ジョン子さん、パーティーを解散しよう。
以前投稿した短編、
『ジョン子さん、パーティークビになるって……ええっ!?』
<https://ncode.syosetu.com/n3381ew/>
の続編になります。読んだほうが分かりやすいと思うので、是非!
俺の名前はレオ。大都市アラベスク、通称「迷宮都市」に滞在している冒険者だ。
つい二年前程まではカムイという冒険者らと共にパーティーを組んでいたが現在は抜け、同じくカムイらのパーティーから抜けたリビスタニア・ディルクハート・ヴォルラングルフ・ダラスディーヴァ、自称ダン・ジョン子さんという女の子と二人パーティーを組んでダンジョン踏破を目指している。
目指しているのだが……
「はぁ……」
「よおレオ、今日も昼間から飲んだくれてんのかい」
「飲んでねぇよ。酒なんてもう三年くらい飲んでねぇ」
「じゃあどうして昼間から酒場でうなだれてんだ。そいつぁ飲んだくれの特権だぜ? 俺みたいななっ!」
「自慢することじゃねぇだろ……」
行きつけの酒場「ホープ」、駆け出しの頃から世話になっている店のカウンターでうなだれていた俺に声を掛けてきたのは、同じく冒険者で俺の一回り年上の毛むくじゃらの男、ハイドンだった。
ハイドンは自分で言う通り確かに酒気を帯びているようで、随分と暇を持て余しているらしい。何度か一緒に仕事をしたことがある間柄だ。
「んで、でけぇ溜め息吐いてたのは何が理由だ?」
「理由?」
「理由なく溜め息を吐く奴はいねぇ。差し詰め、あのちんちくりんの嬢ちゃんのことだろ?」
ちんちくりんの嬢ちゃんとはジョン子さんのことだろう。
言い方はあれだが、ジョン子さんは見た目幼く、小柄な体付きをしている。
「まあ、そうかな……」
「やっぱりな。当ててやろう、ずばりマリッジブルーだな?」
「ちげーよ! 何で俺とジョン子さんが結婚してんだ!?」
とんでもない勘違いに思わず声を張り上げてしまった。店中から視線が集中し、気まずさからトーンを落とし、続ける。
「俺達は仲間だ。そんな不純な間柄じゃねえ」
「結婚が不純とか変な考え方だな。それに仲間内で結婚するなんてよくあることだぜ? 命を賭け合う仲でそういう風に進展することはよくあるし、何よりお互いいつ死ぬかもわかんねぇんだからな。やることはやっとかねぇと」
「とにかく、俺はジョン子さんをそんな目で見てねぇ」
何故か呆れた視線を向けられた。目の前のハイドンだけでなく、背中にも複数感じる。
「こりゃあ、あの嬢ちゃんも苦労しているだろうな……」
「あん?」
「なんでもねぇよ、そう睨むなって。それで? じゃあ何でまたこんな所で油売ってんだよ?」
「俺……本当にジョン子さんに相応しいのかって……」
「……はあ?」
口から吐き出すと余計に気が重くなった。
「まあいい、取りあえず聞いてやる。続けろ」
ハイドンの口調が鋭くなった気がした。が、俺も一度開いた口を閉じることは出来そうにない。
「この間、ようやく7階層を突破してさ。正直死ぬほど嬉しかった。二年掛かったけれど、ジョン子さんと二人だけで前のパーティーに追いつけたんだって」
「よく知ってらぁ。お前らがカムイんとこと仲違いしたってのは、この界隈じゃあ結構な事件だったからな」
あの時はうちもパーティー誘ってやったのに断りやがって、と笑われる。当時も提案は嬉しかった。けれど。
「俺はジョン子さんと決めたから、二人でリスタートするって。俺は他に能がないから何があってもジョン子さんを守れるように剣の腕を磨いてきた。カムイに劣って、苦手意識があったタイマンの立ち回りも勉強した。ジョン子さんも苦手だった攻撃魔術を必死に習得して……なのに、俺は」
瞼の裏が熱くなる。言葉と共に何か熱いものが込み上げてくる。
「俺は……俺の剣は、8階層のボス、あの鎧野郎に一切通らなかった……傷一つも付けられなかったんだ! ジョン子さんを守るどころか、逆に守られて辛うじて逃げ延びたんだ! 守るなんて偉そうなこと言って、情けねぇよ……」
「れ、レオ……」
「俺の二年間は何だったんだ……あの時、カムイたちのパーティーを抜けた頃から何も成長出来ていなかったなんて……」
「おい、そりゃあ違うだろ。お前がどれだけ努力をしてきたかは、俺だけじゃねぇ、ここにいる全員が知ってる。成長してないなんて……」
「だったらどうして8階層に進んだ途端手も足も出なくなんだよ!?」
情けないことに俺は泣いていた。号泣だ。大人になれた、ジョン子さんを守れる存在になれた、そんな今までの思い上がりがただただ胸にのしかかってきて、みっともなく泣くことしか出来なかった。
「……俺、冒険者を辞めた方がいいのかもな」
「は……? おい、お前何言って」
