ったのです。

背の低い方の少年が名乗りを上げました。

トールは本当にその少年の右手と自身の右手の人差し指を組ませました。

そしてそのまま石のテーブルに叩きつけ押し潰してしまったのです。


「痛いよ! 痛いよ!」

少年は泣き叫びました。

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