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夢渡り令嬢と腹黒宰相の危機 ⑦

 セシリーンとブラハントの噂が出回っている。

 そのこともあり、セシリーンに近づいてくる男性はそういう噂を面白がっているような遊び人などが多い。ただセシリーンの友人たちが周りにいてくれているのもあり、これといった危険はあまりなかった。




(もつべきものはやっぱり、友人だわ。友人がいるからこそ私はこうして穏やかな日々を過ごすことが出来る。こういう噂があったとしても私の側から離れないでいてくれる人がいる。こういう時に離れずに傍にいてくれる人がいることが一番の幸せなことだよね。これで離れていく人はそういう人だということだよね)




 こういう機会だからこそ、セシリーンは周りの誰が実際の味方なのかというのを判断することが出来た。

 このようなある意味緊迫した状況でも、セシリーンにとってみればそういう場として有意義な場であった。そういう場面を前向きにとらえられるのが、セシリーン・ジスアドの良さであると言える。





(んー、しかしこういう時にあえて近づいてくる人はカーデン様のことをどうにかしようとしている人が多いだろうな。というか貴族の交友関係はある程度頭にあるけれど……カーデン様ほどは私は裏の裏まで情報は知らないしなぁ。怪しい人に関してはカーデン様から情報はもらってはいるけど。というか、あれかなぁ。近づいてくる人の傾向は分かりやすいけれど……これって利用されている人なのかな? そして私に何かすることで評判を落とそうとしているってのが一番考えられることだよね)




 とはいえ、何をどうやってセシリーンのことを使ってブラハントの事をどうにかしようとしているのかというのは分からない。警戒心を持ちながらセシリーンは過ごしている。

 そうこうしているうちに、ブラハントは少しずつ相手の情報を集めて追い詰めているらしい。その情報はセシリーンにはある程度の情報は受け取っているが、詳しい情報まではもらっていない。




(候補の人は色々いる。王太子殿下とカーデン様を蹴落としそうとしている候補として、王弟殿下に、降嫁している王女様や、公爵、うん、色々いる。誰でも動機はあるからなぁ。それにしても彼らの目的として王位を奪うことなのかな? それともこの国で権力を手に入れてそれでこの国が混乱するのが分からないのかなぁ。まぁ、権力を手にしたいなら仕方がないか)





 セシリーンは候補者の夢にお邪魔出来るならお邪魔しようとしている。その夢の中を見ることで、その人がどんな風な思考をしているかというのが分かるからである。




 夢には人の本質が表れるから。



 とはいえ、夢の扉を開いてみるまでそれが誰の夢なのか分からないので、行き当たりばったりである。

 進んでその人の夢に行こうとしたところで見つからないものは見つからない。




 さて夢の世界へと旅立っているセシリーンは、研ぎ澄ませた感覚でセシリーンは物騒な見た目をした扉を幾つか見つける。正直なことを言うけれど、そういう物騒な雰囲気を身にまとっている扉というのは、中に入るのに少しだけ怯んでしまう。




(でも怯んでても仕方ないよね。まずはどんどん情報を集めないと。現実ではそこまでカーデン様の役に立ててないし、夢の世界だからこそ私に出来ることがある)




 夢の世界というのは、セシリーンにとって自由になる世界である。その世界だからこそ出来ることがある。セシリーンは非力な貴族令嬢でしかないが、それでも夢の世界だからこそ出来ることがある。

 そう思ってセシリーンは、危険そうな扉に進んで顔を出している。



 その中で殺人犯の夢の扉に入ってしまい、セシリーンはドキマギしてしまった。夢の中で何をされたとしても、現実のセシリーンの身体に影響があるわけではない。だけど心には影響がある。




(……怖い怖い。それにしてもこういう物騒な存在がいるのって恐ろしいよね。というかその夢の中に見知った顔がいるんだけど。何か企んでいる?? こういう殺人犯って思考回路も怖いんだろうなぁ。夢もこうだし。というか女性に対しての残虐な思考に気持ち悪くなってくる)




 セシリーンはその恐ろしい夢の中を見て回った。そしてその夢の中で見かけたことはブラハントに伝えていった。そうすることで少しずつこの国の膿をなくしていっていたのだ。




 ある日、セシリーンは一つの禍々しい見た目をした扉の中へと入った。




 その夢の扉は、欲望に溢れていると言える場所だった。沢山の裸の女性がいた。その夢の主の願望なのだろうか。前に訪れた男爵の夢の時と同じような感覚……いや、それよりも醜悪な夢のように見えた。なのでセシリーンは少し気持ち悪くなっていた。




(それにしてもこういう人って、願望だけならいいけど、行動まで起こしていたらアウトだよね。この夢の主って、どちらかというと行動まで起こしているように見える。実際にそういうことを起こして、それでいて所々に王家に対する不満も見える気がする)




 欲望と不満。

 それが蠢く、不思議な空間。

 その夢の主の姿をセシリーンは見る。




 それはセシリーンが知らない人間だった。見た事もない人間。だけれどもその夢の中で見た事がある人をセシリーンは見かける。




(王弟殿下の姿とか、公爵とかの姿もあるし。なんだろう、これ、この夢の主の願望なのかな? それとも本当に現実で関わっているのか。その判断は正直つかない。夢はあくまで願望だし、夢で本質が見られやすいとはいえ、現実と混同するわけにもいかないし。やっぱりカーデン様と情報を共有して判断を仰ぐしかないか)




 セシリーンはそのあたりの判断が出来ない。あくまでセシリーンが出来るのは、情報収集のみである。

 夢の世界だからこそ危険なことはないと、たかをくくっていた。けれど、セシリーンはその夢の主の男性と、目が遭う。



 その夢の主が目を見開いた気がした。



 セシリーンは普段の姿とは異なる姿をしているため、その夢の主は此処にいるのがセシリーンだとは思わないだろう。


 ――だけれども、その目が、何だか粘着質で、夢の中のセシリーンがセシリーンだと分かっているようで、セシリーンは慌ててその夢から抜け出した。


 すぐにそのことも踏まえて、セシリーンはブラハントに連携をしようと思っていた。

 



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