「守りたい人も守れない、足手纏いの俺がジョン子さんの側にいても何にもならない……俺の弱さがジョン子さんを殺すことになるかもしれない……そんなの、そんなの耐えられるわけ……」
「テメェ、ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞ!」
頬に鈍い痛みが走った。視界がぐらつく。
殴られた、それを頭が理解する前にハイドンに襟首を掴まれた。
「腑抜けてんじゃねぇぞ! 女が腐ったようなこと言いやがって……根性叩き直してやる! 剣を抜け!」
ハイドンにぶん投げられ、酒場の中心に落ちる。
いつの間にかテーブルやイスは退かされ、広い空間が作られていた。
「ハイドン、俺も加勢するぜ」
「聞いててイライラが収まらねぇ。一発殴らせろや」
「俺達のアイドルを独占してる怨みを存分にぶつけてやるよ」
「こりゃあいい、ホープ常連全員で完膚無きまでに叩きのめしてやらぁ!」
盛り上がり好き勝手言う客たち。何故か店の人たちも静観の構えをとっている。
「おいふざけんな! 」
「ふざけんなはこっちの台詞だ! 行くぞ野郎ども!」
「「「「「おおおおおおおおッ!」」」」」
咆哮を上げ、襲いかかってくる冒険者達。有無を言わせぬ状況に、俺も咄嗟に剣を抜くしか無かった。
◇
「ま、マジかよ……」
「40人はいたんだぜ……いや数えてねぇけどよ……」
「それを無傷で……」
積み重なる冒険者達の山。ようやく攻撃の手が止み、大きく息を吐き、剣を鞘に収める。一応全員峰打ちに留めた。打撲とかは知らないけれど。
「酔っ払い相手に勝っても自慢になんねぇよ」
無駄な疲労感に重たい気分もより強くなった気がする。
「暴れてすみません……」
「別にいいさ」
店主のおばちゃんに頭を下げると、女将さんは苦笑しながらも俺の食事代だけ請求してきた。悪いとは思ったが、俺も余裕がある訳じゃないので、それに従い代金を手渡す。
「はい確かに。まあ今回はこいつらから仕掛けたんだから、あんたには目をつぶってやるけどさ」
苦笑から一転、威圧感のある睨みを利かせた形相を浮かべ放たれた、
「あの子、泣かせたら承知しないよ」
その言葉にはただ俺も黙って頷くしかなかった。
◇
暫く宛もなく歩いていたが、最初に比べて身体が軽くなっている感じがした。
好き勝手吐き出して、暴れたからだろうか。さっきは冷たくしてしまったけれどハイドンたちに少し感謝した方がいいかもしれない。伝えたらつけあがるだろうから言わないけれど。
それでも、頭がクリアになればなるだけ、気持ちは沈んでいく。
ただジョン子さんの足を引っ張るだけの自分。もしも、あの時ジョン子さんの隣にいたのが俺じゃなくて……そんな想像ばかりして、気がつけばジョン子さんがいるであろう魔術実践場に来ていた。
ここは街中で魔術の訓練をするために建てられた施設で、魔術を使った競技会や免許取得のための試験にも使われる場所だ。ジョン子さんは8階層のボスとの戦いの後毎日ここに来ているらしい。自分の魔術を鍛えるために。
2階の観客席に上り、場内を見渡すと隅の方にいるジョン子さんがいた。
今までだったら、ジョン子さんを見つけると暖かな気分になれていたのに、今では苦しくなる。彼女は俺とは違う。本物の天才だ。支援魔術に秀でたサポーターとしてだけじゃなく、攻撃術師としての才能もこの2年間で開花させつつある。
(彼女の才能を、俺なんかが潰すわけには……潰してはいけないんだ)
握る拳が痛みを発する。遠くに見えるジョン子さんの、疲労を感じさせつつも充実感のある表情を見ると、立ち止まってしまった俺からは実際の距離より遥か遠くに離れてしまったように思えた。
純真な彼女の姿を見ていると思う。俺はジョン子さんを守ることで優越感に浸りたかっただけなんじゃないだろうか。サポーターの彼女がいなければ俺はきっと1階層でも迷ってしまうだろう。探索で敵わないから、戦闘で自分の力を誇示しようとしていただけなんじゃないか。
彼女に頼られたかった。頼るだけは嫌だった。ずっと助けて貰ってきたんだ。今度は助けたい、そう思ってたのに……そんな思考ばかりが頭を駆け巡って――
「……さん」
ふと、暖かな感じがした。
「レオさん」
「んん……」
気が付けば辺りは暗くなっていた。必要最低限の照明が照らすだけで、場内で訓練している者ももういない。
ふと、身体の片側が暖かなことに気が付いた。
「じょ、ジョン子さん!?」
「ふふ、おはようございます。レオさん」
いつの間にか眠っていたらしい。あろうことかジョン子さんにもたれかかって。彼女の綺麗な顔がすぐ近くにあって慌てて姿勢を正す。
「観客席にいるレオさんが見えたのですぐに来たら眠ってて……気持ちよさそうだったので起こさずに待ってました」
