会議
ある高層ビルの一室。一人の男が高級な社長椅子に深く腰掛けていた。目の前のテーブルにはスタンドマイクが一個。広い部屋には中央に来客を出迎えるためのソファとテーブル。壁にはさまざまな装飾や置物などが飾られていた。壁は温かみあふれる赤の色で染められており白い電球の光がそれを照らし出す。男の腰掛けた目の前には巨大なスクリーンがつるしだされた。そこに映っていたのは自社回線による音声通話の表示だった。天井にはスピーカー映し出されたサムネイルは6つ。鷹、蛇、虎、龍、蛙、犬だ。男も含めて七人での会話ということになる。
「そろったか?」
男が口元においてあるマイクに向かってそう言う。
「いるんじゃない?何よ急用って」
犬のサムネが反応する返答した声は若い女性のものだった。
「いや、力也がまだだ」
蛙のサムネから少しばかり老けた男の声がスピーカーから出る。
「ああ、その件でな。力也が殺された」
その言葉を聞いてスピーカーの向こうで物音がした。スクリーンの鷹のサムネイルが反応した。
「すまない。続けてくれ」
「お前は一番あいつと仲が良かったな」
「早く続けてくれ」
「血気盛んだな。復讐でもするのか?」
その言葉で龍のサムネイルが反応した。そいつはそのまま言葉を続ける。
「あまり急ぎすぎるなよ。前情報がないてきは危険だ」
「だからこそ話を進めてほしいんだ」
「二人とも黙れ。話を進める」
男は机の中から資料を取り出す。それをざっと読み上げる。
「力也は四肢を切断され血の海の中で息を引き取ったそうだ。死因は失血。わざわざ死ぬまで放置していたみたいだな。遺体周辺には切られた両足と左腕。壁際には右腕があった。そのすぐそばの壁には俺たちを全員殺すだとよ」
「面白いことをいうやつじゃな」
虎のサムネが反応する。声は老人のものであった。
「それだけじゃないぞじいさん。確かではないが八夜<やや>のものだといわれているぞ」
「なんじゃと?あそこは途絶えたはずじゃぞ」
「知らんがな。各自警戒を怠るなということだ。特別な指示は俺からはださん。各々自由に動け」
「そいつを殺しても?」
これを言ったのは鷹のサムネだ。
「構わん」
「わかった。抜ける」
そういうと鷹のサムネイルはモニターから消えた。
「ならあたしも」
犬のサムネイルが消え無言で蛙が消えた。
「お前ら、心当たりは」
「ない」
「ないぞ」
「ありません」
「本当だな?」
「「「ああ」」」
「ならいい」
その言葉で全員からの通話が途絶えた。男は椅子を回転させて外の街をみる。常に輝きを放つ夜の街。男はそれを見ながら不敵な笑みを浮かべた。