凱旋
一時間のスパンで連続二話投稿です。ご注意下さい。
メンフィスベルで過ごしたのは、基地開放の期間も含めて五日間だった。首都ではその間に凱旋式典の準備でてんやわんやだったそうな。俺たちと言えば、開放の時にはもっぱら兵舎の中でくつろいでいたので、休養は十分だ。後の二日は飛行訓練をして、凱旋飛行の当日を迎える。
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<ヒュー!すげえ人の数だ。なあポロ。>
大尉が口笛を吹く。その意味は驚き。もちろん、俺も驚いている。首都に来たのは初めてだ。ましてや、首都の空を飛んだ経験のあるパイロットなどそう多くはないだろう。首都の上空は原則として飛行禁止だからだ。立ち並ぶビル群、議会、最高裁判所、大統領府、全てが写真でしか見たことのないものだ。しかも、眼下の道という道は全て人で満たされている。こんなに経験はもう一生出来ないだろう。
前方の戦闘機や爆撃機への歓声がここまで聞こえてくる。新たに大きな歓声が上がった。俺たちのことが放送で紹介されたからに違いない。下にいる多くの人々は国旗を振り、平和の訪れと、正義が守られた事を祝っている。俺たちからすれば皮肉も良いところだ。その正義の名の元でも戦争犯罪は起きている。戦争の後期には都市への無差別爆撃も行われた。もちろん、そんな火力を投入できたのはリバティア陸軍しかいないが、その行いを責めたてる者などいなかった。俺たちだって例外じゃない。俺たちが落とした爆弾の下に一般市民がいた可能性だって否定てきるものじゃない。そんなもの考えてもしょうがないと以前中佐に諭されたが、果たしてそうなのだろうか、自分でも分からない。
そう言う風に考えていても、飛行機は飛ぶ。もちろん、体でたたき込んだので無意識的にクールと一定の距離を保つようになっている。
<クールからポロ。そろそろ旋回して帰るぞ。>
<あ。…ポロ了解。>
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これが、俺とアイケルバーガー中佐が第70攻撃大隊 第3中隊で一緒だった最後の飛行となった。この後すぐに所属替えが通知されたからだった。俺は英雄という称号の元に特例的に昇進して大尉になり、新型機に機種替えとなった。単発の高速重戦闘機だ。経験が生かせると踏まれたらしい。クールは実戦経験を生かして新型の双発機の開発に回された。いつか理想的な双発戦闘機を完成されると柄にもなく息巻いていたのが印象的だった。
これでひとまず完結とさせて頂きます。
拙い作品にお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
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思えば、ストレスからの逃避として書き始めた為、話の半分以上が手書きでノートに書いたものをデジタルに書き起こしていました。でも、ストレスの逃避なら作品を書くことがストレスになってはいけない。ましてやエタるなど論外という気持ちになったので、ここで終わりとします。
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この作品のイメージとなったのはもちろん、スペイン内戦です。しかし、自分にはここから続けて混沌とした第二次大戦を書く気力も度胸もありませんでしたorz
でも、この作品を書いたことで、自分がいかに軍事兵器が好きで、なおかつ自分の消費していたコンテンツを製作する人たちが苦労していることを知らなかったかということを理解しました。人並みですが、とても有意義な経験となりました。
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自作はガチファンタジーか、泥臭い陸戦ものをやりたいけど、いつになることやら。