ふんわりとした笑顔を浮かべそう補足してくれるジョン子さん。当然だがしっかりと寝顔は見られてしまったらしい。
「そうだ、聞いてください! 実はですね!」
「じょ、ジョン子さん。取りあえずここを出ないか。待たせた俺が言うのもあれだけど、もう閉館時間っぽいし……」
「あっ、そうですね。それじゃあホープに行きますか?」
「ホープはちょっと……」
あれだけ暴れてすぐに顔を出すのは色々と気まずい。
「もしよかったら、行きたい場所があるんだ」
そう口に出したものの、元々行きたい場所があったわけじゃない。ホープを避けるために咄嗟に出た言葉だ。
ただ、不思議とそれを口にした瞬間に一つ、場所が浮かんだ。
「はい。レオさんが行きたいところならどこへでも」
相変わらずジョン子さんは思わせぶりなことを言うのが上手い。
「少し歩くけれど」
「大丈夫ですっ」
ニコニコと、ご機嫌そうな笑顔を浮かべるジョン子さんを引き連れ向かった先は、カムイのパーティーを抜けたあの日ジョン子さんと話した場所、そして俺たちが出会った場所でもある、ダンジョンに続く階段だった。
普段何気なく通り過ぎる場所だが、こうして目的地にしてみると何とも感慨深い。それはジョン子さんも同じようで、遠慮がちに俺の服の裾を掴んでくる。
「レオさん?」
「少し、ジョン子さんと話がしたかったんだ。座ろう」
普通に笑顔を浮かべようとしたつもりだったけれど、ジョン子さんの顔が曇った。どうやら、上手く笑えず余計な不安を抱かせてしまったみたいだった。
「最近、ゆっくり話せていなかったから」
そうとってつけたような言葉を加え、座る。そんな俺にピッタリと体をくっつけ、ジョン子さんも隣に腰を掛けた。小さい体ながら暖かくて、いつも思うが凄い存在感だ。
「こうしてここで話したのは2年前のあの日以来か」
「そうですね」
感慨深げにジョン子さんが相槌を打つ。あの時と同じように、夜のアラベスクが眼前に広がっている。
けれどあの時と違ってジョン子さんに弱気なところは見られない。
ジョン子さんは変わった。
ずっとサポーターとして、パーティーの影として過ごしていた頃より、苦手でも攻撃魔術を勉強し、戦闘の場にも立つようになって自信を手に入れたみたいだ。ゆっくり、歩くような速さだったけれど、一歩一歩前に進むことは精神面にも大きな影響を与えたらしい。
あの頃からも憧れの存在だったジョン子さんは、今ではもっと立派になって……やっぱり遠くなってしまったように感じる。
「そういえば、話したいことがあったんだよな?」
そんな暗い感情を出さないように、努めて平然と、彼女に話を振った。
「あ、はい! えっと、実は私ようやく上級魔術が使えるようになったんです!」
「え、本当に!?」
「といっても、まだ一つだけですが……」
苦笑するジョン子さん。
けれどこれは凄いことだ。
俺も専門外で詳しいことは知らないけれど、魔術師にとって上級に属する魔術を使えることは一つの大きな壁となるらしい。それこそ、魔術師としてパーティーの中核を担えるかどうかの分かれ目で、上級魔術を習得したジョン子さんは、魔術師として一人前になったということになる。
元々、他パーティーからも引く手数多だったサポーターとしての技量に加えて攻撃魔術での戦闘もこなせるとなれば、それはもう……
「やっぱりすごいな、ジョン子さんは」
「いえ、これもサラさんのおかげで……」
「サラ? サラってあのサラ?」
「はい」
なんと、ここ最近、ジョン子さんはかつて同じパーティーに属していた攻撃術師のサラに手解きを受けていたらしい。
「あのサラがねぇ……」
「偶然ですけどね、サラさん達、今15階層で立ち往生しているみたいで」
「15……」
途轍もない差だ。数字にすれば7階層突破の俺たちの2倍である14階層突破。けれども、単純にそれで測れることでは無い。当然俺たちのいる場所に比べて、サラたち……カムイのいる場所はもっと過酷な筈だ。
彼女らはそこまで進んでいる。ジョン子さんもメキメキと力を付けている。それなのに、俺は……
「レオさん?」
「実は……ジョン子さんに引き抜きの話が来てるんだ」
「え……?」
ああ、言った。言ってしまった。
「エクリプスっていう、名付きのパーティーだ。聞いたことあるだろ?」
「は、はい。今一番最奥に近いと言われる大型のパーティーですよね……」
名付き。ダンジョンに挑むパーティーは俺たちみたいな少人数パーティーから大型のところまで数多あるが、誰からも知られる有力パーティーには代表者の名前だけじゃなく専用の名前が付けられる。エクリプスは名付きの中でもさらに有名な、所謂最強パーティーというやつだ。
「あそこ、幾つか子分のパーティーを持っていて、そこの一つがこの間ダンジョン攻略の時に俺たちと被ったらしい。そこでジョン子さんのサポーター能力を見て、その話を聞いたエクリプスの人たちが是非って思ったんだと。丁度サポーターを探していたらしい」
