真紅時代 その1
新しい職場に行くと、駐車場には赤いトラックが何台もたたずんでいた。
制服を支給された。体のでかい俺には少し小さかった。それは我慢することにした。しばらくすると、注文した俺サイズの制服が来ることになっていたからだ。
初日は、伊藤さんという先輩と一緒に回ることになった。しかし、それはかなりハードなコースだった。
その事業所で、一番きつい補充場所が含まれていた。朝一でそこの補充場所へ向かった。
三階ぐらいの段数の階段を、百本近い製品を持って何度も往復する。正直、ここだけでほとんどの体力を奪われた。仕事に慣れたころでも、その補充場所に行くのは憂鬱になるぐらいきつい場所だ。
時期は九月。まだまだ夏の日差しが照りつけていた。
俺は、午前中の仕事が終わることには、熱中症になっていた。
もちろん、熱中症には気をつけて、水分は取っていた。だが、昨日までクーラーのきいた部屋でダラダラしていた男が、急に外でハードな仕事をすれば、熱中症になるのは当然かもしれない。
吐き気とめまいに襲われて、その場にへたり込んでしまった。
それからは、伊藤さんが一人で作業をしてくれた。その間に伊藤さんが事業所に連絡してくれて、上司が車で迎えに来てくれた。
結局、その日はそれ以上仕事ができず、早退することになった。
そして、次の日。そのまた、次の日と仕事を休んでしまった。
後で聞いた話だが、同僚たちはもうこないだろうと思っていたらしい。初日に熱中症になり、迷惑をかけたからだ。
それを裏切る形で、俺は仕事に復帰した。
熱中症後に休んだことについて、事業所長に怒られはしたものの、なんとか仕事を続けられることになった。
それから、一ヶ月は同じ人、宮村さんと回ることになった。その事業所では、回るコースが十コースほどあるのだが、その一つを覚えろということらしい。
仕事は変わらずきつかった。残暑が厳しかったものあり、毎日Tシャツがしぼれるほどビショビショだった。一、二ヶ月で体重は十キロ落ちた。これだけでもどれだけ仕事がきついか分かってもらえるだろう。想像していたよりも三十倍はきつい仕事だった。
仕事中は、移動中しか体を休める時間がなく、昼食も取れないのがほとんどだ。当然、痩せるだろう。
しかし、体を動かす仕事が向いていたのか、あかりは「IT関連の仕事をしているときよりも生き生きしている」と言ってくれた。