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スローライフがしたい大賢者、娘を拾う。  作者: 空野進
第1章大賢者、転移する
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二十六話 奴隷商

 翌朝目が覚めるとマグナスの腕にしがみつくように眠っているリウの姿があった。

 完全に分かれて眠ったはずなのに……それもリウが眠りにつくのを見届けた後に自分も眠ったはずなのに、こうなっていると言うことはおそらく夜中に目が覚めたリウがさみしくなってマグナスの下へとやってきたのだろう。


 彼女を起こさないようにそっとベッドから抜け出す。

 そして、宿の窓から外の様子をうかがう。

 港町らしくまだ日も昇ったばかりなのに活気ある町並みが目に入ってくる。

 ただ、そこでマグナスは違和感を感じる。

 どうも自分たちは見張られている……そんな気がした。

 それは長年依頼だけをこなし続けてきたマグナスが培って得たものでおおよそ外れることはない。


 まぁ流石にあれだけの依頼をこなしていると敵もできるからな。命を狙われることも何度もあったな。


 昔を思い出して少しだけ微笑む。がそれも一瞬でどこにその隠れた人物がいるのかを探し始める。


 もちろん外から見たら、ただの観光客が興味深そうに街並みを見てるだけに思えるように自然な態度をとる。


 しかし、目だけは鋭く光らせてどこに危険が潜んでいるのかを調べる。


 門付近ではない……。昨日行った獣人のいる食事処の方角でもない……。魔力を感じた元凶のいる方角でもない……。


 まずは思いついた方角を調べて見たもののそちらには何もなかった。

 そして、徐々に調べる範囲を広げていく。

 そこでようやく、かなり距離の離れた露店立ち並ぶ市場で自分たちの部屋を眺めている男の存在に気づく。



「いた……」

「んっ、何がいたの?」



 思わず声に出してしまうマグナス。するとその声で目を覚ましたリウが眠たそうに間延びした声で聞いてくる。

 一瞬そちらに気を取られてしまうマグナス。次に見る時にはその男の姿はなかった。



「いや、なんでもない……」

「……?」



 不思議そうに首をかしげるリウ。

 ただ、マグナスはいなくなったその男の方が気になり、誰もいなくなったその場所を未だに眺め続けていた。




 ◇




 やつが昨日シュガー草の生息地を見に行っていたやつか……。

 マグナスの視界から離れた男は興味深そうに小さく微笑んでいた。

 どうやら彼のほうも私に気づいていたようだ。同じ力の持ち主か?

 いや、やつは普通の人間であった。だったら違うか……。たまたま私のほうを見ていただけかもしれない。


 まぁそれはいい。人間族を滅ぼすのにゆっくりと食料責めにしているわけだ。それの邪魔さえされなければ……。


 くくくっ……と男は口をつり上げて微笑む。

 そして、更にその効果を高めるために奴隷商へと足を運んでいた。




 ◇




 先ほどの件は少し心残りだったもののこれ以上気にしても仕方ないので今は出来ることを先にするか。

 マグナスはリウを連れて奴隷商へと向かっていた。


 店の前に来るとリウは少し体を硬ばらせる。

 あまりここには良い思い出がないだろうからな。

 マグナスはリウに向けて笑みを見せる。

 それを見てリウはなんとか笑みを返そうとしてくれた。



「大丈夫、今日はまた別の用事があるから」



 それだけはっきりと言葉で伝えるとマグナスは店の中に入る。



「いらっしゃいませ……。おやおや、若旦那にそちらは……」



 明らかにごますりの姿勢を見せて来る奴隷商に出迎えられる。

 ただ、リウの顔を見て少し固まる。



「あっ、えっ、そ、その、ほ、本日はどのようなご様子で……」



 リウを見ながら明らかに恐怖の色を浮かべていた。

 たしかにリウは魔族でそういう部分を全く隠していない。


 今もその証たる小さな二本のツノが髪から見え隠れしていた。

 しかし、それでここまで動揺されるようなことはなかった。何か理由があるのだろうか?


 リウも訳がわからない様子でキョロキョロと見回した後にマグナスの顔を見て来る。



「リウ、何かしたの?」

「いや、そんなことはないはずだ」



 マグナスも思い当たることは全て考えて見るが、やはりある一点以外は思いつかない。


 一つだけある可能性……それはこの奴隷商が魔族に脅されてるという可能性だ。


 魔族の恐怖を知っているものならリウが魔族……という時点で恐怖に感じてもおかしくない。


 まぁリウ自身が何かしたということは考えられないのでこの町に別の魔族がいるということだろう。


 もしかしたら近くにいるかも……。


 そう感じたマグナスは周囲の魔力を調べて見る。

 どうやらシュガー草の生息地で感じた魔力の持ち主がこの奴隷商の地下にいるようだ。


 そして、その持ち主が魔族?

 違ったとしても周囲の人より明らかに魔力量が多い。


 ということはこの人物に奴隷商は脅されているんだろうな。


 何度もリウの動向を伺っている奴隷商を見てマグナスはそこまで想像する。



「とりあえず一通り見せてもらって良いか?」

「えぇ、えぇ、構いませんよ。お、お好きにどうぞ……」



 用が奴隷を見ることだとわかると安心したように奴隷がいるところまで案内してくれる。



「えっ、えっ、マグナス様? 奴隷を買うの?」



 状況を把握できないリウはただただ困惑しながらマグナスの後を小走りで追いかけて来る。

次回5日更新予定です

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新作始めました。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『転生領主の優良開拓〜前世の記憶を生かしてホワイトに努めたら、有能な人材が集まりすぎました〜』

こちらはマグコミさんにてコミカライズしております。よろしければ、下記タイトルからどうぞ↓

『コミカライズ版、スローライフがしたい大賢者、娘を拾う。』

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