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野宮さん〔1〕

どうも。安田です。

この前、友達の三宅に「お前、野宮さんと仲良いよな」とかほざかれて野宮さんを意識してしまう安田です。

いや、みんなあるよね。周りから言われて意識しちゃうこと。いや、あるよ。



「おはよー」


黒髪ショート。高くも低くもない身長。大きな目。長いまつげ。愛嬌のある顔立ち。

特別美人というわけでもないが、分けろと言われるならば確実に可愛い方に入るのが俺の隣の席の野宮さん。


「おはよー」


俺は普通の挨拶に対して普通に応じた。応じただけなのになんかめっちゃ視線を感じるんですけども。

なんか、いろんな方向からいろんな人に見られてる感じが半端ないんすけど。いや、自意識過剰ではなく。

うん。三宅だ。あいつしかいない。あいつはお喋りが好きだからな。

「最近、安田と野宮って仲良いよなー?付き合ってんじゃね?」

とか適当なことほざきやがったんだろう。あとで締めてやろう。

野宮さんが周りをキョロキョロ見て、それから言う。


「なんか、みんなこっち見てない?何かしたっけ?」


ほら、野宮さんも気づくほどの視線量。いや、これ普通にやばいでしょ。

うちのクラスのこういう時の団結感。怖いよ。


「いや、気のせいじゃない?あ、自意識過剰?」


いや、自意識過剰でもなんでもないけどね。野宮さん。事実だけどね。みんな確かに見てるけどね。この場を茶化しておかないとまずいからね。

もし野宮さんに変に勘違いされたら。

「え、安田私に気があるの?きもー。」

とかなっちゃう危険性もあるからね。だから、やめろ。見るのは。お前ら。


「自意識過剰?自意識過剰ってなに?」


あ、この子バカだった。ミスチョイスー。言葉間違えた。自意識過剰って通じないのね。


「んー。だから、ナルシってことだよナルシスト!」


その言葉を聞いた瞬間、彼女の顔が険しくなる。俺の言ったことを本気にしたのかなんなのか。明らかに俺を見る目が鋭くなった。


「だれがナルシなもんですか!私は純情な乙女ですー。」


彼女がふざけたような声のトーンで、ふざけた事を言う。よかった。怒ってはいないようだ。少し安心したうえで、俺も言い返す。


「自分で乙女とかいう奴は乙女じゃねーよ。」


その挑発に乗るかのように彼女もまた声のトーンを一段階あげて言い返す。


「はぁー?私乙女だし!安田君の方が乙女じゃないよーだっ!」


なんだか訳が分からなくなってるぞ野宮さん。俺、別に乙女じゃなくていいんだけど。


「おいっ。そこうるさい。朝のHR(ホームルーム)始めるぞ」


俺らの言い争いをいつから聞いていたのか。担任の先生が俺らを注意する。あ、はい。確かにうるさかったです。すみません。






「これで、朝のHRを終わります。ありがとうございました。」


HR委員が終わりの挨拶をする。

それと同時に俺は少し離れた三宅の席に直行する。


「おーおー。来たね安田くん。見ていて楽しかったよ夫婦漫才。」


三宅は自分の席に座ったまま俺のことを挑発する。

流石にこれにはイラッときた。


「だれが夫婦じゃぼけぇ。お前周りに変なこと吹き込みやがったな。」


俺が怒っている様を見て楽しくなったのか。三宅。とても嬉しそうな顔をしている。


「そんなこと言っといて。まんざらでもないんだろ。」


そう俺に声をかけるのは、田坂。

俺と対して身長も変わらないし、容姿もいたって普通であるが、ずば抜けた運動センスと、明晰な頭脳で女をたぶらかしている。モテているとは認めない。たぶらかしている。


「そーだそーだ!あんなに楽しそーにしてたじゃんかぁ!」


それに悪ノリするのはもちろん三宅。2対1になり、さらに有利になったと確信を持ったのか、声はさっきよりも張っている。


「お前らはいいよなぁ。2人とも女をたぶらかしてるし」


俺はありったけの皮肉を込めて言った。

そう、実は田坂だけではなく、三宅も女をたぶらかしているのだ。

なんであんなチャラ男がいいのか。俺には女性心理がわからない。


「たぶらかしてるってなんだよ!モテてるって言えよ!モテてるってー」


田坂は俺に対してちょっと自慢げにそう言う。

女をたぶらかすやつなんて全員消えてしまえ。と、今思った。


「でも、野宮さんにも彼氏の1人2人くらいいるんじゃないのかなぁ」


俺は田坂がほざいた事を無視して話を進める。

2人にはあんなに暴言を吐いているが、やっぱり野宮さんのことが気になってはいるのだ。


「やっぱ野宮のこと気になってんじゃーん。俺が聞いてきてやろうか?彼氏いるのー?って」


三宅はおちゃらけた感じでそう言う。

確かに彼氏がいるかどうかは俺も知りたいけれども。そんな事を聞くのはなんか悪い気がして俺は聞いていなかった。


「んなこと言っても、野宮さん今いないよ」


田坂が辺りをキョロキョロ見回して言う。

確かに教室にいる様子はない。

野宮さん。彼女の別名は渡り鳥。まぁ、俺が勝手に言っているのだけれども。理由がないわけじゃない。

彼女は社交的な性格で、友人が多い。そのために色々な場所を転々としていて見つけにくいことから俺は渡り鳥と呼んでいる。


「席に座ってるとしたら授業前のちょっとの時間くらいか。よし、安田。自分で聞けよ」


そう俺に言うのは三宅。まぁ、こう言う事を勧めてくるのはほとんど三宅だ。


「じゃあ、ちょっと聞いてみようかな」


俺はそう答えた。

三宅に言われ勇気も出てきた。野宮さんに彼氏がいるのかどうか。俺も気になって仕方がないし。聞こう。

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