引き抜きは正面から行うならリーダーを通すのが道理。それで俺に声を掛けてきたということだ。
「私なんかに……何か冗談ですよね?」
「冗談なんて言うもんか」
冗談だったら良かったのに。そんな思考が浮かんだことが恥ずかしかった。
ジョン子さんが特別だなんて知っていたことだ。そんな彼女が認められたことは俺にとっても自分のことのように嬉しい筈なのに。
「俺は……行くべきだと思う」
「え……?」
「ジョン子さんが目指しているのはダンジョンの最奥だろ? 悔しいけど、俺じゃ力不足だ」
「何言ってるんですか、レオさん!力不足なんてそんなわけ無いです!」
「8階層のボスにさえ手も足も出ない俺に、最奥なんてとても無理だ……俺じゃあ、ジョン子さんは守れない。一緒に歩めない……」
言ってしまえばこの苦しみからも解放されると思っていた。伝えてしまえば諦めが付くと思っていた。けれど、ただ苦しくなるばかりだ。
嫌だ、一緒にいたい。そう口に出してしまいたい。
けれどもそれでは彼女の目的は果たせない。ただ足を引っ張るだけ。
我儘が言えるなら、ジョン子さんと一緒にいたかった。一緒に冒険していたかった。思考錯誤して、一回の収入に一喜一憂して、ホープで飯を食いながら反省会をして、それがずっと続けば……そう思っていた。
分かっている。そんなものは俺の自分勝手な考えだ。ジョン子さんのことを思うなら、想うからこそ俺は彼女の傍を誰かに譲るべきなんだ。俺なんかよりよっぽど優秀で、彼女を守り、共に歩める人に。だから。
「だから、ジョン子さん」
ジョン子さんを見ようと顔を向ける。けれど、彼女の姿はぼやけてしまっていた。まともに見れるのはこれが最後になるかもしれないのに。少しでも彼女を目に焼き付けていたいのに。
どうして俺は強くなれなかったんだろう。どうして俺は弱いままなんだろう。どうして俺は……彼女に出会ってしまったんだろう。
「パーティーを解散しよう」
その言葉にジョン子さんがどんな反応をしているかは、もう溢れる涙が隠してしまって碌に見えなかった。
けれど、たとえジョン子さんがどんな反応をしていても、俺にはどうすることも出来ない。
その言葉に彼女が喜んでいたら悲しさが増すだけだ。もしもつらそうにしてくれていても、彼女をそんな気持ちにした俺への自己嫌悪と、それでも彼女の為を思うなら諦めなければいけないという悲しみで結局つらくなるだけだから。
ジョン子さんは口を開かなかった。何かを考えているようだった。
幻滅されただろうか。守ると息巻いていた男が、わんわんと泣き喚いて。
膝を抱え、腕に顔を埋めた俺にはもうジョン子さんの姿を見ることは出来なかった。一度そうしてしまえばもう、顔を上げるのが怖かった。
途轍もなく長い、地獄のような沈黙。
そして、
「一晩、考えさせてくれませんか……?」
ジョン子さんはただ一言、そう言った。その声は震えているようだった。
否定してほしかった。傍にいたいと言って欲しかった。そんな情けなく卑怯な考えを持っていたと自覚して死にたくなった。
俺は、それからジョン子さんと一緒に世話になっている宿屋に戻ってきた。同じ宿の隣同士の部屋を借りている関係上、帰り道も一緒で、俺たちは言葉を交わさないまま並んで帰ってきた。
「おい、どうした二人とも!? おい、お前!」
宿屋のおやっさんが俺たちを見て慌てて奥さんを呼ぶ。
「なんだいあんた……って、ジョン子ちゃん!? ちょっと、レオ、何があったのさ!?」
責めるような声を投げられ、けれども説明することは俺のちっぽけなプライドが許さず、自分の部屋に逃げ帰った。
持ち物を床に投げ出し、そのままベッドに倒れこむ。安宿故に堅いベッドだけれど、横になってしまえば睡魔は一気に襲ってきて、俺の意識は抵抗出来ずにただ刈り取られた。
◇
夢を見ている。
懐かしく、幸せな夢だ。
俺がいて、彼女がいる。それだけの日々。
俺にとってそれは当たり前のことなのに、どうしてかつらく、悲しくなる。
覚めないで欲しい。このままずっとここにいたい。夢から覚めてしまったら俺は……彼女は……
「起きてくださいっ! 朝ですよーっ!」
「うわっ!?」
その大声に一気に目が覚めた。跳び起きた俺をベッドの上で仁王立ちして見下ろしてきているのはジョン子さんだった。
「おはようございます、レオさん」
「おはよう……って、ジョン子さん。その恰好は?」
ジョン子さんの恰好は冒険用の装備だった。彼女が愛用しているフード付きのローブを身に纏い、冒険用のアイテムが詰まったリュックを背負っている。腰には魔術師としての役割を担い始めてからずっと使っているワンドが差さっていた。
