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スローライフがしたい大賢者、娘を拾う。  作者: 空野進
第1章大賢者、転移する
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三十三話 貴族の館

「なに、あの店にいた魔法使いに追い返されただと?」



 貴族の男は雇っていた冒険者から報告を受けて少し苛立っていた。

 この町にあの獣臭い獣人族がいるだけで嫌気がさす。それにあの場所は別の店を構えたほうがこの町のためになるはずだ。



「一体どこのどいつなんだ、その魔法使いは?」

「いえ、そう言ったこともなにも掴めませんでした」



 まぁいい。あの獣人族の味方をするならどうせこの家にたどり着くだろう。



「お前たちはそいつが来たとしても余計なことは言うなよ? 全部私が対応する。お前たちはただ私の身だけ守っていればいいからな!」


 貴族の男が冒険者たちに再三注意を促していた。




 ◇




 ラティスたちは獣人の女性が一晩見てくれると言ってくれた。その理由はこの町の普通の宿なら獣人は泊めてくれないらしい。

 それならと快く引き受けてくれたことに感謝しつつマグナスたちは貴族の館にやってきた。



「マグナス様、ここは?」



 マグナスの服を軽く引っ張りながらリウが聞いてくる。



「あぁ、どうやらさっきの冒険者はここに来たみたいなんだ」

「ここ……ですか」



 リウが思わず目の前の建物を見上げるように眺めていた。

 それほどまでに大きな建物。ここより大きい建物となるとマルティンの領主邸くらいしかリウは見たことないだろう。



「大きいですね……隠れてはいるのですか?」

「いや、今日は堂々と行こう」



 マグナスたちは館の玄関へと向かう。すると当然のごとく館を護衛する兵に止められる。



「止まれ! バスター様の館に何の用だ?」

「先ほどの件……と言えば伝わるか?」



 素材を取れなくさせていたのは魔族だったが、それを町の人に獣人がやっていると広めていたのは別の人物のはずだ。

 魔族が人を滅ぼそうとしてやっていたわけだから、当然ここは自分の名前か自分の家来がしたと広める方が都合がいいはず。

 それをただの獣人族がしていると広めて、実際関係のない食事処の二人に疑惑を傾けさせるなんて手間、あの魔族がするはずがない。


 そして度々やってくる店の妨害をする冒険者。

 おおよそその雇い主が獣人族が犯人だと広めた人物だろう。


 それなら先ほどの件と伝えたらまずさっき店を襲った件だと想像できるはずだ。


 そこまで予想しながらマグナスは中に通されるのをまった。




 ◇




 しばらく待つとマグナスの予想通り中へと案内された。

 応接室にある椅子へと座る。少しあぐらをかくマグナスに対して、リウは緊張した様子で体を縮こめて座っていた。

 そして、そんなマグナスたちの前には恰幅の良い中年の貴族が鋭い目つきで並んでいた。


 まぁ歓迎された客ではないからな。

 そしてらそんな貴族の後ろには先ほど撃退した冒険者が四人立ち控えていた。


 冒険者たちは睨みつけるようにマグナスを見ていたが、それ以上何かしようとはしていなかった。



「して、今日は何やら先ほどの件とかで尋ねられたようだが、一体何の用だ?」



 まぁそう言ってくるしかないよな。



「もちろん獣人族が経営する料理屋の話だ」

「そのことか。その件に関しては迷惑をかけた。この通りうちが雇っている冒険者たちが勝手に動いたことで私は一切関与していない。でも迷惑をかけた事実は変わらないからな。明日にでも店の主人に詫びを入れに行こう」



 もう話すことはないと言った感じにさっさと言い切ってしまう貴族。

 冒険者たちから勝手に責任をなすりつけられたことへの不満が上がらないところを見るとこのやり取りはすでに相談されていたことなのだろう。


 もちろんそれで終わらせるつもりはマグナスにはなかった。



「本当にこの冒険者たちが勝手にしたことであなたは関係ないのですね?」



 マグナスは少しだけ威圧を出す。

 すると後ろにいる冒険者たちはざわつき出す。

 でも貴族は驚いた様子なく、顔色ひとつ変えなかった。



「どうかされましたか? 何やら怖い顔をされてますが」



 ニヤニヤと笑みを浮かべてくる貴族にマグナスはこれは厄介な相手だと心の中で舌打ちをしていた。


 魔法で倒して終わり……というわけかもいかないのでというわけにもいかない。

 何か突破口はないかと考えていた時に冒険者の一人がリウを見て指差す。



「お、おい、そいつ、魔族じゃないのか?」



 最近驚かれるようなことがなかったのでマグナスも気にすることはなかったが、そうだよな。

 実際の魔族に対する反応はこうだよな。


 流石に家の中に魔族がいるとなると流石の貴族も動揺を隠しきれない様子だった。



「お、おい、何をしている。そ、その魔族を倒せー!」



 貴族が冒険者たちに命令すると彼らは一同に剣を抜きそれをリウに向ける。


 それを見てリウの顔に恐怖が浮かぶ。

 もちろんマグナスは見てるだけではなくリウを庇うように前に立つ。



「魔族を庇いだてするか。ならお前も同罪だ、かかれ!」



 貴族の掛け声によって冒険者たちがマグナスたちめがけて向かってくる。


 ただ、一度マグナスに痛い目に遭わされている彼らだ。向かって来ながらもその顔には恐怖が浮かんでいた。


 そんな腰の引けた相手に遅れを取るわけもなく、マグナスは一撃で冒険者全てを吹き飛ばし、気絶させた。

6月5日更新予定です

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新作始めました。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『転生領主の優良開拓〜前世の記憶を生かしてホワイトに努めたら、有能な人材が集まりすぎました〜』

こちらはマグコミさんにてコミカライズしております。よろしければ、下記タイトルからどうぞ↓

『コミカライズ版、スローライフがしたい大賢者、娘を拾う。』

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