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スローライフがしたい大賢者、娘を拾う。  作者: 空野進
第1章大賢者、転移する
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二十九話 魔族(後編)

 マグナス達が一番奥に置かれた畑にばらまかれた魔力と同じ気配をたどって行っていると突然目の前に強大な魔力を感じた。それはリウですら感じるほどの物で魔力の量だけ言うと以前戦った魔族より遙かに多いだろう。

 しかし、それも量が多いだけでうまく扱えていないせいで魔力が分散し、もったいないことになっている。

 ただ、こんな逃げ道の少ない地下で魔法を放たれてもやっかいだろうとマグナスは先に魔法を放つ。


 使用したのは土の魔法で対象の両隣に土の壁を生み出し、それで押しつぶすという力業な魔法だ。

 それでも解除すれば土は消えてくれるのでこういった狭い地下では活躍してくれる。


 それを強大な魔力の位置に向けて放つ。



「ぐへっ……」



 すると魔法を放った方角から男の声が聞こえて来た。


 そして、魔族がためていた魔力が霧散したことを確認するとマグナスたちはさらに奥の部屋へと入っていく。


 するとそこには倒れてサラサラと砂のようなものに変わっていく魔族の姿があった。



「あっ……」



 リウが小さな声を上げる。

 もしかして彼女の知り合いだったのだろうか?

 それにしてはリウごと狙ってきたような気がするが……。


 結局リウはその魔族が完全に消えるまでじっと眺めていた。




 ◇




 魔族が完全に消えたのを見た後にマグナスたちは奥の部屋までやってきた。

 やはりここも普通に倉庫がわりに使っていたようだが、他と違う点があった。


 それは何か大切なものが置かれているかのように白い布で隠された箱が置かれていた。

 その白い布を取ると目的である紫色の魔力がこもった薬を発見する。


 ただ、その薬には見覚えがあった。

 昔マグナスが植物を育てるために使っていた薬……。

 それが悪化して良い効果が悪い効果に変わってしまったものだった。


 でも、魔力の調整に失敗してるだけで後の素材は問題ない。

 ここは少し魔力を込めれば……。


 マグナスは置かれた薬に魔力を込める。

 これで普通に素材が育つ薬になっているはずだ。


 ただ、あの魔族が消えてからどうにもリウが少し落ち込んでいるように見えた。



「リウ、大丈夫か?」



 珍しくマグナスが心配そうな顔を見せる。

 そのことに一瞬リウは驚いたもののすぐに顔を伏せてマグナスに聞いてくる。



「どうしてあの人は食べ物を取れなくなんてしてたんでしょうか?」



 たしかにわざわざ労力を割くようなことじゃないだろう。そんなことをしても自分にメリットはないし、何より面倒だ。


 自分に当てはめて、どうしてこんなことをしたか考えて見たが、理由はわからない。



「あの魔族にもしないといけない理由があったんじゃないか?」

「そう……ですよね。やっぱり魔族と人間族は相容れない存在なんですよね……」



 リウが気にしていたのは種族……だったようだ。

 たしかにリウ以外の魔族はいずれも人間族を滅ぼそうとしていた。


 このことからリウの頭の中で人間族と魔族は対立してると思ってしまったようだ。

 魔族は個々の能力が高いからこういった暴走をすることは多々あるが、人数的には少数だ。そこまで気にする必要はないのに……と言ったところで言葉だとリウには届かない。


 なら自分がすべきことは――?


 マグナスはリウへと近づいていくとその頭を撫でる。

 するとリウは上目遣いでマグナスを見上げる。



「俺は何も気にしてないからな」



 それだけ伝えるとしばらくリウの頭を撫で続けた。




 ◇




 少し冷静になったリウは笑みを浮かべるとマグナスの腕にしがみついてきた。

 ほんの少しマグナスに体重がかかる。

 それが面倒だなと思いつつも、リウがはにかんでからその顔を見るとまぁいいかと思えてきた。


 そして、奴隷商の地上部分へと戻ってきた。

 未だに奴隷商は意識を失っているようだ。それでも命に別状はないみたいなので問題はないだろう。



「お、おい、お前たち、奥で一体?」



 獣人の少年が尋ねてくる。

 どこまで話していいものか少し考える。



「奥にはあいつが……まさか倒したのか?」



 どうやらこの少年もあの魔族のことを知っていたようだ。

 そこまで知っているなら教えても大丈夫か。

 マグナスは少年の問いに対して頷く。


 すると少年は信じられないものを見ている感じにマグナスのことを見てくる。



「それならもう俺ができることは……。このままだとリブレの病気が……」



 がっくりと落ち込む少年。もしかするとこの子は妹を助けるためにあの薬を撒いていたのだろうか?


 まぁ病気は治したわけだからすでに心配はないな。


 マグナスが店を出て行こうとするが、リウはその場に立ち止まる。



「どうした?」

「マグナス様、この子達、助けられないかな?」



 リウがまっすぐマグナスの目を見てくる。



「どうしてだ? リウはこの子らの知り合いじゃないだろ?」

「うん。そうだけど、この人たちってあれだよね?」



 あれってなんだろうか?

 マグナスが不思議そうな顔をするとリウが詳しく教えてくれる。



「ほらっ、あのご飯のところ……。獣人ってだけで嫌われてたでしょ? ただの獣人ってだけであれだったのにもしこの子達が実行犯だってわかってしまったらどうなっちゃうの?」




次回14日更新予定です

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新作始めました。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『転生領主の優良開拓〜前世の記憶を生かしてホワイトに努めたら、有能な人材が集まりすぎました〜』

こちらはマグコミさんにてコミカライズしております。よろしければ、下記タイトルからどうぞ↓

『コミカライズ版、スローライフがしたい大賢者、娘を拾う。』

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