そして、普段は掛けていない黒縁のメガネをかけている。たしか目は悪くない筈だったけれど……
「レオさんも早く着替えてください! 今日はすぐに冒険に行くんですから!」
「冒険? えっと、状況が」
「言ったじゃないですか。一晩考えさせてくださいって。私考えました。だからダンジョンなんです」
「ジョン子さん?」
「昨日言いたい放題言ったんですから、今度は私が伝える番です。だから」
もう一度、一緒にダンジョンに行きましょう。
その言葉に逆らえる訳が無かった。
ボス部屋を目指し、8階層を進む。入口からボス部屋までのマッピングは済んでいるため、道草は食わずに真っすぐ。途中出てくるモンスターの処理は俺の役目だ。
攻撃は鋭いが、避ければ隙も大きい。後は何度も試して発見した弱点に剣を打ち込むだけ。それだけで処理できる。
楽勝。けれども気持ちは全く晴れない。むしろ重くなるばかりだ。
(雑魚はこんなに簡単に倒せるのに、どうして)
自分に伸びしろが見えない。今の立ち回りに不満は無い。不満が無いってことは改善できる方法も浮かばないってことだ。
「流石です、レオさん!」
「……進もう」
どうしてもう一度ジョン子さんがここに俺を連れて来たのかは分からない。
それでもダンジョンに入ったからには進まなければいけない。たとえ、敵わないと分かっている相手に立ち向かうことになっても。
「この先がボス部屋です」
もう言葉は返せなかった。じっとりと嫌な汗が背中を伝う。
「くそ……っ」
広場に出た。あのボスが現れる広場に。
心臓が爆発しそうなくらい鼓動する。呼吸が荒くなる。
「レオさん、その、私……」
――グオオオオオオオオオオオオオオッ
くぐもった咆哮。
「来やがった……」
地面から湧き出てくる巨大な影、それは鎧を纏った人の姿をしていた。
体長5メートルはある巨体。動きは鈍重だが、手に持った自身の全長ほどある大剣による一撃を食らえば一溜まりも無いだろう。
「ジョン子さん、下がれ!」
前に出て、右足の付け根を狙って剣を振るう。が、
――ガキンッ!
金属が金属を弾く音。手ごたえが全くない。効いていないとはっきり分かる音が響いた。
実際、鎧は何事も無いかのように俺を見下ろし、大剣を突き立てようとしてきた。俺の持つ人間サイズの、しかも片手剣ではまともに受ければ一発でへし折られるだろう。
「っ!」
咄嗟に鎧の足を蹴り、後方へ飛ぶ。先程まで俺がいた場所に大剣が突き刺さった。今回は咄嗟とはいえ問題無く避けられたが、
(全く効かないとなれば俺の攻撃自体が隙になる。捉えられるのは時間の問題だ)
どうする。どうすればいい。俺はどうすれば。
「レオさんっ!」
ジョン子さんの声が響いた。
「レオさん、このボスの弱点は鎧の中のコアです! コアは魔術耐性が低く、今の私の攻撃術なら破壊できると思います! だからレオさん……」
苦し気に、泣きそうな顔で、ジョン子さんは叫んだ。
「一度、一度だけでいいんです! あの鎧を砕いてください!」
「砕くったって、俺の剣は……」
「だから、一撃に力を込めるんです! 時間を稼ぐための剣じゃない、全身全霊の一撃を……その時間は私がっ」
――グオオオオオオオオオオオオオオッ
咆哮。しまった!
鎧のやつが、声を上げていたジョン子さんを標的にした。
「くそっ、間に合えっ!」
身体ごと飛び込んだ。かろうじてジョン子さんを抱きかかえ、寸でのところで大剣を回避する。
「レオさんっ」
「外すぞっ!」
ジョン子さんはアイテムや拾った素材をストックするリュックを背負っている。普段はいいが、こうも狙われればそれはただの重荷でしかない。固定するためのベルトを外し、リュックを隅に向かって投げた。これでジョン子さんの所持品は魔術を使うのに使用するワンドだけになる。
――グオオオオオオオオオオオオオオッ
「この、糞鎧めっ!」
今は逃げるしかない。ジョン子さんを抱きかかえ、ただただその猛攻を走ってかわす。
「レオさん、相手はモンスターです! 体力は無尽蔵、いつかこちらが追い詰められます!」
「分かってる。でも、あの鎧を砕くなんて、俺には……」
「出来ます!」
ジョン子さんは真っすぐ俺を見つめてきた。
「レオさんがずっと努力していたこと、私は知っています。レオさんが、レオさんの剣があんなのに負けるわけがありません!」
「ジョン子さん……」
「ずっと、今もレオさんは私を守ってくれて……けれど今は私だってレオさんを守れます!」
力強い目。
見惚れそうになるが、そんなことをしていてはたちまちあの大剣で肉塊にされるだろう。これが戦場じゃ無ければ……などと、考えられるだけ余裕が出てきているのかもしれない。
戦場でこんな気分になるなんて……もしかしたらジョン子さんと話しているから?
