料理対決
食材の置かれた棚までやってくる。
「俺はどういったものを使うかわからないからリウに任せて良いか?」
「うん、任せてなの」
嬉しそうに食材をカゴに入れていくリウ。
肉……肉……肉……。
「リウ? なんか肉が多くないか?」
「お肉はおいしいからたくさん食べるの」
さも当然のように答えてくるリウを見てミリファリスがあきれ顔を浮かべる。
「やっぱりそうだと思いましたよ。お肉だけじゃバランスが悪いですよ。ちゃんと他のものも食べましょうね」
ミリファリスが野菜とかもカゴへと入れていく。
「むぅー、野菜嫌いなの」
「ちゃんと食べないと大きくなれませんよ」
ミリファリスとリウが視線をぶつけ合っている。
そんなことで喧嘩をしている暇があったら自分の荷物を持って欲しい。
カゴの中には大量の食材が入り、とても重たかった。仕方ないので魔法を使い、空中に浮かせて運ぶ。
そして、息を荒くしてようやく視線のぶつかり合いが終わる。
「はぁ……はぁ……。それならどっちの料理がおいしいかマグナスさんに判定してもらいましょう」
「それがいいの。マグナスさまならきっとわかってくれるの」
二人の視線が一斉に俺の方を向く。また面倒ごとに巻き込まれてしまうようだ……。
思わずため息を吐くが、料理を食べるだけなら何とでもなるだろう。
「マグナスさんには審査員をお願いします」
「マグナスさまー、リウ、頑張るよー」
そう告げるとまた視線のぶつかり合いが始まってしまった。
一通り決め終わって家に戻ってくるともう家は完成していた。
すでに作れる部分は作っていて、あとは素材がそろえばすぐに完成だったみたいだが、それにしても思ったより早かったな。
大工にお礼を言ったあと、マグナス達は家の中に家具を配置していった。
そして、ようやく家の中が片付き、家具の配置が終わったので前の宣言どおり、リウとミリファリスの料理対決が始まってしまった。
ばちばちと火花を散らす二人。
そんな二人を遠目にマグナスは庭に残っていたクレーターを処理していた。
穴の空いた部分は土魔法で埋めていく。
そして、綺麗になった庭を見て頷くと、木を背もたれにしてうたた寝を始める。
ドカァァァァン‼︎
しかし、すぐに厨房から爆発音が聞こえてくる。
その音を聞いたマグナスは慌てて起き上がると厨房の方へと駆け寄っていく。
するとそこには真っ黒になった肉と思われし物体が入った鍋と咳き込むリウ。そして、あたり一帯は爆発の影響か、少し黒ずんでいるような気がした。
「大丈夫か、リウ!」
「あっ、マグナスさま……。えへへっ、ちょっと失敗してしまいました」
少しはにかんで、黒くなった肉を片付け始めるリウ。どうやら何もなく無事なようで少しホッとした。
「そういえばミリファリスはどこ行ったんだ?」
リウと一緒に厨房へやってきたと思ったのだが、気がつくと彼女の姿はなかった。
「ミリフお姉ちゃんなら自分の家で作って持ってくるって言ってたの。なんだかここじゃ集中できないって」
集中できない? もしかして、ミリファリスは人前で料理をするのが苦手なのだろうか?
でも、そこまでこだわりがあると言うことはミリファリスの方の料理は期待できそうだ。対するリウの方は……。
目の前の惨状を見る限りだとあまり期待できそうにないけど、それでも本人がやる気になっているのだ。ここは任せてみるべきだろうな。
「とりあえず危険なことはするなよ」
「うんっ」
大きく頷くリウに背を向けると俺はフラッと自分の部屋の方へ向かう。
家具が運び込まれ、大きなダブルベッドと机と椅子だけが置かれた部屋……。
こうやって見ると少しさみしい感じがするかもしれない。
ただ、ベッドの上にいるスライム人形だけが猛烈に自己主張をしていた。これが届いたときのリウの嬉しそうな顔を思い出すだけでこれを買ってよかったとつくづく思ってしまった。