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新聞

春休みにアマチュア無線4級を取ることにしました。

夢が広がりング

ちなみに父はアマ1級、第一級陸上無線通信士(電信以外全部できる)です。ちなみに、全て趣味らしいです(白目)

 アマール中佐が来てから三日後、この基地には珍しい航空郵便が来た。中身は勿論新聞だ。政府系の『la liberte』、大尉曰く『自由』という意味らしい。カペー語は分からん。


 一面にはデカデカと俺たちの写真が載っている。大尉が笑顔で見守るなかで、俺が機首に29本目の黄色い短冊状のキルマークを書き込んでいるシーンだ。見出しには『インディアスの英雄 ~"赤鮫"のエヴァンス少尉と"青鮫"のアイケルバーガー大尉が計49機を撃墜~』との文字。おい、これウェールランド語版かよ!中にはレンシア自治連邦陸軍総司令官やカペーの()()()()陸軍大臣のコメントも載っていた。いつの間にか、二人してカペーとレンシア、それにウェールランドの勲章を貰い、レンシア陸軍名誉大佐と名誉少佐になることになっていたらしい。更にカペーの義勇軍から航空部隊がインディアスに来るとも書いてあった。格納庫が埋まる日も近いようだと、俺は遠い目をしながら思った。


 一緒に入っていた手紙は俺と大尉宛のものだった。一通はレンシア首相からのものだ。内容はありきたりな賛辞の書き連ねてある。もう一通の送り主はカペー陸軍広報部長。これが問題だった。


「何でこの隊に従軍記者が来るんですか?」パシャ

「そりゃ、カペーの戦闘機が二個中隊も来るのなら一足先に来て、現地を見ておきたいだろうね。噂の"英雄様"もいることだし。」パシャ

「大尉も他人事ではないんですよ。後、実際今撮られてますけど、ポーズとかとらなくて良いんですか?」パシャ

「あ、気にしないで、自然体でいてくださって大丈夫です。」パシャ


 そう言って写真を撮り続けているのは新聞『la liberte』と一緒に飛んできたデイビッド・ギラン特派員だ。


「こんなこと言うのもなんですが、こんな日常写真で良いんですか?別にこんな絵では戦意高揚なんてしないと思うのですが。」

「だからこそ良いんです。空では無敵の英雄でも、地上ではこんな人懐こい顔をするんですよ。親近感湧くじゃないですか。英雄ってのは皆から愛されてこそですからね。」

「割とぶっちゃけたこと言いますね。」

「プロパガンダの対象にはその気になってもらっても良いんですが、こちらの大尉はそれを許さない気がしましてね。まあ、ブンヤの勘ですよ。」

「まあ、さすがにそれで飯を食っている訳ではないということか。それより、ポロ。ずいぶんと写真に慣れたみたいだな。」

「割と我慢してるところはありますが、何とかなってます。ただ、今でも新聞に載っている自分を見ると鳥肌がたちますがね。」

「そりゃまあ、良かった。なあ、ギランさん。」

「ええ。こちらもやり易くて助かります。以前、とある陸軍大将に密着取材したときには、殊に写真嫌いで大変でしたよ、はい。」


 大尉の言った通り、彼は俺たち二人と、近日中に来るらしいカペーの飛行隊に密着取材をするらしい。既に写真を撮られることが恥ずかしいという思いは吹っ切れた。そういう意味ではありがたい存在となった。



 ギラン特派員が来た日には俺と大尉でそれぞれ33機と22機のスコアを持っていた。加えて、その後の一週間で更に7機ずつを落とした。これで通算40機と29機となる。俺はトップエースで、大尉は二位と一機差の三位だ。ちなみに、このランキングはリバティア陸軍内部のものではなく、義勇連合軍全体のものだ。ちなみに、二位も我が国のウィリアム・トービン中佐だ。いつの間にか昇進していたらしい。リバティアの新聞は彼の話題でもちきりだ。


 ギラン特派員も一週間がたてば、色々慣れたようだ。複座のP-10CTに一回乗せてあげたときの興奮ぶりは凄かった。結局、急降下に耐えきれずに気絶してしまったのだが。それにしても、先行した情報収集が役割にしては、全く仕事をしている気配が無い。日がな一日中、俺たちと過ごしているのだ。


 そんなギラン特派員も今日は基地内を走り回っている。なぜなら、カペー陸軍の先行部隊が到着したからだ。今日来たのは兵舎の増設や格納庫の整備を行う部隊だ。彼らはカペー軍事顧問団の一員で、本当の所属は陸軍航空隊の工兵隊らしい。朴訥(ぼくとつ)とした雰囲気のあるインディアスにはとても似つかわしくない重機やら、大量の建材を積んだトラックやらが行き来している。着任当日からガンガン仕事をするその姿勢には敬意を表さざるをえない。それに対して、俺と大尉は格納庫の中でトレーニングをしながら雑談だ。その話題の中心は、自然とここ、インディアスでの戦況となってくる。攻勢の序盤では大敗を喫した連合軍側であったが、その後はよく粘っているらしい。しかし、このままではジリ貧だということで、ウェールランドが新たに義勇第5連隊を本国から派遣することが決まっている。また、インディアス市民が中心となったインディアス防衛大隊なるものも結成されて、訓練を行っているらしい。更に、カペーが戦闘機二個中隊と、自動車化歩兵一個大隊"lievre"を派遣することになっている。このあだ名の意味は"野うさぎ"らしい。カペーの自動車化歩兵は今回の戦争で大活躍しているだと聞いている。本国から新しく派遣される部隊ということだそうだが、期待しておこう。


 肝心な航空戦だが、近頃は一時期と違ってやっきりと減った。俺たちの戦果を合計すると、リバティア式編成で一個航空大隊以上の敵機を撃墜している計算になるのだ。これで勢いが衰えていなかったら驚きだ。


 もう一つの顕著な変化は、敵機の中に人民連邦の青いダイアモンドでない国籍マークを付けている機体が出てきたことだ。恐らく、コミュント人民民主主義国の軍事顧問なのだろう。さすがに腕は良いらしく、二人合わせて三機しか落とせていない。実のところ、彼らを見分けるのは簡単なので、選んでつまみ食いすればいいともいえる。彼らは機体カラーが白一色だ。とても分かりやすい。ちなみに、カペーの戦闘機はダークグレーだそうだ。このようなことも報告書に書いてはいるのだが、上からは何の音沙汰も無い。何を思っているのだろうか。

ありがとうございました。

次回は3/14です

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