思えば、いつも俺は彼女と一緒に戦うと言っていながら、彼女を危険から遠ざけ、俺だけが前に出るという立ち回りをしてきた。
これまでの階層では、ボスとはいえカムイ達と共に倒したことのある敵だ。立ち回りは熟知している。俺が前に出て隙を作り、ジョン子さんがそこに攻撃術を打ち込む。戦法もカムイ達と一緒に旅をしていた頃と何も変わっていない。
俺たちの編成は変わっても、過去のイメージを再現しているだけ。そこで生まれる新たな会話なんて何も無くて。
(俺は、本当にジョン子さんと一緒に戦ってきたって言えるのか?)
ずっと、心のどこかでジョン子さんを下に見ていたのか? 戦いはあくまで自分の領域だと、危険を背負うのは俺だけでいいと酔いしれて。彼女はあくまでサポーターが本業だと。
「レオさん。どうか私に背中を預けてください。貴方を支えさせてください」
俺はずっと、ジョン子さんのこの言葉にもう十分支えて貰っていると返していた。けれど、もしもそれでもどかしい思いを抱かせていたのなら。彼女を苦しめていたというのなら。
「……分かった」
任せてみよう。頼ってみよう。
ジョン子さんは、俺がずっと努力をしていたことを知っているって言ってくれた。
けれど、俺だってジョン子さんがいつもどれだけ努力しているか知っている。彼女のことを一番知っているのは俺だ。だったら俺が信じなくて誰が信じるっていうんだ。
「頼む。俺があの鎧をぶち破るために、力を貸してくれ!」
「はい!」
ジョン子さんを下ろし、鎧に向き合う。
「まったく、あの敵には俺の剣は通用してこなかったのに、それでも砕けって戦略もクソもないな」
「レオさんなら必ず出来るって信じていますから。そのために必要な時間は私がいくらでも稼ぎます」
「……頼もしいよ」
ジョン子さんが一歩前に出て、俺が下がる。
「フレアっ!」
ジョン子さんが得意とする無属性の初級魔術。白い光の魔球がジョン子さんの体から浮き出て鎧に突撃した。
――グオオオオオオオオオオオオオオッ
唸り声。だが、今までと違いどこか怯んだような。
効いているのか? 鎧の動きが鈍くなっている。
「これなら……」
剣を構え、力を込める。
今まで、カムイたちとパーティーを組んでいた頃から、俺は常に前線に立ち、剣を振るってきた。それが俺の役割。
一撃に全てを込める、そんなことやる場面は無かった。
(俺に出来るのか?)
あの鎧をぶち破るだけの力を、ぶっつけ本番で出せるのか?
絶対的な自信なんてない。けれど、前に出て必死に攻撃術を打ち続けるジョン子さんの背中が見える。
ジョン子さんもずっとこんな思いをしてきたのだろうか。
もどかしい。苦しい。けれども同時にこの胸に生まれる暖かさはなんだ。絶対に失敗できないというプレッシャーより、絶対に成功させるという決意が膨らむ。ジョン子さんが俺を信じて耐えてくれている、その想いが俺の中で力に変わる。
「これは……剣気……!?」
魔術師の素養、魔力を持たない俺の剣が光を放ち始めた。
それは俺たち剣士の間では剣気と呼ばれる現象だった。闘志が可視化される現象。俺も見るのは初めてだ。もしかしたら、俺の願望が生んだ、ただの気休め程度の幻覚かもしれない。
けれど、身体が軽い。ジョン子さんの背中が俺に力を与えてくれる。今だったら、なんだってやれそうだ。
「ジョン子さんっ!」
「レオさんっ!」
入れ替わるように前に出る。次は俺の番だっ!
――グオオオオオオオオオオオオオオッ
「叫んでろっ!」
鎧が大剣を振り下ろしてくる。
先ほどまでは脅威でしかなかったそれも、今ならただの虚栄のように感じられる。負ける気がしない!
「うおおおおおおおおおおおお!」
剣を振りぬいた。
今までは恐怖から避け続けていた大剣と俺の剣がぶつかり合う。
――ガギッ!
