表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スローライフがしたい大賢者、娘を拾う。  作者: 空野進
第1章大賢者、転移する
37/57

三十六話 給餌初挑戦

「ジャーン。どうかな、マグナス様?」



 服を着替え終えたリウは嬉しそうにマグナスに見せにくる。その場でくるっと一回転回って見せた後に笑顔で聞いてくる。

 少しヒラヒラがついたエプロンドレス服姿はとてもリウに似合っていた。



「あぁ、よく似合ってるぞ」



 軽く頭を撫でると嬉しそうに目を細めていた。

 そして、ラティオたちも着替え終えるとフィリアの下へ駆け寄っていった。


 それを近くのテーブルで頬杖をつきながら眺める。

 ラティオはズボンと白のシャツという清楚感漂う格好に。アルティはリウと同じドレス服姿に着替えていた。


 ラティオとアルティは緊張のしすぎで顔が固まっていたが、リウだけは常に笑顔を見せながらフィリアの話を聞いていた。



「大丈夫か……?」



 三人の様子を見てマグナスは少しだけ不安になった。



 ◇



 しかし、そんな心配も杞憂だったとすぐにわかった。



「いらっしゃいませー!」



 客が入ってくると真っ先に笑顔のリウが駆け寄っていく。その満面の笑みに出迎えられて気を悪くする人はいないだろう。


 その後におどおどした様子でアルティがメニューを聞きにくる。アルティもリウと同じくらいの年で小さい子が必死に頑張っている様子をやってきた客は微笑ましく眺めて、また間違えた部分は笑顔で教えてくれる。


 そして最後に出来た料理をその獣人族らしい素早い動きでラティオが運んでいく。


 その微笑ましい光景とすることがないときにリウが表で呼び込みをしてくれたおかげで店内は大繁盛となっていた。



「すごい……ここまで効果があるなんて……」



 フィリアは思わず感嘆の声を漏らす。



「リウちゃんにもこのまま働いて欲しいくらいね」

「……まぁそれはリウがやりたいといったらな」



 でも目の前ですごく楽しそうにしているリウを見るとやりたいというかもしれないなと少しだけ思った。




 ◇




「とってもとっても楽しかったのー!」



 宿に戻っていく途中、リウがマグナスの方を向いて両手を上げて喜んでいた。


 ラティオたちもあそこなら大丈夫だと思ったのか、明日からは二人で大丈夫だと言っていたし、寝泊まりはあの店の二階に泊まらせてくれるようだ。


 まだ数日間は様子を見に行かないといけないだろうけど、このまま馴染んでくれればありがたいな。



「リウもあのお店で働きたいのか? 一応フィリアは歓迎すると言ってくれてたぞ?」

「うーん、それは魅力的なんだけど私はマグナス様と一緒にいるの。いいよね?」



 上目遣いで確認してくるリウにマグナスはため息を吐き、軽く頭を撫でてあげる。




 ◇




 そして、翌日再び料理屋へ足を運ぶともう随分慣れたのか昨日はリウがしていた出迎えの部分もアルティが行なっていた。



「いらっしゃいませー。あっ、マグナスさまー。こちらにどうぞー」



 アルティに席へと案内される。



「ご注文は何にしますか?」



 注文を聞かれたときにメニュー表の中にとある商品があることに気がついた。

 それはマグナスだけじゃなくてリウも気がついたようだった。



「フィリアさんはいるか?」

「少々お待ちくださいね」



 アルティは店の奥へと入っていく。

 そして、しばらくするとフィリアがマグナスたちの席へとやってくる。



「どうかされましたか?」

「このメニューにあるパフェは? まさかもうシュガー草が届いたのですか?」



 素材が取れなくなっていた原因は取り払ったがまだこの町に届くには時間がかかると思っていたんだが……。


 するとまるでいたずらが成功したかのように嬉しそうな顔をするフィリア。



「えぇ、とあるルートで今朝早くに届いたんですよ。ただ、少し割高なルートなので値段もちょっと高くなってしまってるんですけどね」



 フィリアが小さく舌を出す。

 確かによく見るとパフェ一つで値段が銀貨二枚ほどになっていた。


 これはかなり高価だが、リウの視線が先程からそちらに向いてはなれない。

 マグナスはため息を吐くとアルティに向かってオススメの料理二つとこのパフェをくれと言う。



「かしこまりましたー」



 アルティは注文を店の奥にある厨房へと運んでいく。

 そしてしばらくすると注文した料理がラティオの手によって運ばれてくる。


 ただそれはマグナスとリウの分だけではなく四人分……。



「フィリアさんが『せっかくマグナスさんたちが来てくれたんだから一緒にご飯食べてくるといいよ』って言ってくれたんだ」



 そう言うことか。確かにここでの生活について確認するにはちょうどいいかもしれない。


 料理をマグナスたちの前に置くとラティオたちも席に着く。


 するとリウとアルティは嬉しそうにそれを食べ始めていた。



「どうだ、ここの生活は?」

「うん、すごくいいよ。本当に考えられないくらいに」



 ラティオが笑顔を見せながら言ってくれる。

 作ったような笑顔には見えないことからそれがラティオの本心によるものだとわかる。

 それを聞いたマグナスはどこかホッとしていた。


 楽しげに暮らせているのなら良かったと思えた。



「はい、こちらはパフェになります」



 フィリアがリウのパフェを持ってきてくれる。

 えらく早いなと思ったがもうすでにリウはご飯を食べ終わっていた。


 それを嬉しそうに受け取るリウ。ただ、その様子を見てよだれを流すアルティ。


 確かにアルティたちにはまだこのパフェの値段は手に届かないか……。


 苦笑しつつマグナスはアルティとラティオの分のパフェも注文して上げた。

次回26日更新予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『転生領主の優良開拓〜前世の記憶を生かしてホワイトに努めたら、有能な人材が集まりすぎました〜』

こちらはマグコミさんにてコミカライズしております。よろしければ、下記タイトルからどうぞ↓

『コミカライズ版、スローライフがしたい大賢者、娘を拾う。』

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