舞踏会帰りのシンデレラ
こんばんは、遊月です♪
第3話、「舞踏会帰りのシンデレラ」です。そういえば、連載の全話一挙公開というのは初めてだったりします。
本編スタートです!!
「じゃ、またね~」
「うん! また来週!」
笑顔で手を振って、彼女は駅のロータリーへ向かっていく。小走りで向かっていくその後ろ姿を見るに、たぶんもうお迎えも来てるのかも知れない。きっとその人の方に、今あの子の気持ちは向かってるんだろうな……。
そういう姿も可愛いんだよね、と誰にとも知れない友達自慢(?)をして、私は駅近くの駐輪場に向かう。
すっかり暗くなった線路下の狭い道を歩いているのが何だか心細くて、つい鼻唄を歌ってしまう。
なるべく周りの音が耳に入らないように。
なるべくいま独りなんだって思い出さないように。
聞こえるのは足下からのコツコツという靴音くらい。立ち並ぶ街灯は仄明るい光ばかり放って、どこか心細いし。
ジジッ、と耳障りな音を立ててその明かりの1つが点滅する。別に暗がりが怖いとかじゃないけど、明るかったのが暗くなるのは嫌だ。
元々静かだったのが静かなままなのと、さっきまで賑やかだったのが静かになるのとが少し違うように。
さっきは、楽しかったな。
ふと思い返す、さっき……さっきまでの時間。
大学終わりはほとんど自宅に直帰な私を、今日はみっちゃんが色々連れ出してくれたのだ。私が高校に上がる頃にこっちに越してきて、それからずっと私と一緒にいてくれる親友。
同じ大学に入り、科目も大体は同じものを履修している。お昼とかも、私がサークル活動で呼び出されなければ一緒に食べる。で、帰りは……、いつもは別々に帰る。
私は私でサークルの会員たちと食事に行ったりするし、その場のノリによってはその後まで付き合うこともないわけではない。それにそういうのがない日はまっすぐ帰らないとだし。
みっちゃんの方も、友達を作るのが上手だから、いろんな学科、更には学外の友達も少なくないくらいだ。
そんな感じで、帰りだけはタイミングとかお互いの都合で別々になるけど、たまに。
たまに、今日みたいに私のサークルもない、みっちゃんもお友達が忙しいとかですっかり予定が空いたりした日には一緒に帰っている。
『莎綾ってさ、いつもおうちまでまっすぐでしょ? せっかくこうやって帰れるときはちょっと遊んでこ?』
そう言ってみっちゃんが見せてくれるのは、この地元から離れた大学周辺……いわゆる都会の景色。
といっても、2人で買い物したりとかゲームセンターに行ったりとかそういうくらいなんだけど。
『莎綾、見て見て! これ可愛くない!?』
『あ、ほんとだ。にゃんこいいよね~』
『じゃあさ、一緒に買わない?』
そんな会話をしてお揃いで買ったネコっぽいデザインのアクセサリー。買ってすぐだと何となく着けるのが恥ずかしかったけど、みっちゃんに釣られて着けたが最後、外してしまう瞬間が来るのが凄く寂しく感じてしまう。
楽しかった夢から覚めてしまったような気分。後には現実と、駐輪場までの薄暗い道があるだけ。
「………………」
それと、暗いもやもやした気持ち。
次こうやって会えるのはいつなんだろう? それまでにお互い何もなく過ごしていられるかな? そんなことばかり。
……みっちゃんは、とても可愛い。
今も昔も可愛い。昔は素朴で純粋な、今は洗練されて少しあざとさすら感じられる種類の可愛さ。私と一緒にいない時間で、きっと色々なものと出会って、色々なことを知って、その色々の中できっと変わっていったのだろう。私の知らないところで。
それは大学で出会った友達だったり、ついさっき彼女を迎えに来ていたのだろう人だったり、そういう人たちの手で。
今のみっちゃんも大好きだ。
だけど、何だかもやもやして。
『みっちゃん、さっき見てたピアス買わないでよかったの?』
『うーん、たぶん買ってもつけないだろうし……何か穴開けるの怖くて』
『あぁ、そうだよね。私も』
『機会があったら、って感じかな……』
駐輪場で自転車を拾って帰路についたときに、思い返したやり取り。ふとよぎった考え。
じゃあ、次は一緒にピアス買おっか。私がつけてあげるから。
自転車のライトが照らす閑散とした深夜の道の先は、さっきまでいた夜の街よりもずっと暗くて、よく見えない。
遊月です♪
執筆中(丑三つ時?)に開けっ放しの廊下を何かが横切ったような気がしたのには目を背けながら後書きを書いております(笑)
あと少し続きますので、お付き合いくださいませ!