養鶏場 その2
養鶏場でよかった点は、従業員の人がいい人が多かったことだ。
社長は、よく卵を持たせてくれた。これが、今まで食べた中で一番美味い卵だった。これは、お世辞ではない。
いい餌をあげているかららしく、ちょっと割高なのだが、評判がよかった。うちの娘も大喜びで食べていたし、今でもプライベートで買いにいくことがあるぐらいだ。
養鶏場で働いているときに、自販機補充の大迫さんから連絡があった。実は、この養鶏場は、俺がいた事業所のコース内だったらしい。
大迫さんは、俺が働いていた養鶏場を知っていた。ここの卵をおつかいに使うことがよくあるらしい。
彼は、仕事中がてら、来てくれたこともあった。本当にいい人だ。俺が仕事をバックレたことも、全く気にしていなかった。俺がつなぎを着ていても、引かなかった。
自販機に補充をしながらも、事業所の現状を教えてくれた。
話が脱線した。養鶏場の社長はいい人だし、社長の奥さんも、パートのおばさんも、俺に仕事を紹介してくれた高山さんも、みんないい人たちだった。
配達する卵を盗んでいた人もいたが……すぐに首になった。
いい人たちばかりで、長続きしそうな養鶏場の仕事だったが、辞める日はやってくる。
採用の面接のときにも一緒にいたのだが、この養鶏場には親会社がある。以前のオーナーが、その親会社に売ってしまったらしい。
その親会社の評判は、すこぶる悪かった。そして、その親会社の面接官もいい人ではなかった。
試用期間の二ヶ月が過ぎ、その面接官である小沢さんに呼ばれた。
話は簡単だった。試用期間が過ぎ、社長の変わりになれるほどの仕事ができないから辞めてくれということだった。もちろん、入社する際に、そんな話はなかった。
俺に仕事を紹介してくれた高山さんが文句を言っていたものも、その点だった。言うことがコロコロ変わるのだ。
高山さんは、ボーナスが出るという話だったのに、出なくなったらしい。
俺のときは、譲歩してくれて、親会社で働かせてくれるということだった。しかし、給料が下がるし、仕事場が遠くなるしで、条件が悪くなる。
一週間待ってもらったが、行くのがいやで、うつがひどくなり、親会社で働くのを辞退した。




