軍靴
短いです。次回は長くなるはず!(希望的観測)
レッドロックに帰って六ヶ月程は、平穏な日々を過ごした。変化があったとすれば、大尉の訓練が厳しくなったことぐらいだ。ノームを含めた他の隊員はダラダラとしているし、俺と大尉、中隊長はいつも空を飛んでいる。そんな日々だった。
◆
そんなある日、大尉が新聞を持ってきた。
「おい、ポロ。こいつを知ってるか?」
「何ですか?大臣のスキャンダルでもありましたか?」
大尉が見せたのは、新聞の真ん中程にある国際面だ。そこには、『レンシア人民連邦で政情不安。クーデター発生の機運か?』という見出しがでかでかと書かれていた。
レンシアは地中海を挟んだ北にある国だ。王政が倒れて独裁者が現れたはいいが、各地方の独立色が強く、加えて列強がそれぞれ別の民主派を応援しているためにカオスな状況らしい。
そんな中、二つの勢力が連合を組んだ。我がリバティアの支援する自由民主連合と、我が国と仲の良いウェールランド帝国の支援する祖国民主会議だ。
実際のところ、関係四者が同意してタカ派の祖国民主会議が自由民主連合を吸収した形になったらしい。
更にそこにウェールランドと大河を挟んでお隣の、カペー自由国に支援された解放人民公会まで勝ち馬に乗ろうと同盟を組んだから、あら大変。たった一週間で、政府が揺らぐレベルの反政府組織、レンシア自治連邦が出来上がりだ。
これに慌てた独裁者は、我が国などと仲の悪い、コミュント人民民主主義国に支援を求め、政府・レンシア共産党VSレンシア自治連邦の構図が出来上がった。
◆
一ヶ月もたてば、双方の間で暗殺合戦が起こる。
その内に、レンシア自治連邦の支部の一つがレンシア共産党によって中の関係者ごと焼き払われた。それをきっかけとして、レンシア自治連邦は南部を中心に独立を宣言した。
悪いことは重なるもので、焼死した人物の一人がレンシア系ウェールランド人記者だったために、ウェールランドのみならずリバティアやカペー世論まで沸騰し、三カ国がレンシア自治連邦との国交樹立とレンシア人民連邦との国交断絶と相成った。 三カ国は圧倒的な賛成多数で、連合義勇軍の派遣を可決した。
我がリバティアは陸上義勇軍として、一般市民が自主的に(軍の施設や軍人によって)訓練した義勇リバティア第1、2、3連隊と、陸軍から自主的に(?)参加する義勇リバティア第4連隊ができた。航空義勇軍は同じく自主的に(?)参加する義勇航空軍が編成された。
俺たちも、北方航空軍の命令によって、義勇航空軍に編入されることになった。更に、前回の演習が多少は刺激になったらしく、参謀部からシモン・ハイエク大尉が現行戦闘機の新型改良型P-19Eと共に出向してきた。ハイエク大尉のTACはポップ、コールサインはナイト6だ。彼とは義勇航空軍の集結予定地であるマクガイア基地で合流することになっている。
義勇航空軍には俺たちの第70攻撃大隊 第3中隊の他に第2中隊、中央航空軍 第12戦闘大隊、東方航空軍 第51爆撃大隊 第1中隊が参加することになるらしい。各部隊共に、実戦で貴重なデータを取るための技術者集団が同行したり、急遽、教育大隊から教官を配属されたらしい。そんな中、俺たちの部隊に新たに配属されたのは、お目付役が一人と文官が数人だけだ。どうせ、上層部は今回の戦闘でP-10を使い潰そうと考えているのだという雰囲気がパイロットの間に広がった。このことは実戦に参加するからより訓練するようになると思っていた中隊長やアイケルバーガー大尉にとっては予想外の事態であるようだったが、どうしようもなかった。
そんな隊の雰囲気とは関係なく、時間は過ぎていく。レッドロック基地も、居なくなる俺たちに代わって、その人里離れた立地に目をつけた中央航空軍 航空実験開発大隊がやって来るらしい。俺たちの時には何度補修の陳情書を書いても予算が降りなかった建物の脇に、新しい建物が筍のように建てられていく。その様子もまた、士気を下げる一因となっていた。
ありがとうございました。
次回は3/1投稿予定です