リウとマーナ
翌朝、マグナスはリウを連れて町の方へとやってきた。
「せっかくだしパフェを食べていくか?」
「……いいの?」
「久々だからな。リウも甘いものは好きだろう?」
ものでつることしか出来ない自分を歯がゆく思いながら、それでもリウが笑顔になってくれてホッとする。
「マグナスさま、早く行くの!」
リウが手を引っ張ってくる。
「えへへっ、マグナスさまと二人でパフェなの……」
嬉しそうにはにかむリウ。そんな彼女に引きずられながら喫茶店にたどり着く。
「いらっしゃいませー!」
お店に入ると金髪の少女に出迎えられる。
リウより二、三歳年上だろうか? 彼女より少しだけ背が高い可愛らしいフリルがたくさんついた給仕服を着ている少女……。こんな子も働いているんだな。それにこの気配、魔族か。
リウみたいに角を見せているわけでもなく、うまく隠しているようだ。ぱっと見ただけでは魔族だと分からないだろう。
「マグナスさま、どうかしたの?」
不思議そうにリウが聞いてくる。さすがに扉の前で立ち尽くしているのは変だと思われても仕方ないか。
「いや、何でもない」
言葉を濁すとリウは不思議そうな顔をしていた。
そして、席に着くと迷うことなくリウはパフェを注文していた。
以前と同じようにオムレツを頼むと再び先ほどの少女を観察していた。
つい最近まではこの町にいる魔族はリウだけだった。本当にいつこの町にやってきたのだろう?
まぁリウに危害を加えようとしているわけでもないし、むしろ魔族同士と言うことで仲良くなってくれるかもしれない。それならば何かする必要はないだろう。
「それにしても魔族か……」
「きゃっ……」
小さな声で呟くと料理を運んできた少女が何もない場所でこけそうになる。
その瞬間に少女を支えると、彼女は「ありがとう」と消えそうな声で呟いてくる。
「いや、気にするな」
少女が俺のほうに視線を送ってくる。
「えっと、さっきはどうして?」
どうして自分のことが魔族だってわかったのか聞きたいのだろうか?
「まぁ、気配を見ればすぐにわかる。このあたりは慣れだな」
「えっ、そうなの!? リウには全くわからなかったよ」
リウが驚いた表情を見せてくる。
まぁ、リウならわからないだろうな。
小さく苦笑すると視線を少女へと向ける。
すると彼女も驚いた様子を浮かべていた。
「もしかして、貴方ってすごい魔法使い?」
少女が目を輝かせながら聞いてくる。
「いや、俺はただの――」
「マグナスさまはね、とってもすごいんだよ!」
言葉を遮るようにリウが笑みを浮かべる。
「そうなんだ。あっ、私マーナ。ここでウェイトレスをすることになったの。よろしくね」
マーナという少女が頭を下げてくる。
新作を公開させてもらってます。
現在週間総合2位の作品になります。
よろしければそちらも併せてどうぞ。あらすじ下のタイトルより飛べるようにしてあります。
タイトル
『転生領主の優良開拓〜前世の記憶を生かしてホワイトに努めたら、有能な人材が集まりすぎました〜』
あらすじ
元社畜の俺は過労死の末、魔族や有力貴族の領地に挟まれた弱小領主の息子に転生していた。
魔物の襲撃による両親の死で領地を引き継ぐことになったものの、領民もその騒動でいなくなってしまう。
しかしこんな危険な領地に来てくれる人なんているのだろうか?
いや、それなら求人の条件を良くすれば良いんだ。
『毎週二日の休日』『残業はなし』『安定した給料』『福利厚生』
徹底的にホワイトとなるように心がけると、Sランク冒険者や賢者、聖女、挙げ句の果てには勇者や魔王すら雇われに来てしまった。
もしかしてこの世界も意外とブラック?
よし、それなら俺が徹底したホワイトな領地を目指してやろう。