リビングルームのソファーは柔らかすぎる
こんばんは、遊月です♪
『午前0時』企画作品、第2話です! 私の方は、午前0時にまつわる数人のお話となっております(ということで、主人公も第1話からは変わりますよ~)
それでは、本編スタートです!
テレビでは、いつも自然に点けっぱなしになっているバラエティ番組が映し出されている。
……前に比べて、「深夜」感がなくなってきたな。
たまに思うそんな感想を、今日も飽きもせずに思う。たぶん夜更かしの低年齢化のあおりなのだろう、僕が子どもの頃なんて、夜11時過ぎると少し、日付を跨げばかなり過激なシーンのある番組が拝めたものだけど……。
なんてことを考えてしまう程度には、ひとりきりのマイルームは退屈だ。
「もうそろそろ帰って来てもいい頃なんだけど……」
ふと、まだ帰らない友人のことを考えていた。
まったく、学んでるんだか、学んでないんだか……
思わず口から漏れた溜め息はテレビでつまらないコメントをしているタレントに対するもの……ということにして、僕はまた時計を見る。
時刻は午後11時半。
何事もなければもうそろそろ家に着いて、愚痴をこぼして、散々素面とは思えないような絡み方をしてきた挙句、勝手に泣き疲れて眠ってしまう……そんないつものサイクルに入り始めてもおかしくない頃だ。それで、彼女の大声と執拗な絡みで眠気を押さえ込まれた僕だけが夜、暇つぶしに苦心するというパターンだ。
思い返してみたら、すごく迷惑なやつじゃないか?
まぁ、別にいいんだけどさ。嫌じゃない……ことがほとんどだし。
………………。閑話休題、とも言えないが。
もちろん、彼女にだって忙しい日はあるだろう。そういう日は今この時間よりもずっと帰りが遅かったりしたし、そういうときに待ちきれずに眠ってしまうとやはり彼女の不興を買ってしまうことは、身を以て学習済みだ。
だからこそ、寝ないためにそこそこの量淹れたインスタントコーヒー(キリマンジャロ……風味という何とも微妙な売り文句のパッケージだった)を飲みながら、すっかりマイルドになった深夜バラエティを観ているわけなんだけど。
はぁ、やっぱりつまらない。
「………………」
何となく落ち着かなくなって見上げた時計は、前回に見てからまだ1,2分しか経っていないことを見せつけて僕を嘲笑う。
仕方ないだろ、多少は神経質にもなるさ。
前、それなりに大変なことがあったんだから。
たぶんそれを今更持ち出したところで彼女からは鬱陶しがられるのが目に見えているし、僕の方にしても、たぶんそのことについて言うべきことは当時言い尽くしたはずなので、何かほじくり返すとしたらそれは紛れもなく感情の亡霊じみた反復に過ぎないということになるのだろう。
そんなのはさすがに見苦しい。
別に敢えて背伸びをしてみせるような間柄ではないけれど、そういう姿は見せまいとするような見栄はまだ僕の中にあったらしい。
そういうのも全部なくなったものかと思っていたんだけどね。……それにしても、今日は冷えるなぁ。
………………
通話をかけても出やしない。
あぁ、これはまだ電車内か、何か気分の悪い物事を見聞きして荒れてるか。……たぶん後者かも知れないな。
後者の場合、わりと危ない。
普段大人しくしているわりに気性が激しい彼女のこと、そういう気分になったときはとことん荒れる。所構わずとことん荒れて、その結果面倒なトラブルを呼び込む。そして事後報告を受けて、僕はまたどうしようもない気分になる。
そういうの、本当にやめておいてほしいんだけど。
ここには物語に登場するようなヒーローなんていない。だから、困っている人なら誰でも無差別に助けるような節操なしの偽善者なんているわけもない。ついでに言えば、僕だって四六時中暇ではないのだから、そういう偽善者を志すようなこともしてはいない。
ただ……。
今垂れ流しているテレビからは、そのまま電気代を捨ててしまっているような映像しか流れていない。試しに他のチャンネルに変えてみても、内容は似たり寄ったりだ。……仕方ない。
たまには夜に車を出すのも悪くないだろう。
寝ないようにして待つには、このソファーは柔らか過ぎるし。
月明かりが、妙に胸を騒がせて。
いきなり車の前に飛び出してきた彼女を見て、思わず言った。
「わぁ、よかった。迎えに来てみて」
あぁあぁ、こうなるのがわかってたみたいな顔して。それについては多少いい気はしないし認識も改めておいてほしいところだけど、それはもう言い飽きているから、敢えて飲み込む。
「帰ろうか、なる」
遊月です♪ お話はまだもう少し続きます!
夜も遅いですが、お時間ございましたらよろしくお願いいたします✩