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標的

八夜<やや>達がいたのは薄暗い明かりが照らす雑居ビルの一部屋だった。部屋にはパイプ椅子が二つと腰ほどに高さのテーブルとシングルベットが置いてあるだけだ。そのテーブルの上には筆と赤い絵の具八枚の顔写真がせいとんされて置いていた。はっきりと顔が写っているのは三人。若々しく鋭い目つき、東洋で持てそうな見た目の黒髪ロングの男は大蛇の会の党首であり名を日火野 蜻蛉<ひびの かげろう>という。二枚目は会の警備課本部長とされている風宮<かぜみや>ヒューリーである。ハーフであり、その短い金髪ときれいな顔の左側にある切り傷は印象深い。そしてもう一人は先ほど始末した力也である。彼らは社内の紹介で顔写真をアップしていた。大蛇の会自体は一流企業であるには変わりないため外部への情報提供は必須でありこの三人が選ばれたというわけであろうと八夜<やや>は考えた。残りの写真はぼやけていて髪の色や簡単な体系しかわからなかった。 少し伸びた赤髪に女性のような体躯。ひげと白髪を伸ばした老人のような身長。黒髪のショートに長い背丈。顔に少しかかるほどの銀髪に男性の平均的な身長。最後の写真はほとんど写っていなかった。ボヤがひどすぎたのだ。八夜<やや>は力也の写真に赤い絵の具をつけた筆ででバツマークをつける。

「まずは一人だ」

そういって少女のほうをみる。少女はベットに座っていた。

「凛。お前は付き合わなくてもいいんだぞ。これは俺の問題だ」

凛は懐にしまってあったメモ帳にボールペンですらすらと文字を書き込んでいった。それを八夜<やや>に見せる。

「(これは私の復讐でもあるの。だから手伝わせて)」

「わかった。だけど次はこううまくいかないと思う。相手も警戒しているからな」

「(大丈夫。どのみちあなたがいなかったらない命だもの。好きに使って)」

それを見て八夜<やや>はため息をついて凛に近づいた。そのまま近くにあった椅子に腰かけて凛と向き合い、まっすぐにその瞳を見つめる。

「凛。お前が助かったのは偶然だ。俺が調べてあそこに向かったところにたまたまお前がいただけだ。俺はお前の命を救いに行ったわけじゃない。だからそんな言い方はするな」

凛は再びメモ帳につらつらと文字を連ねて八夜<やや>に見せた。

「(私の意思でついていくんです。)」

「(あなたのそういうところ好きです)」

凛はにっこりとほほ笑んだ。八夜<やや>は小さく息を吐いた。

「わかった。止めはしない。だが守れる保証はないぞ」

凛はコクリとうなずき再びメモに文字を連ねていく。

「(次の標的は?)」

「わかっている奴から順番にだ。ヒューリーを狙う」

「(わかった)」

「情報を探らなくてはいけないからな。今日はもう休め」

八夜<やや>はライトを消し、壁際に寄りかかりそのまま腰をつけ毛布をかぶり寝ようとしたが凛はそれを見て再び文字を連ねた。

「(ベットで寝ないの?)」

「一個しかないだろ。お前が寝ろ」

「(一緒に寝たらいいのに)」

「なんだ寝ていいってのか?」

「(いいよ。変なこともしていい)」

八夜<やや>は少しほほを赤らめる。

「馬鹿なことをいううな」

口調は落ち着いていた。

「年頃の娘がそんなことをいうんじゃない」

「(あなたも若いでしょう?)」

「二十八だ。お前と十も違う。そんなことできるか。俺は寝る」

八夜<やや>目を閉じた凛のメモ帳を視界から消した。残念そうな表情をして凛はベットに横になった。

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