アースガルドと火の女神2
「大変に心のこもったもてなし、感謝しますぞ。」
とオーディンは顔に表情を浮かべないまま、そうタビティに伝えました。
その能面の様な顔は彼の本心を覆い隠していました。
「今度は我らが自らの領地へ、アースガルドへとあなたを招くべきでしょうな。私達は丸々と肥えた豚を沢山持っておりますので、がっかりさせる事はないでしょうよ。」
「豚とは?」
とタビティは聞きました。
「脂の乗った肉がたくさん採れる、うるさい生き物だよ。」
とオーディンの傍らに座っていたテュールは答えました。
「面白そうですね。」
というタビティに彼は彼女の色々な話、馬や牛の事、身の回りの事柄について知りたがりました。
そして、アースガルドへと神々は帰還して月日が経ちました。
タビティとその一行が訪れました。
その身なりは荒ぶる神々の眼をも驚嘆させるものでした。
めいめいが馬に乗ったその腰にぶら下げているものは手。
首にかけているものは指の首飾り。
彼らは神々の王オーディンに挨拶をすると盃を交わしました。
それは金と銀で飾られた頭蓋骨の盃でした。
全て戦死者から取られた彼らの戦利品でした。
「見てよほら! 僕らのうちの最高の戦士達だって、あんな風に恐ろしい格好はしてないぜ!」
ローズルは野生の鶏のように騒ぎ立てました。
勇敢な神テュールが彼らの相手をしました。
何しろ彼らに臆せずに接し、酒を食べ物を勧められるのは彼だけだったのです…
タビティはテュールに話しかけます。
「私の願いが分かりますか?」
テュールは微笑んで離れました。
彼女は彼を追いかけました。
二人はそれぞれ馬に乗り焚き火の周りをクルクルと廻っていたのです…
次の日の朝、テュールはローズルの訪問を受けました。
深刻そうに打ちひしがれている様子を見てテュールは尋ねます。
「何をそんなに落ち込んでいるんだい?」
「君に伝えなきゃいけない事があるんだ。」
全ての詐欺師の祖先、役者の祖先、ありとあらゆる心変わりする男と女の祖先ローズルは、その邪悪な考えを二枚ある舌の間に挟み込み、光り輝く者らからその光を奪うため語り始めるのでした。




