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第二話:旅の仲間とベルベル鳥のとろけるスープ side:ルイ

 私の旅の目的は元の世界に帰ること。

 でもそのための情報は皆無。ゼロ。お先真っ暗。

 だからまぁ実際はアテもなく旅をしているだけ。どこか平和に暮らせる場所があればそこで暮らそうと思うんだけど、なにせ私のパーティーはちょっと強面のお方が二人もいるからか、どの村に行っても周りの人は一歩引いた姿勢になってしまう。

 今回の旅の目的地は山奥の小さな村。古い遺跡があるとかで、なんとなく私が転移した原因を突き止められるんじゃないかと思ったの。本当になんとなくで、毎回空振りしてるけど。


 ぎゃあぎゃあと上から怖い鳴き声が聞こえてきた。私は思わず叫びそうに鳴ってしまった。やめてよ、私怖がりなんだから脅かさないで欲しい。


「ベルベル鳥だ」


 ズーさんが槍を構えて叫ぶ。ベルベル鳥ってなんだっけ?

 襲ってくるでーかい鳥をアディオが迎え撃った。ズーさんは盾で私を守り、アルはぴょんぴょん木の間を飛び回りながら空中の鳥を切り払っていく。ふええ、すごいなぁ。

 カリスト君は後ろのほうから鍋に火薬と砲弾を入れて飛ばしているようだ。なにあれ、そんな使い方していいの? ちゃんと洗えば平気なのかな。

 とても命中しそうにない攻撃なんだけど、カリスト君は器用に二回に一回は命中させている。空を飛んでいる相手なのにすごい。せめて私はカリスト君が撃ち落としたやつに止めを刺す仕事をしていよう。下手に手伝ってみんなに迷惑かけたらマズイし。


 みんなのおかげで無事ベルベル鳥の群れを撃退できた。誰も怪我していない。みんな本当に強くてかっこいい。私みたいな現代っ子がこの秘境で生きていけるのはみんなのおかげだよ。

 カリスト君はなにやらナイフでベルベル鳥の解体して肉を袋にいれていた。もしかしてそれ食べられるの? 今日はごちそうなのかな。良かった。やっぱりカリスト君を仲間にしてよかったね。


「……カリストは仲間だ」


 おっと、ついひとりごとを言ってしまった。みんなこっちを見ている。恥ずかしいな。

 

 料理人ってすごいね、あの恐ろしい鳥がカリスト君はスープにできるらしい。みんなは不安がっていたけど私はカリスト君の腕前信じてるよ。

 それにしてもカリスト君って何者なんだろう。雰囲気違うしこの暗黒大陸の人間じゃないよね。


「……前は何を?」

「僕ですか?」

「ああ」

「やっぱりルイさんには、昔から料理人じゃないってバレちゃいましたね。さすがです」


 え? そうなの? 全然気が付かなかった。美味しい料理を作るからてっきり一子相伝の料理人の家に生まれたとか、お寺みたいなところで毎日料理の修行をしてきたとかそんな感じだと思ってたよ。


「僕はレオン帝国砲兵隊にいたんです。でも戦争はあんまり好きじゃなくて」


 だよねー戦争は嫌だよね。わかるわかる。でもレオン帝国ってどこだっけ。


「そうか」

「ルイさんからしたら何を軟弱なって思うかもしれませんけど……」


 全然そんなことないよ! 私も戦争は嫌いだもん。カリスト君とおんなじだよ。


「いや」

「ありがとうございます。やっぱりルイさんはいい人ですね」


 うっひゃー。いい人だって。照れちゃうなぁ。やばい、顔に出ちゃうよ、カリスト君からにやけ顔キモいとか思われてない?


「師匠……砲術の師匠なんですけど、その人に相談したら、ここで身につけた技術は他のことにもきっと役に立つって背中を押してくれて」


 料理じゃなくてほーじゅつなんだ。え、ええっと、ほーじゅつってなんだっけ? でもあれだよね、達人はすべての道に通じる的なあれなんだね。


「師匠か」

「はい、それで料理人になりたいって言ってみたら、この鍋を考案してもらったんです」


 そういえば圧力鍋なんてよく作れたよね。もしかしてそのお師匠さん、私と同じ日本人だったりするのかな? そんな都合のいいことはないか。


「包丁を上手に使えることだけが、手先が器用なだけが料理人じゃない。道具を自由に作れる冶金の技術、火と熱に対する知識。それに食材や調理法について貪欲に学び続ける意思。これがあればきっと僕にも料理人になれるって」


 へえ、すごい人なんだなあ。料理マンガとかじゃ主人公みんな器用だもんね、なのに不器用でも大丈夫だなんて。でも私にはどれもできないからメシマズなのかな。


「そうか」


 凹むなぁ、私もせめて人並みには料理できるようになりたいなぁ。


「はい」


 でもカリスト君ならきっとなれるよ。お姉さん応援するから。私は力強く頷いてあげた。カリスト君も嬉しそうだ。



「おかわり」


 ガマンができず私は言った。すごいよこれ、鳥なのに牛のヒレ肉みたいな食感だよ。食べると口の中でとろけるの。やべえ美味しい。

 キノコのソテーもバターの味が香りがしっかりついててこれも美味しい。幸せだなあ、やっぱり美味しいものが食べられるのって大切だよね。それにカリスト君お米持ってるの。日本米じゃないし、ぱさぱさだけどお粥だと結構いける。

 私は恵まれているなぁ。もし他にこの世界に連れ去られた日本人がいたとしても、きっと私と違ってすごく苦労してるんじゃないかな。私一人じゃとっくの昔に遭難して死んじゃってたよ。

 それが今じゃこうしてみんなで焚き火を囲んでおいしいゴハンを食べられる。この後は多分ズーさんが歌って、アルが踊るんだよ、楽しいなぁ。そうだ。


「……みんなには感謝している」


 たまにはちゃんとお礼を言わないとね。

次回以降は1話ごとに不定期更新となりますので、たまに覗きに来てください

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