第四十三話 リウの魔法特訓
魔法が使えない?
いやいや、そんなことないだろう。
「とりあえず試しに使ってみるといい。失敗してもいいから……」
「うーん、わかったの……」
少し信じられないと言った表情を浮かべていたもののリウは光の魔法を唱えようとする。
「……ら、光の……回復?」
呪文を信じられない様子でおどおどとした口調をしながら唱える。
当然そんな状態では魔法は発動せずにリウは悲しそうな顔を見せていた。
「やっぱり……できなかったの」
「そうだな……」
やはり使ったことのないリウに試させるのは早計だったな。でもお陰でいろいろなことがわかった。
まず呪文としての魔法は知っていること。ただ、使えると思ってないせいで怯えてしまうこと。
そんな状態では使えるものも使えないだろう。
どう教えると使えるようになるか……。
マグナスは少し悩みながらリウに聞いてみる。
「リウの光のイメージはどんな感じだ?」
「ピカピカ?」
「なら今度はそれをイメージしながら試して見たらどうだ?」
魔法にはイメージも大切だからな。
するとリウは小さく頷く。そして、小声で呟いていた。
「ぴかぴか……ぴかぴか……ぴかぴか……うん、『光の回復」
今度は先ほどのように怯えた様子もなかった。それはピカピカにさせるということに頭がいっていて使えるかどうかまで頭が働かなかったのだろう。
でもそのおかげでリウの手には僅かながらの光が起こる。
それは魔法が成功したというには弱すぎる回復の光……、ただ、それでもリウにとっては大きな一歩だったようだ。
「り、リウが光魔法を……?」
何度も輝いた自分の手を見て驚きの表情を浮かべていた。
「あぁ、よくやったな。あとは実際に回復できるまで鍛えるだけだな」
魔法を成功させたリウの頭を撫でると彼女は嬉しそうに目を細めていた。
「うん、リウもっと頑張るよ!」
リウは両手をグッと握りこむと再び光魔法の練習を続けていった。
◇◇◇
しばらく魔法を使っていたリウだが、魔力が尽きてしまい、疲れた表情でその場に座り込んでいた。
「なんかとっても疲れたの……」
「あぁ、その疲労感は魔力を使い切った時に起こるものだ。しばらくして魔力が回復してくると治ってくると思うが……」
流石にこの場で留まり続けるのは良くないよな?
マグナスはパルパレの大木を拾い収納魔法でしまうとリウを背中に担いだ。
「ま、マグナスさま!?」
突然担がれたリウは驚いて声を上げる。
「家に帰るぞ。このままだと野宿になりそうだからな」
家の方へ向かって歩き出すとリウがギュッと抱きしめてくる。そして、小声でつぶやく。
「ありがとう、マグナスさま……」
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