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始まりの神話  作者: ロッドファーヴニル
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神話9

世界は生き返りました。


大水が引いたあとすぐに樹々は若さを取り戻し、鳥たちは戻ってきて歌い始めました。


三兄弟が再び「肉」の館があったところへ戻ると盲目白痴のものは倒れていました。


彼らはこの場所を思い出の場所にするために彼の皮をはぎ、肉を解体し始めました。

そして頭蓋骨を割り、脳みそを取り出して色々なものに投げつけたのです。


「肉」の脳みそによって、色が失われた世界に新しい色が付け加えられて行きました。

樹々は青々として美しく、海は黒々として恐ろしいものとなったのです。

命の鼓動あるすべての獣たちの肉は赤々と温かみを帯び始めました。


それだけではありません。

世界にはまだ「肉」のこしらえた気味の悪い息子たち、怪物のような巨人たちがのさばっていました。

三兄弟はそれらのうち、小さな者たちを空に向かって放り投げました。

それらは今日知られるまつろわぬ星々となりました。

大きな者たちはその身体を滅茶苦茶に千切り、同じようにして放り投げました。

それらはよく知られる12の星座となりました。


このようにして長い年月を、三兄弟は闘いに明け暮れて過ごしました。

とうとう巨人たちはその一組の夫婦を残して皆いなくなってしまいました。


「これが最後の生き残りだな。」

オーディンは白い息と共に言葉を発しました。

「小便を漏らすほど怯えているね。」

ニヤニヤ笑いのローズルが応じます。

「彼らを滅ぼしたあと、私達はどうなる?」

そう出し抜けにヘーニルは呟きました。


二人はハッとしました。

「…彼らを滅ぼしてしまっていいのか、僕達はもう一度考えてみる必要があるね!」

ローズルは言います。

「僕ら男しかいない。自分たちの腹で子供を抱きかかえて育てられるっていうんじゃない限り、他の存在はどうしても要る。」

オーディンは言いました。

「住む場所を違えれば済むことだ。」


三兄弟は「肉」の肋骨を使って、壁をこしらえました。

それは雲を裂いて伸びるくらいの山脈でした。

その霜がかかった荒原の向こうに巨人たちを置いたのです。


「その場所で栄えるがいい。増すがいい。」

オーディンはそう言い、彼らを霜の巨人たちと呼ぶことにしました。

そして彼らは野ネズミのように増えていったのです。


巨人たちが増えていった頃、人間たちは神々と共に歩むことを諦めました。

人間たちは神々のようには生きられなかったのです。

男と女が倒れてしわくちゃになっているのを見てローズルは言いました。

「これをそのままにしておいても何の役にも立たないね。」

オーディンは進み出て言いました。

「ならば。」

オーディンは二人にオンドを与えました。

彼らは鼓動を取り戻しましたが起き上がることはありませんでした。


「それなら。」

ヘーニルは二人にオーズを与えました。

彼らはむっくりと起き上がり互いに向き合いましたがひどく怯えたのです。

互いの考えが分からなかったためです。


「だったら。」

ローズルは二人の耳の覆いを取り口を開きました。

言葉を得た男と女は互いの考えを理解できるようになり、恐れ合うことはなくなりました。

かの者の悪戯でたまに悪気のない嘘をつくようになりましたけど…


神々は人間たちの住む場所を巨人たちの住む場所から遠ざけ、隔てました。そしてそこをミッドガルドと名付けました。

また、あの高い山に登って広大で壮麗な宮殿を築き、アースガルドと名付けたのです。


「まだだ。」

オーディンは言いました。

彼は天に手を伸ばし、その深淵からほんの少しの一部分を、千切り取ったのです。

これは彼の最初で最後の、本当の罪でした。


千切り取られた「深淵」は獣のような形をとると咆哮しました。

空から恐ろしい雷鳴が轟き、世界が震えました。

「こんなことして良かったのかな?」

ヘーニルはささやきました。


「神々と人々を護るのだ。永遠に。」

オーディンは獣のような神に言いました。

獣神は一吠えして巨人たちの世界、ヨツンヘイムへと駆け出して行きました。


神々は人間達、巨人達、色づき始めた世界の全てを眼下に見下ろしながら、完璧ではなくともそれらの全てを永遠に見守り続けることを誓いました。

まだ続きます!

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