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戦後

小型特殊自動車免許取りました。警察曰く、同い年で取ってる人は3桁いないとか…

だって普通自動車免許の下位互換だし、トラクターしか運転できないし。でも、一番安上がりな顔付き身分証明書なんですよ。

運転免許センターでの受験者はもちろん自分ひとりでした。

主滑走路を炎が照らす。現在0330。今から離陸すれば、払暁攻撃にはちょうどいい時間だ。まだ空は暗いが、その内明るくなるだろう。クールの機体に続いて離陸する。篝火(かがりび)が次々と後方へ流れていく。これまで見たことのないような幻想的な感じだ。実験だけなら行われたことはあるようだが、夜間出撃自体は恐らくリバティア陸軍航空隊初だろうし、世界的に見てもほとんど例は無いだろう。


 それにしても、地面との距離が高度計でしか分からないという状況がこんなにも怖いものだとは思わなかった。何しろ普段の有視界飛行とは勝手が全く違うのだ。頼れるのは高度計と水準器のみ。周りを見渡しても暗闇しか存在しない。これが雲の中ならどこかで抜け出せるのだが、生憎とそれは不可能だ。


<ポロからクール。>

<こちらクール、感度良好。>

<攻撃は上手く行きますかね?>

<予定到着時刻は日の出の三十分後だ。十分明るくなっているはずだ。心配なら祈ってろ。>

<こちらポロ、了解。そうすることにします。>


 そうしていると、遥か彼方の地平線がうっすらと青みを帯びてくる。日の出も近い。これが暁というやつだ。


<空、綺麗ですね。>

<そうだな。こんな風景を見ていると、俺たちの世界の汚さが一層際立つよな。今だって、祖国のエゴのために動いてるんだ。>


 そうやって感傷に浸っている間にも、目標までの距離はどんどん縮まっていく。しかし、まだ見えない。遠いこともあるし、目標は臨時飛行場だから規模小さいだろう。現在の高度は3000メートル。空は晴れ渡り、雲一つ無い。 もちろん、空にいるのは俺たちだけだ。


<おっ!あれじゃないか?ポロ、確認してくれ。11時方向だ。>


 大尉の言った方向を見る。特にそのようなものは見えない。畑、村、道、川、森、どれも違う。あった!あの林の中のだろう。池があるにしては細長すきるし、川も無い。


<見つけました。あの森の中の穴みたいな。>

<そうだ。一応、上を飛んで確認したら旋回して、アプローチだ。緩降下爆撃するぞ。>

<了解。>


 中佐に続いて目標の飛行場の上を飛んで確認する。格納庫や駐機場に止まったままの機体が見えた。間違いなく目標だ。


<ポロ、やるぞ。>

<了解>


 十分離れたら、旋回しながら高度を下げていく。高度が1500メートルになったところで爆撃コースへ侵入する。角度は50°。爆風に巻き込まれないため、また、地面にしっかり穴を空けるために信管は地面への接触後0.5秒分遅らせてある。二機から50キロ爆弾が四発落とされる。投下後はすぐに上昇に転じて退避する。後ろから爆発音が聞こえた。コックピットのキャノピーの枠に付いている鏡で後方を確認するが、後ろ下方向は機体の胴体が邪魔になって見えない。中佐も戦果が気になるようで翼を僅かに振っているが、あんな動きでは見えないだろう。


 十分な高度を稼いでみると、爆撃が成功していることが確認できた。滑走路の中心線に沿うように穴が四つ空いている。あの状況では離陸はまず不可能だ。格納庫から林を抜けて外へ出る道も、航空機の機体が通れるような広さはない。これで、今日一日の使用は不可能だ。午後には更に威力の高い250キロ爆弾を落として復旧を完全に封じるらしいし、後は俺たちの担当外だ。帰投しよう。


<綺麗に決まりましたね、クール。>

<ああ、上手い具合に入ったな。さて、帰ろう。>

<ポロ、了解です。>

<あ、忘れてた。こちらケイローン1からサイファ。>

<こちらサイファ、感度良好。>

<こちらケイローン1。爆撃成功。今日一日は使い物にならないだろうよ。>

<こちらサイファ。よくやった。以上。>


 今のサイファというコールサインは恐らく参謀本部の回し者なのだろう。いずれにせよ、俺の知る必要のないことだ。それより大事なのは、作戦成功と、俺たちの無事だ。さて、帰ろう。


 帰りはクエンカで給油した後に、インディアスへ戻った。兵站の調整がつくまではここで待機となるだろう。

ありがとうございました。

次回は3/26です。

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