何か金属が砕ける音。
――グオオオオオオオオオオオオオオッ
その唸り声は悲鳴のように聞こえた。
鎧の持つ大剣が俺の剣に削られ、砕かれ、へし折れる。
だが、それで終わりじゃない。
「こいつを喰らえええええええええええええ!」
剣気に導かれるまま、身体が勝手に動き、一つの剣閃を描いた。
「砕けろおおおおおおおおおおおおおお!」
俺の剣が一筋の衝撃波を放つ。斬撃だけが宙を飛び、空間を切り裂く、魔術的な――いや、御伽噺の中の魔法のような光景。
「竜……」
伝記だけに残る存在。全ての頂点に存在すると言われる神の如き生物。
その剣気の残影はその竜のような姿をしていた。
――グオ、オ、オ、オ、オ
今まで、たとえジョン子さんの攻撃術に怯まされても、剣を折られても一定に響いていた鎧の呻き声が初めてその音色を変える。
俺の撃ち放った斬撃は凄まじい轟音を放ち、その無敵だと思っていた鎧を文字通り削り取っていく。そしてその先に、
「あれは……ジョン子さん!!」
「天撃よ、穿て……シューティングスター!!」
俺の声に応え、いや、俺が前に出た時から俺があの鎧を砕くと信じて魔力を高めていたジョン子さんが、一筋の眩い光を放った。
初めて見る、まるで流れ星のような美しい光。
それは確かに鎧の紅いコアを打ち抜き、消し炭も残さず消滅させた。
静寂。先程までのことがまるで嘘みたいな……
「やった、のか……」
「レオさん! 凄いです! カッコいいです!」
呆然と、膝をつく俺にジョン子さんが抱き着いてきた。それでも俺は実感が湧かなくて。
「レオさん、私達、無事です。生きてます」
そうだ。生きている。俺たちは勝ったんだ。俺だけじゃない、ジョン子さんだけでもない。
俺たち、二人の力で。
「ジョン子さん!」
「ひゃっ!」
ただ、抱きしめたかった。小柄な彼女では苦しいかもしれない。それでも抱きしめずにはいられなかった。彼女の温もりを感じたかった。
「やった、俺達……勝てたんだ……」
「そうですよ。私達の、二人の勝利です」
そんな俺をジョン子さんも力強く抱きしめ返してくれた。
「もう二度と、解散だなんて言わないでください。レオさん言ってくれたじゃないですか。『一緒に強くなろう』って」
「ジョン子さん……」
「ダンジョンの最奥に行くことが確かに私の目的……使命です。でも、それ以上に。私はレオさんと一緒にいたい。レオさんと一緒が私にとって一番大事なんです」
暖かい。体温も言葉も、言葉に現れない思いも、ジョン子さんの全部が俺の体に染み渡っていくようだった。
「でも、レオさんと一緒ならいつか二人でこのダンジョンの最奥に行けるって思うんです」
「俺たち、二人なら……うん、そうだな」
まだ第8層を乗り越えたばかり。前人未踏のダンジョンの最深部なんて後どれだけ進めばいいかまるで想像もつかないけれど。
「ジョン子さん、ごめん。もう二度と解散しようなんて言わない。壁にぶつかっても、二人で乗り越えよう。だから、こんな俺だけれどずっと傍にいて欲しい」
「レオさん……当たり前です! 離れろって言われても絶対離れてあげませんから!」
幸せそうに、甘えるようにそう言ってくれるジョン子さん。
それが嬉しくて、きっと彼女も同じ気持ちで、俺たちはお互いの存在を確かめ合うように暫くの間、ただお互いに抱きしめ合っていた。
◇
8階層を突破し、9階層の入り口のワープポイントを使って入口に戻る。これで次からは9階層からスタート出来るようになった。
地上に出ると、気の緩みからかお互いのお腹からグーっという大きな音が鳴った。
男の俺はいいけれど、女の子のジョン子さんは恥ずかしいのか、顔を赤くして俯いてしまう。
「お腹、減りました……」
「俺もだ。なんか食べるか!」
飯を食うとなれば、安くて良質な食事がとれるホープになる。
今日はある意味記念の日なのだから少しくらい奮発してもと思ったのだが、ジョン子さんがホープがいいと言ったので俺としても断る理由は無い。常連客の連中にも謝らないといけないしな。
「そういえば、ジョン子さん」
「はい?」
「どうして今日はメガネかけてるんだ? いや、似合ってるとは思うけれど……」
「あ、その、これは……」
俺としては率直な疑問だったのだが、まるで聞いてはいけないことだったかのように気まずい反応が返ってくる。
「あ、ごめん、言いづらいことなら」
「違うんです! えっと……」
ジョン子さんがメガネを外す。メガネを掛けること自体に意味があったのか? と思ってマジマジと顔を見ると、僅かに目元が赤らんでいるのが分かった。
「昨日、あの後泣きすぎて腫れてしまったので、隠したかったんです……」
消え入りそうな小さな声。
「ご、ごめん……」
「もう、いいですよ。撤回してくれたんですから」
