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夢渡り令嬢と腹黒宰相の出会い ⑤

「セシリーンどうしたの? 元気がないようだけど」

「お母様……。私、反省をしているのですわ」




 さて、ブラハント・カーデンの夢から無事に脱出したセシリーンであるが、反省していた。今まで、こうして夢を渡っていて、今までこうした事態になったことはなかった。



 夢の世界の出来事だからこそ、あまり夢の主はその中の出来事を気にすることはない。だからこそ夢の世界に迷い込んだセシリーンが少しおかしな行動を起こしても誰も気にしなかったのだ。




 ――だけど、ブラハント・カーデンは違った。




(……この国の宰相というだけあって、カーデン様は警戒心が強いのね。失敗したわ。今まで上手くいったからといって調子に乗ってしまったもの!! 反省しないと。というか、流石にカーデン様も夢の中の出来事なら忘れてくれるよね?)



 セシリーンは目を伏せて、悩んでいる様子である。母親であるケーテは、娘の珍しい様子に目を瞬かせている。



「あらあら、何かやってしまったね」

「ええ。……私史上一番の不覚でしたわ。まさか、こんな失敗をしてしまうなんて。ねぇ、お母様、どうしましょう?」

「まぁまぁ、そんなに落ち込まないの。失敗したのならば、次に失敗しないようにしたらいいのよ。人は失敗を経験して、成長していくものなのよ」

「そうだけど……そうなのだけど!!」

「そんなにやらかしてしまったことは、取り返しのつかないことなの?」

「え、ええと……うーん、取り返しのつかないと言えば、つかないかも……? 本当に取り返しがつかないことになったらどうしよう」

「そんなに後ろ向きなことばかり考えずに、もっと前向きに考えましょう。ねぇ、セシリーン、貴方が取り返しのつかないことと思ったことでも、向こうはそうは思ってないかもしれないでしょう。それに失敗してしまっていたのならば、これから挽回できるわよ。やらかしてしまったことがあれば謝ればいいもの。貴方が本当にそういうことをしてしまったなら、私も母親として一緒に責任を負うから。ね?」




 優しく微笑むケーテのことを、セシリーンはとても好きである。優しくて真っ直ぐで、自分のことを受け入れてくれる母親のこと愛している。

 不安だった気持ちも、ケーテの言葉を聞けば、何だかほっとしてしまった。




「ふふ、そうね。お母様! 後ろ向きなことばかり考えていても駄目よね。もっと前向きにならないとね!! でもお母様、私、しばらくは社交界をお休みしたいわ!!」

「前向きになってくれてよかったわ。でも、セシリーン。貴方も年頃でしょう。お相手を探すためにも社交界をお休みするわけにはいかないわ。もうすぐ社交界のシーズンですしね」




 もうすぐケーテの言うように社交界のシーズンがやってくる。年頃の貴族令嬢であるセシリーンは、結婚相手探しのためにも、社交界に出ることが求められていた。そもそもよっぽどの理由がなければ、社交界への参加を拒否するというのは控えるべきである。



 当然、貴族令嬢として生きてきたセシリーンはそれを理解しているし、結婚相手をどうにか探したいと思っている。



「……分かった! お母様、私、社交界で頑張るわ」



 出来れば、ブラハント・カーデンのこともあるので参加したくなかったセシリーンだが、諦めて、社交界に参加することにした。




(社交界に出ないというのは、伯爵家令嬢としてやるべきではない。だから参加はする。カーデン様には、きっとバレないはず。うん、ばれないよね? 私はそう信じてる。きっと大丈夫なはず)





 自分に言い聞かせるようにセシリーンはそう思考するのであった。




 ――そして、社交界のシーズンがやってくる。



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