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夢渡り令嬢と腹黒宰相の危機 ⑬

7/24 三話目

 目が覚めたセシリーンは、両親にそれはもう抱きしめられ、泣かれた。そして自分の腕が少し細くなっていることに驚いた。

 両親だけではなく、屋敷に仕える侍女や執事、それにその場にいた魔法師たちも、ほっとした様子を浮かべていた。



(私のことを皆、心配してくれていたんだな。それに……すっかり消耗しているカーデン様も)




 ブラハントは人の夢の世界に入ってしまったからだろうか。その疲れからか、ブラハントは眠っている。先ほど一瞬目を覚ましたようだが、そもそも魔法師でもないブラハントが『夢渡り魔法』の影響のあるその世界に入り込むことがそもそもつかれることなのだ。

 それを行ってでも、セシリーンを呼び戻そうとしてくれたことに、セシリーンは笑った。



 そして目が覚めたセシリーンは、ご飯をよく食べた。しばらく食事をとっていなかったのもあって、食べやすいものをバクバクと食べる。





「はぁ、美味しい」



 のんびりと食事をするセシリーンを、周りはにこにことしながら見ていた。



 ちなみに、その後、目を覚ましたブラハントがソドアたちにセシリーンとの婚約の話を進めてしまったので、屋敷内は騒がしくなった。ソドアもケーテも、セシリーン本人が望んでいることならとそのことの許可を出すのであった。王家も公になっていないとはいえ、セシリーンは王太子を目覚めさせた存在なので、許可を出してくれた。




「びっくりしたけど、自分の夢の世界は入れたのは面白かった」

「……セシリーン、君は大変な目に遭ったのだからもう少し緊張感を持つといい」

「カーデン様ってば、むずかしい顔してますね。大丈夫ですよ。カーデン様と一緒ならどんな危機でも乗り切れるって思いますもの。終わりよければすべてよしですよ!!」






 セシリーンは、無邪気に笑いながらそんなことを言った。


 ――そしてそんな会話の後に、夢の世界だけではなく、現実でも彼らは口づけを交わすのであった。







「はぁ、美味しい。それにしても社交界の時期なのに、こんなにのんびりしていていいのかなぁ」

「いいのよ。セシリーン。まずは貴方が元気になることが重要だもの。それに体力が回復したら貴方とカーデン宰相の婚約発表をがあるのだから」

「……うん」




 屋敷で食事をとりながら、ケーテと共に会話を交わしている。そう、間もなく、セシリーンはブラハントとの婚約発表をする。



 そのことを考えるとセシリーンは思わず顔を赤くする。

 そんなセシリーンを見て、ケーテは嬉しそうに笑っていた。娘であるセシリーンが、幸せそうにしていると嬉しくて仕方がなかった。



 ブラハントがセシリーンのいる王都の屋敷に来たことは噂になっていた。

 そしてそれ以降時間を見つけては、セシリーンの元へやってきている。

 そのため、ブラハントとセシリーンの噂はまた再熱している。セシリーンは社交界にしばらく出ていないが、友人たちからは手紙がよくきている。それに返事の手紙をしたためている。



 セシリーンが屋敷でゆっくりとしている間に、ブラハントたちはドバイデンとセシリーンを眠らせた黒幕を追い詰めていた。そのことは夢の世界でブラハントから話を聞いていた。





(結局黒幕って、王弟殿下だったんだよねぇ。怪しそうな雰囲気はあったけれど本当に国王陛下を蹴落とそうとしているとは思わなかったなぁ。というか、私のこともカーデン様を蹴落とそうとして殺そうとしていたんだよね。でもまさか王弟殿下も私が本当にカーデン様の婚約者になるとは思っていなかっただろうけれど)




 王弟殿下やその周りの術者たちを、ブラハントたちが追い詰めていた。これによってこの国の勢力図は変わるだろう。王弟殿下は他国からの影響を受けて、王位を略奪しようとしていたようだ。その辺の詳しい情報はセシリーンは聞かされていない。



 どちらにせよ、ブラハントの隣にいるのならば、ブラハントが陥れられればセシリーンだってそうなるだろう。ブラハントの婚約者になる時点で、一蓮托生なのである。

 キムアに関しては利用されただけだということで、謹慎処分になっている。謝罪するために王都のジスアド伯爵家の屋敷に両親と共にやってきていた。



(私はカーデン様の婚約者としてこれから生きていく。カーデン様は私の『夢渡り魔法』を知ってもいつも通りでいてくれている。私はこの魔法を自分のために、カーデン様のために、国のために使おう)



 そんな風にセシリーンは考えて、笑った。


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