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【短編】機関砲

※途中で出てくる□□は文字化けではありません

 うちの中隊はパイロットの出身からか、機体を愛するパイロットがすごく少なかった。その例外は、中隊長のパーク少佐とアイケルバーガー大尉、短期間だけいたハイエク大尉、そして新任のエヴァンス少尉だけだった。結局のところ、機体を愛さないパイロットは機体からも愛されないことが多かったようで、中隊のメンバーはほとんどが初めての戦闘で戦死してしまった。パーク少佐は、まあ運が悪かったとしか言い様のない事故だった。さて、俺の言った機体を愛するパイロットたちだが、そういう人こそしっかり機体をチューンアップする。飛行が終わって梯子を降りるときに、


「今日は□□から違和感を感じたから、直しておいてくれ。」


なんて言われるのはザラだ。だからこそ、パイロットの気に入るチューンができたときの達成感はひとしおだ。欲を言えば、もう少し冒険的な改造を注文してくれてもいいのだが。



 そんなある日、爆撃任務が終わった後のエヴァンス少尉の一言が気になった。


「今日は敵の火点が多くて大変だったよ。爆弾は重さの割に効果のある範囲は狭いし、20ミリは弾数が少ないしでさ。」


 その言葉は俺の心を久しぶりに震わせた。


 早速、部隊の機体の少なさから暇の多い部下を集める。奴らポーカーで遊んでやがった。後で駐機場100周だな。まあいい、そんなことより今はあの問題だ。


「という訳で、少尉は20ミリ位の火力をもっと増やしたいらしい。そこで、俺の考えた方法は三つだ。まず、一つ目は7ミリを使って強化することだ。数を増やしたり、特殊弾頭を使うことが考えられる。二つ目は7ミリ四丁を取り払って、20ミリ二門を置き換えるやり方だ。三つ目は20ミリを爆弾のように懸架するやり方だ。お前らはどう思う?」

「7ミリを取り払うと、対空戦闘で不利になるのではないでしょうか。どう考えても7ミリ四丁より20ミリ二門の方が射撃後の重心変化が大きくなります。後、改造が大規模になりすぎます。」

「使えそうな7ミリ用特殊信号弾は生産量が少なすぎて、こちらまで回ってきません。弾道特性も通常弾や曳光弾と大きく異なるので、狙いがバカになります。もう一つ照準機を付けることはできますが、位置的に見にくいと思います。」

「露出する形で武装を増設すると、運動性能が目に見えて低下します。銃身の強度にも不安が残ります。」

「しかし、性能低下は爆装時にも起きるだろう。いざとなったら外れるようにすればいい。銃身の強度はサーマルスリープを改造すればいい。」

「それだと命中精度に影響がでるのでは?」

「対地射撃とライフルの狙撃は違うだろう。」

「まあ、榴弾の爆発で補えるか。」

「よし。それでいこう。」


 俺たちは早速、スクラップとして置いてある大量のP-10から20ミリ機関砲を取り外す作業に入った。



 最近、整備班が何だか怪しい。20ミリ機関砲の本体だけを引っ張って来ては、試射を繰り返している。あいつら何企んでいるのだろうと思っていたら、第2分隊長のアンソニー・ハワード曹長に格納庫まで呼び出された。そこにあったのは俺の機体。ただし、翼の下に見慣れない装置、というか40ミリ位の口径を持つ機関砲が二門と、給弾用の箱が各一個付いていた。


「曹長、これ何?」

「はい!これは20ミリ機関砲の増設キットです。少尉が20ミリの弾数不足を嘆いておられましたので、開発しました。」

「この太さで20ミリなの?」

「負荷がかかって銃身が曲がったり、折れたりするのを防ぐために、補強してあります。同時に、放熱の性能も高まったので、一石二鳥です。」

「それで、使えるの?」

「それを調べて貰おうと思いまして、お越しいただいた訳です。本当は、非常用にガンポットをパージする機構を付けたかったのですが、懸架装置に繋げられる回路が一本しか無かったので、その回路のスイッチは射撃用のトリガーボタンとなっています。」

「お、おう。わかった。」

「上手くいけば、40ミリ機関砲を付けることも考えていますので。」


 俺はこうして、この改造のテストパイロットとなった。ベテランの下士官に対して、新米の士官は逆らえないのだ。しかも、この改造は曹長の好意だ。ありがた迷惑でなければいいのだが。


 見た。飛んだ。ビビった。そう、このガンポットのせいで、元々悪かった旋回性能が更に悪化した。爆装より遥かに空気抵抗が大きい。加えて、急降下したら異常振動が発生して、急降下が不可能だと判明した。しかも、パージ不可。こんな機体じゃ空戦なんかできやしない。そのことを曹長に話したら、凄い良い笑顔をして、改良を考え始めた。仕方ないので、俺はもう付けないと宣言したら、捨てられた子犬みたいな目で見られた。五十過ぎたオッサンにそんな顔をされると、もう別の意味で破壊力満点だった。



「で、何で俺のところに報告書を要求する手紙が来るんだ?」

「面白そうなので、実験大隊に写真を送っただけです。」

「作った奴に書かせとけ。」

「了解しました。」


 こうして、後に『最強のタンクキラー』と呼ばれる装備は産声をあげた。

ありがとうございます。

モデルはJu-87Gです。

ドイツは何で色々とマッドな物を作るのかが謎。ハウニヴとかP虎とか。

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