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夢渡り令嬢と腹黒宰相の共謀 ⑦

「カーデン様!! 私、見つけられましたよ!!」



 その日、ブラハントの夢の中にセシリーン・ジスアドは訪れていた。セシリーンのその表情は、以前、ブラハントの夢に訪れた時と違って、にこやかな笑みを浮かべていた。

 夢の中だからというのもあるが、セシリーンは、その感情が表情として一面に出ている。




「指定した相手の夢を見つけられたのか」

「はい! 見つけることが出来ました」



 そう言ってセシリーンは、ドヤ顔を浮かべている。



 褒めてほしそうにキラキラした目を向けているセシリーン。セシリーンはブラハントからの依頼をこなすために一生懸命だった。他の事を放っておいて、一心に探していたのである。



 社交界の季節だと言うのにも関わらず、社交界よりも夢渡り魔法に力を入れていたのだ。

 しかしセシリーンがキラキラした目でブラハントを見上げていても、ブラハントは冷たい翡翠の目を向けている。褒めるほどのことではないと思っているようで、その後の返答は淡々としていた。




「そうか。それでどういった情報を集められた?」

「……むぅ。そうですね、男爵は鉱山の事をとても考えていました。あとはお金のことをとても考えてました。周りに女性を侍らせていて、あれは願望だと思います。金に物を言わせて女性を集めようとしているようには思えました。ただあの男爵領はそこまで栄えているわけでもないので、ただ願望を持っているだけかもしれませんが……でも何だかあの様子だと現実でも同じことが出来ると思い込んでいるように思えました」



 セシリーンは、ブラハントから言われた該当する男爵の夢について思い起こした。



 その夢はまず扉からして、自分からは入ろうとは思わないようなものだった。裸体の女性の像が扉の左右にあって、どこか後ろ暗いオーラを醸し出していて、入るのがためらわれる夢だった。

 しかし頼まれたことはしっかりこなしたいセシリーンなので、ちゃんとその扉の中へと入った。



 そこで見た光景は、不思議なものだった。




 夢の世界の光景なので、現実とは異なったり、現実的ではないものであることは当然ある。散々夢の世界をさ迷っていたセシリーンなので、そのことは当然知っている。



 華美な装飾の部屋。男爵家にしては、その部屋は身分不相応に見えた。しかもその男爵領は決して栄えているわけでもない。最近になって栄えるようになった何かがあるともセシリーンは知らなかった。

 夢の世界であるので、現実ではありえない願望を持っている者もいないわけではない。現実とは全く異なる姿を夢の世界でも見せているものはいる。



 けれど、長い間夢の世界をさ迷ってきたセシリーンには、それが現実とかかわりがないことだとは思わなかった。




 金、銀、銅といったものが積まれている。



 それだけ売り払うことが出来れば、男爵家は潤うことだろうとセシリーンは思ったものである。

 その男爵領には、寂れた鉱山があることはセシリーンも知っていた。少しの銅しか手に入らなくなってしまった鉱山。以前のように鉱石を治めることは出来ないという先代男爵家の陳情が受け入れられ、王家へ収める量を減らすように便宜が図られているはずだ。



 それでいて男爵は、奥方がいるにも関わらず夢の中でうら若い女性を侍らせていた。それも素っ裸の女性である。男爵は四十を既に超えており、自分の娘ほどの年の女性とそういう耽美の夢に浸っていた。

 セシリーンは正直言って引いた。

 あとその中で気になる言葉も口にしていた。執事に化けて接触した時にも何だか危ない発言をしていたのを聞いていた。





「夢の中だからこそ、願望で口にした言葉かもしれませんが、王家に害をなすような危険な発言をしていました」




 セシリーンは、真っ直ぐにブラハントの目も見据えてそんな報告をする。

 そのセシリーンの言葉を聞いて、ブラハントは少し考えるような素振りを見せる。その後、セシリーンを見る。



「情報提供感謝する。引き続き他の対象の情報を集めてもらえるか?」

「はい。かしこまりました」

「報酬に関しては、ジスアド伯爵を経由して渡す」

「ありがとうございます」



 その日の夢の世界での報告は、そんな淡々とした会話で終わった。



 セシリーンは、褒められなかったことに面白くない気持ちになりながらも、しばらくした後に届いた報酬に目を見張るのであった。



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