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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ちょこれいと

作者: 齋藤沼田

2月14日、初めて本命の人に義理チョコをあげた。好きだけど義理。


あげたのは学校の先生。通称あきちゃん。あきちゃんは国語の先生。先生に恋?をしたのには正直自分でも驚いた。いつのまにか目で追うようになってたから。しかも40代。既婚。それに、同性。致命的な恋?だと分かっててもどうしてもチョコだけはあげたかった。感謝として。


日曜日にチョコを買いに行った。どのデパートもバレンタインフェアで賑わってたけど私は行かなかった。だってもう詰められてるのしか売ってなかったから。

自分で一つ一つ決められるチョコを探して神楽坂の小さなチョコ専門店に歩いて行った。初めて行ったけどとてもいい雰囲気だった。「どれがコーヒーに会いますか?」

「このチョコは甘くて美味しいです。」

「そうですか。それじゃあこれは?」

そんな会話を数十分した。店員さんも疲れたみたいで話終わったらお店の奥の方に行ってしまった。

四つのチョコを買った。甘いの。苦いの。甘酸っぱいの。ハート型のコーヒーの味の。

どれもあきちゃんのことを考えて選んだ。甘いのはあきちゃんの可愛いところ。苦いのはあきちゃんの授業。甘酸っぱいのは私とあきちゃんの関係。コーヒー味のハートは私の気持ち。どきどきしながら家に帰った。それからずっと前に買ったハート型のメッセージカードを書いた。いろんなことを言いたかったけど少しだけ書いた。大人になったなぁ。

私はあきちゃんのおかげで成長できたと思う。あきちゃんは私に本を教えてくれた。あきちゃんに出会う前は本なんて一冊も持ってなかったのに今じゃ鞄に常に何かしらの本が入ってる。幸せだった。あきちゃんのおかげだ。


バレンタイン当日、緊張した。今までこんなに緊張したことあったかな。なかったかな。お昼休みにあげようと思ってたから4時間目まで心臓がバクバクしてた。苦しくて苦しくてたまらなかった。お昼ご飯なんて喉を通らなかったからずっとうつ伏せになってた。あと五分、あと二分、、

迫るお昼休みが待ち遠しくて逃げ出したかった。ぱらどっくす?お昼のお祈りが終わって丁寧にチョコを包んだ紙袋を片手に教室を出た。足を出す度にどんどん心臓が早くなっていった。


職員室の前に立って震えそうな声で冷静なふりをして先生を呼んだ。


「あきちゃん、これ、あげる。」

「え?いいの?」

「うん。受け取って。」

「え?ほんとに?いいの?」

「うん。」

「ありがとうございます。」

あきちゃんは変な顔してた、驚きと喜びで。でも驚きの方が強かったんじゃないかな。目を丸くしてたから。そこも可愛いから別にいいんだけど。


ゆっくりできるだけゆっくり歩いてもどった。心臓はまだ余韻に浸ってたみたいにどきどきしてた。

あきちゃんに無事あげられてほっとしたけどあきちゃんがほんとに食べてくれるか、喜んでくれるか心配で心配で仕方なかった。けど、私の思いはきっと伝わって無い。これ以上幸せになろうなんてそんな図々しいことしたくなかった。このままずっと好きでいられたらな。


暫くしてあきちゃんと話した。

食べた?

食べたよ。美味しかった。大人の味がした。ほんと?

うん。あれ、一つ一つ選んでくれたんだね。もちろん。元々詰められてるのって気持ちこもってないじゃん。

そっか。そういうこと考えられるってすごいことだよ。

そうかな?

そうだよ。日頃の感謝です。

ありがとね。じゃあね。

帰りたくないな。でもさ。わかってる。じゃあ、さよなら。

さようなら。



帰り道ふと目を上げたら空が真っ赤に染まっていた。ちょっと涙が出たけど風のせいで吹き飛ばされた。心がふっと軽くなった気がした。


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