閑話リウ
リウは朝早くからマグナスに見送られてマドリー商会までやってきた。
もちろん、目的はミリファリスに料理を教わることだった。
料理対決では彼女の提案で引き分けにしてもらったものの実際は大きく引き離されていた。自分が彼女に勝てていた部分なんて何もなかった。
それでもマグナスにおいしいと言ってもらうために気合いを入れてお店の中に入っていく。
「いらっしゃいませー!」
店内に入るとミリファリスの大きな声に出迎えられて思わずビクッと肩を振るわせる。
いつもならマグナスの背中に隠れるところだが、あいにく今は一人で出てきたために何も隠れられるような場所はなかった。
「あっ、リウちゃん、早速来たんだね」
リウに向けて笑みを見せて近づいてくる。そして、何もしていないのにミリファリスは突然頭を撫で始めて嬉しそうにしていた。
「あ、あの……」
「あっ、ごめん。料理……だよね。うーん、まずは簡単なものから作ったほうがいいよね?」
ミリファリスは顎に手を当てて何を作るか考え始める。
「オムライス……、ううん、それじゃだめか。お肉の焼き加減にも失敗してたから……」
小声でぶつぶつ言うミリファリス。そして何か思いついたように言ってくる。
「そうだ、今日はスクランブルエッグにしましょうか」
「スクランブル……?」
「えぇ、まずは作って見せますね」
ミリファリスは商会の奥にある厨房へとリウを連れて行く。
そして、フライパンを温め始めたまごをボールに入れてかき混ぜていく。
たまごには塩などで味付けをして、フライパンにはバターを引く。
そして、たまごを加えるとさっとかき混ぜていき、半熟になったらそれをお皿に移し替える。
「これで完成ですよ。簡単な料理だからまずはこれから始めてみましょう」
リウにボールを渡すミリファリス。しっかりと眺めていたリウは気合いを入れてまずボールの中にたまごを割る。すると無数の殻も一緒に入ってしまう。
「だ、大丈夫ですよ。殻は取り除けば良いだけですから……」
そう言って中に入っていた殻を取り除くとリウは少し嬉しそうに微笑んだ。
「まずは混ぜる……混ぜる……」
少しぎこちない動きでたまごを混ぜていく。
慣れない手つきではなかなか混ざらないものの時間さえかければしっかりと混ざってくれる。そして、味付けにうつるが……。
「えいっ!」
目を瞑ってとりあえず掴んだ塩をそのままボールへ放り込む。明らかにその量は多めだったが、とりあえずまずは完成させることなので料理を続けさせる。
「次はフライパン……」
温めたフライパンにたまごを加えてかき混ぜていく。そして、半熟になったタイミングでお皿に移そうとするが、少しもたついてしまってたまごは固くなってしまう。
「ミリフさんのと何か違うの……」
少し残念そうな顔をするリウ。
「まぁ初めてですもんね。焦がしていないだけマシですよ」
そう言いながらフォークを準備してくれるミリファリス。
「それじゃあ食べましょうか?」
「うんっ」
自分が作った料理、食べてみないとわからないこともあるだろう。
早速自分が作ったスクランブルエッグを口に入れるリウだが、すぐにその顔が歪む。
「……しょっぱい」
「あははっ……、塩を入れすぎましたね」
苦笑をするミリファリス。まぁ目を閉じながら塩を入れていたから仕方ないことでもあるだろう。
「……むぅ、もう一回作るの」
不服そうなリウはもう一度ボールを手に取っていた。
「わかりました。できるまでやりましょうね」
ミリファリスもここまで来たらと覚悟を決めてリウの後ろに立った。
それから数時間。ようやくまともなスクランブルエッグができあがった。
ミリファリスは試食のしすぎですでにお腹が苦しいレベルだった。
ただ、リウの満足そうな表情を見るとそれだけで癒やされてしまう。
「マグナスさまに渡してくるの」
喜んで走って行くリウ。それをミリファリスは手を振って見送っていた。
新作が日間ランキング14位。ジャンル別7位まであがりました。
これも応援のたまものだと思っています。今後ともよろしくお願いします。
また、まだ読んでいない方はこれを機によろしくお願いします。
『タイトル』
魔法が使えないと実家を追い出されたけど、ポーションだけで成り上がる
『あらすじ』
辺境にある男爵家の五男に産まれたレフィ。
魔法こそ全てという世界でレフィは魔法のスキルを持たず、ポーションを生み出す力しか持っていなかった。
「魔法スキルを持たないお前なんかもううちの子じゃない!!」
両親に男爵家を追い出されるレフィ。
ただ、両親は知らなかった。
ポーションを生み出す能力が『最高の攻撃力を誇る爆発薬』『どんな攻撃も防ぐ防御薬』『どんな傷や病気すらも一瞬で直してしまう回復薬』等、どんな効果を持つポーションでも作ることができる能力だったことを……。
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