掃除(2)
そして、時間はすでに昼を回っていた。
さすがに掃除をしていたら余計に散らかってしまった……なんて言ったらリウが怒ってしまうだろう。
最近やたら楽しそうに家の掃除をしている彼女を見かけるようになったし、家事が楽しくなってきたのかもしれない。そんな彼女にこの書斎の惨状を見られたら……間違いなくこの書類の山は燃えるゴミ扱いされるだろう。
と、とりあえずどこかにかたづけないと……。散らばる紙を積み上げて部屋の隅に寄せておく。するとそれだけでこの部屋は片付いたような気がしてきた。
実際はただ端に寄せただけで何の解決になったわけでもないのだが――。
それを繰り返していくと床に散らかっていた紙は全て一つの高い山となっていた。
マグナスの身長ほどある紙の山……さすがに積み上げすぎたようだが、何もしないより良いだろう。
ただ、片付けをしていると興味深い本が出てきて読み込んでしまう。
そんなことをしていると下の部屋からリウの声が響いてくる。
「マグナスさまー、ただいまー。お昼できたよー!」
どうやらリウが帰ってきたようで、マグナスを探してこの部屋に来る足音が大きくなってくる。
「あぁ、すぐに行く!」
マグナスは返事をして、部屋を出ようとするとなぜか先ほど片付けたはずの紙の山が再び足元にできていた。
いや、部屋の隅にある紙の山は健在だ。となるとこの山は……?
中を見てみるとそこには魔法に対する考察が書かれていた。どうやら先ほど読んでいた本の考察を紙に落としたものだった。
もしかするとこの再び足の踏み場がなくなるほど散らかされた紙は全部?
何枚か拾い上げてみると同じように魔法に対する考察が書かれていたことからこれは全てそれについて書かれているのだとわかる。
せっかく頑張って片付けたのに、再び散らかったことを見てマグナスはただ乾いた笑みを浮かべることしかできなかった。
ただ、あまりにマグナスが食堂に来るのが遅かったものだからリウが書斎までやってきて、その中を見て絶句していた。
「ま、ぐ、な、す、さま?」
笑みを浮かべながら近付いてくる彼女を見てマグナスは思わず後ずさってしまう。
それほどまでに今の彼女の迫力はすごかった。
「はぁ……とりあえずこの部屋片付けるね?」
ただ何かを思い出したようでリウはため息を吐くと苦笑しつつ部屋の片付けを始めてくれた。ただ、いろいろな情報が書かれた紙だけはなんとか懇願して棚に入れてもらえることとなった。
「もう、今度からは何か書いてもこの棚にしまってね」
「あ、あぁ……」
マグナスは曖昧な言葉でとりあえず頷くことしかできなかった。
「さぁ、この部屋も片付きましたし、お昼食べましょうか?」
ようやく笑みにもどってくれたリウと一緒にマグナスは食堂へと向かっていった。