そうニッコリと笑う。自分が泣くのに必死で彼女の泣き顔は見れなかったけれど、けれどやっぱりジョン子さんには笑顔が似合う。
つい、顔が熱くなる。けれど、なんだかそれが恥ずかしくて、俺は彼女から顔を反らし別の話題を探した。
「そういえばさ」
「はい?」
「もしも、結局俺があの鎧を倒せなかったら。どうするつもりだったんだ?」
「レオさんなら絶対出来るって信じてましたから」
「それは、嬉しいけど……」
気恥ずかしくなって頬を掻く。
「それでも、もしもあそこで死ぬことになっても、レオさんと一緒なら私は……」
「ジョン子さん、何か言った?」
「いいえ、独り言です!」
「あ、そう」
少し気になったけれど、独り言ぐらい誰でも呟く。
気にするのは野暮ってもんだろう。
◇
ホープに着くと俺とジョン子さんが二人揃っているのを見て、店員、客共に騒然とした。
ジョン子さんは昨日のことを知らないからあたふたと戸惑っていたけれど、俺としては気まずくて取りあえず頭を下げる。
「おい、レオ! なんかお前、昨日よりいい顔してんじゃねぇか!」
そう言って酒を片手に肩を組んできたのは昨日ボコボコにしてしまったハイドンだった。
見ればハイドンの腕や顔にはまだ打ち身による痣が残っていた。
「ごめん、ハイドン。俺……」
「いいってことよ。どうやら壁は突破したみてぇだな?」
「ああ。なんとかな」
「これも俺たちのおかげか!? ハハハハハ!」
「えっと……」
確かに彼らには陰鬱とした気分を少し楽にするきっかけは作ってもらったが、実際に立ち直れたのは身勝手だった俺をジョン子さんがそれでも見放さないでくれたからで。
けれど、彼らが俺を思って襲ってきたのは何となく分かるし、そんな彼らに違うと言うのは流石に酷い気が……
「何かあったんですか?」
ジョン子さんが俺とハイドンのやり取りを聞いて首を傾げる。
いや、でもはっきり言うべきだ。ジョン子さんの名誉の為に。
「いや、俺が自信を取り戻せたのはジョン子さんのおかげだ。ハイドン達には悪いけど……」
「おお……そうか……そうだよな……ウオオオオオ……」
「何故泣く!?」
「やるじゃないさ……」
「おばちゃんまで!?」
何故か盛り上がる店内。今度はジョン子さんと一緒に俺も困惑していたが、それも直ぐに雰囲気に飲まれるように笑いに変わった。
「やっぱり、賑やかですね!」
「まぁ……ジョン子さんが楽しいならいっか。おばちゃん、適当におすすめを」
「ああ……とびっきりのを用意するよぉ!」
そこからは店ぐるみでの大宴会になった。どうしてこうなったかは分からないけれど、ジョン子さんは楽しそうに笑っているし、俺も心地の良い気分だ。散々殴ってしまったけれど、みんなもう気にしていないらしい。まぁいずれ、何らかの形で謝罪しようとは思うけれど。
でも、とにかく今は楽しもう。今日の勝利を祝って。そして、明日からのジョン子さんとの日々の糧にするために。
「んで、レオ! ジョン子ちゃんと結婚するのはいつだよ?」
「だから俺とジョン子さんはそういう関係じゃねーって言ってんだろ! って、痛っ!? 誰だ今蹴ったの!?」
「……知りません」
「ってジョン子さん? なんで少し怒ってるの?」
「知りませんっ!」
その後、何故か頬を膨らまして拗ねてしまったジョン子さんを宥めるのは大変だった。
◇
レオ達の騒ぐホープの一角にて、昨日もここで飲みレオに畳まれた冒険者たちが会話をしていた。
「しかしよぉ、あいつら8階層突破したらしいぜ」
「もしかして二人でか? 確かあそこのボスって」
「ああ、斬撃を無効にする鎧のモンスターだぜ……レオのやつ、それを剣で砕いたらしい」
「あれって、打撃武器で鎧に穴空けて隙間から少しずつ攻撃術でコアを削るっていうのがセオリーだよな?」
「あの二人の話じゃ斬撃で鎧を破壊しきったらしい」
「相変わらず化け物じみてるな、レオのやつ……」
ぐびりと酒で喉を潤し、一拍間を置く男。彼らの視線の先にはジョン子を怒らせたらしいレオが必死で頭を下げているのが見える。
「でもよぉ」
「ん?」
「あのジョン子ちゃんが斬撃が効かないって情報を仕入れて無いと思うか?」
「あ……」
「思うんだけどよ」
ジョン子に許され嬉しそうに笑うレオと、そんなレオに人目も憚らず抱き着くジョン子を見て、苦笑する男。
「鈍感男と策士の嬢ちゃん……あいつら冒険だと相性いいけど、そっち方面では苦労しそうだな、特にレオが」
「確かに……まぁ、それが面白いんだけどな!」
「おうよっ! 乾杯!」
当然、そんな会話が交わされていることをレオ達が知る由も無かった。
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